クロード・スミスの名前が吹奏楽コンクールの全国大会で初登場したのは1983年のヤマハ浜松が仙台で演奏した
「フェスティヴァルヴァリエーション」だと思うのですけど、あの時の衝撃は凄まじかったです!
あの演奏でもってクロード・スミスの名前が一気にブレイクし、全国の吹奏楽ファンの皆様のハートを鷲掴みにしたようにも
感じられます。
私自身、あの時は高校3年の受験生ということで大学・職場・一般の部が宮城県民会館開催だったにもかかわらず
当日の模試という事で聴きに行く事はできなかったのですけど、吹奏楽部のメンバーの何人かが模試をサボって
あの日の全国大会を聴きに行き「近大の大阪俗謡とヤマハ浜松のフェスティヴァルヴァリエーションが圧倒的に
素晴らしかった」と興奮して翌日に話していたので、私自身も後日この時の演奏を収録した「日本の吹奏楽83」のレコードを
聴いた時は、ヤマハ浜松のフェスティヴァルヴァリエーションのかっこよすぎる名演にしびれたものでした~♪
(ただ個人的には是非生演奏を聴いてみたかったのは東海大学の松村禎三の交響曲~第一楽章でした・・)
うちの高校は私達が2年生の時にこのクロード・スミスのジュニア向けの平易な「祝典のための序曲」を演奏した事が
あったため、当時は何となくですけどスミスやコーディルとかスウェアリンジェンみたいに演奏しやすい曲という誤解が
あっただけにフェスティヴァル・ヴァリエーションを初めて聞いた際には、
「へーー、スミスにはこんなに素敵な曲があったんだ!」
「なにこのウルトラ超難曲!! まさに金管奏者泣かせ! そして同時に・・・ホルン殺しの曲!!」
「出だしからホルン奏者は確実に死んでしまう・・・」
「とにかくかっこいい素晴らしい曲!! 聴くだけでテンションが思いっきり上がりそう!」
そうした声が私の周りでも数多く聞かれたものです。
クロード・スミスというととにかく(金管奏者にとっては)難曲中の難曲とか超絶技巧を求められるという印象が強いですし、
特にその中でもフェスティヴァルヴァリエーションとルイ・ブルジョワの讃美歌による変奏曲はホルン殺しの名曲、
そして「ダンス・フォラトゥーラ」(華麗なる舞曲)はスミスの残した作品の中でも特に難しくて全奏者に超絶技巧が
求められる大変な難曲としても知られていますし、特に特にトランペットパートのあの超絶&悶絶のハイトーンは
想像を絶するものがあります。
現在ではクロード・スミスの「ダンス・フォラトゥーラ」というと精華女子高校とか洛南高校の名演が即座に思い出されて
しまいますけど、その中でも特に2014年の精華女子のあの素晴らしい演奏を聴いてしまうと
「すごいな・・・こんな難曲中の難曲を聴いている者に少しも疲労感を与えないでこんなに楽に聴かせてしまうなんて!!」と
毎回感心させられしまいそうです。
それにしてもあの「ダンス・フォラトゥーラ」の超絶技巧の炸裂振り・金管殺し・トランペット奏者殺しは
一度聴いてしまうと、完璧にはまってしまいますね~♪
吹奏楽を知らない方でも是非この「ダンス・フォラトゥーラ」だけは精華女子高校の演奏を聴いて欲しいです。
この曲、そしてあの素晴らしき名演を知らないまま一生を終えるなんて勿体無いかもしれないです~♪
クロード・スミスの曲全般に言えることですが、金管(特にホルン・トランペット)にはハイトーンを、
木管には高速パッセージを求める傾向にあり、ダンス・フォラトゥーラももちろん例外ではなく、その傾向が最も顕著に
表れる曲ともいえます。
(私自身、私が高校卒業した年に母校の後輩たちが無謀にもフェスティヴァル・ヴァリエーションを定期演奏会の
曲に選び、見事に本番でも玉砕&破綻した演奏を聴かせてくれていましたけど、その際にクラリネットパートのパート譜を
見たことがあるのですけど、瞬間に感じたことは「自分にはどう逆立ちしても吹けそうにもない・・」という事でしたし、
数年後に楽器店のヤマハの中で「ダンス・フォラトゥーラ」のクラリネットのパート譜と全体の総譜を見た際にも
「こんなの完璧に吹ける人達は絶対に人間ではない・・」と感じたものでしたので、改めて精華女子高校の奏者の皆様の
とてつもない優秀さには脱帽しかないです・・)
改めてですけど「ダンス・フォラトゥーラ」(華麗なる舞曲)について曲の概要を簡単に触れておきますと、冒頭から
全奏者のパワー全開で開始され、特にクラリネットは曲の出だしから指をフルに回すことの炸裂となっています。
あの冒頭の全奏者による「タンタカタカタカ・タンタカタカタカ」というタンギングはどの奏者にとってもかなりしんどいものが
ありそうです。
その後曲の主題が様々な楽器によって繰り返されていきますが、その中でもユーフォニアムの指回しは既に人間離れの
離れ業状態と化しています・・
中間部は、B♭クラリネットのゆったりとしたソロで開始され、その後木管のソロ楽器による曲のテーマのリレーが、
オーボエ→B♭クラリネット→アルトサックス→フルートと続きます。
一度とあるチームの定期演奏会でこの場面でのクラリネット奏者によるギーーーッというつんざくようなリードミスを耳にした際は
一気に興ざめとなってしまいましたけど、それだけ各ソロ奏者にとってもプレッシャーがかかるといえそうです。
(後述しますけど、ダンス・フォラトゥーラの最大のソロ楽器の見せ場は後半のピッコロトランペットによる超絶ハイトーンだと
思います)
そして曲は全楽器によるとてつもない大音量&全エネルギーの放出とも思える壮大なトゥッティへと展開されますけど、
あの部分の曲自体のエネルギー量はこの曲の大きな聴かせどころだと思いますし、白眉ともいえそうです。
そのトゥッティ から、ファッゴットソロにつなぎ、ピアノとマリンバをバックにした特徴的でノリのあるリズムを背景に
この曲最大の聴きどころであり見どころの一つでもある、ピッコロトランペットのハイトーンソロへ突入していきます。
(あのソロを何事もなかったかのようにこなす奏者は既に人間ではないのかもしれないですし、その意味においては精華女子の
奏者は神様なのかもしれないです)
このハイトーンが決まると、指揮者も奏者も「これで大きな山を越した・・」と安堵しそうですけど、クロード・スミスは
そんなに甘くは無いですし、ここで許してはくれないです・・
その後、エンディングに向かって一気呵成に突撃していくかと思わせておいて、ここから先、実はまだまだ数々の難所が
待ち受けています。
まずはクラリネットから始まる木管連符のフーガが展開し、その後トロンボーン、ホルン、トランペットが順々に加わり
ますけどこのあたりのスミスの作曲の巧みさには脱帽せざるを得ないですし、奏者はまだまだ緊張が続きます。
最後に冒頭のフレーズに戻ってついにエンディングに向かって全軍突撃!の世界に入り、
ホルンパートのハイトーンやトロンボーンの強烈なグリッサンドを経て、最後の一音に向けてなだれこんでいきます。
私自身はこの曲はCDやコンクール・コンサートで聴いただけなのですけど、それでも観客席にいても終わった際の
興奮は半端無いですし、もしもこの曲を吹いたとしたら終わった際の充実感と陶酔感は相当なものが
ありそうな気がします。
最近の奏者の皆様の感覚ですと「ダンス・フォラトゥーラというと精華女子のあのとてつもない怒涛のウルトラ名演で
決まりじゃん! 他にどんな名演があるの・・?」と言われるのかもしれないです。
確かにその通りだと思います。
私もクロード・スミスの「ダンス・フォラトゥーラ」の歴史的名演というと二度に渡る精華女子のあの名演を超越する演奏は
今後出てこないんじゃないのかな・・?とも思っています。
精華女子の名演は2000年代以降の話なのですけど、実は1990年代にもとてつもないダンス・フォラトゥーラの名演が
存在していたのです!
それが1992年の全国大会において宮本先生が指揮されていた洛南高校だと思います。
あの演奏は、まさに宮本先生のアクの強さが漲り渡り、「宮本先生=洛南高校」というとてつもなく強烈なサウンドが
確立された瞬間じゃないのかな・・・とも感じさせてくれました。
ああいう演奏が出来る演奏チームは、今現在の吹奏楽コンクールの高校の部では皆無と言えるのかも しれないです。
あの「宮本先生=洛南高校」という組合せは、「吉永陽一先生=兵庫高校」に匹敵するとてつもなく個性的なものだったと
今でも思っております。
まさに個性がギラギラ漲っているみたいな言い方がこれほどしっくりくるチームは少ないとすら思えます。
92年の洛南の「ダンス・フォラトゥーラ」のスピード感と切れ味と男子校らしい豪快さの素晴らしさは、あの演奏から既に
30年以上経過した今現在でも決して色褪せているものではありませんし、
あの演奏を普門館の生演奏で聴いていた私も、あの爽快さは今でもはっきりと耳に残っている気がします。
確かに2009年の精華女子の完璧な技術と洗練さに比べると「少し粗い・・」という印象はあるかとは思うのですけど、
92年の金賞受賞チームの中では、グランプリ候補というと常総学院・高岡商業・東海大学第四が挙げられると
思いますが、洛南高校も十分グランプリ候補になると思います。
精華女子とか最近この曲を演奏したチームに比べると少しカットが大胆というのか、演奏時間が短めという感じも
するのですけど、それだけ集中度が高い演奏ではないのかなとも思ったりもしています。
金管・打楽器セクションが充実しているのは今更言うまでもない話なのですけど、木管セクションもべらぼうに
巧いですし、他校に比べて木管楽器の数は少ないと思うのですけど、そうした弱みを全く感じさせない演奏と言えると
思います。
また、トランペット・サックス・クラリネット・フルート等のソロもほぼノーミスで見事に決まっていたと思います。
金管も、トランペットもそうですけど、ホルンのハイトーンも惚れ惚れするくらい決まっていたと思いますし、
トロンボーンもめちゃくちゃ上手かったですね~♪
トロンボーンのあの凄まじいグリッサンドも実にお見事でした!
洛南高校は、実は1987年にも「ダンス・フォラトゥーラ」で関西大会に臨みダメ金に終わっていますので、
気持ちとしてはリベンジという感覚だったかもしれません。
1987年の演奏は、課題曲が「渚スコープ」という大変静粛な曲でしたので、自由曲でもって課題曲の鬱憤を晴らした
エネルギーの大爆発があったのですけど、カスタムテープで聴く限りは、ちょっと粗削りでもう少し細かい部分で
整理が足りない部分があるのかな・・?と感じたものです。
92年の演奏は2回目という事もありましたので、「手慣れている」みたいな感じもありましたし、全体的に
「細かいところまでとにかく几帳面に整理されているけど、全体のエネルギーの爆発は87年の関西大会以上」という
印象も感じたものです。
1992年の前年度の1991年の自由曲の「ローマの祭り」が何か気持ちが乗らない感じで
正直私としては「ちょっと洛南らしくないなぁ・・」という今一つの演奏でもありましたので、
「今年はみんなの力でなんとかしようではないか!!」」という気持ちが全曲に漲っていたと思います。
でもやっぱり「ダンス・フォラトゥーラ」の不滅の名演というと2009年と2014年の精華女子のあの歴史的名演に
尽きると思いますし、あそこまで完璧に仕上げてきたうえに音があそこまで洗練されていて、なおかつエネルギーと
パワフルに満ちたまるで奇跡のような名演だと改めて感じたりもします。
最後に余談ですけど、
「ダンス・フォラトゥーラ」の全国大会初演は、実は高校の部とか一般の部ではないのです!
実はなのですけど、1989年の中学の部で出場した宮崎県の生目南中学校が全国大会初演なのでした~♪
しかも、この学校は全国大会初出場です!
この演奏、私も普門館の生演奏で聴きましたけど、とてつもなく印象度が強い演奏だったと思います。
私の印象としては、この難曲中の難曲を音にするだけで精一杯だけど、「音楽をみんなで奏でよう!」という
熱いハートは客席にもとてつもなく熱く熱く伝わっていたと思います。
全体的な印象は「細かい事は気にするなっ!!」という感じで、
細かいところよりも全体の雰囲気を大事にしているという感じで、とにかくあの荒っぽいおおらかさは、
現在のコンクールでは絶対に聴く事が出来ない熱さは絶対にあると思います。
例の中間部のピッコロトランペットのとてつもないハイトーンのソロの箇所はさすがに中学生では無理という事で、
生目南中学校は、あの部分のピッコロトランペットソロは一オクターブ下げて普通のトランペットが2本で演奏するという
荒業も披露してくれていたのもご愛嬌でした~♪
前半から中間部まではギリギリ音楽として成立していましたけど、後半以降各パートも集中力が切れたのかミス連発
というのも中学生の体力から考えると仕方が無かったのかもしれないです。
ちなみに・・翌年の1990年には、「出場すればほぼ100%の確率で銅賞」とも揶揄されていた四国の大学の部代表の
愛媛大学が比較的少人数ながらもこの「ダンス・フォラトゥーラ」で見事に全国大会・銀賞を掴んでいたのも
称賛に値する話とも言えそうです。
少人数のダンス・フォラトゥーラというと1988年の関東大会で銀賞を受賞した千葉県代表の松戸矢切高校の知的で
エネルギッシュな演奏も素晴らしかったです。
(たしかファゴットすらも無くて課題曲の「深層の祭」の冒頭はテナーサックスで代用していたような記憶があります)

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「響け! ユーフォニアム」第一期と第二期のトランペットパートから、香織先輩・優子・麗奈

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高坂麗奈
クロード・スミスの「ダンス・フォラトゥーラ」というとピッコロトランペットのハイトーンソロが大変印象的ですけど、
トランペットというと真っ先!に思い浮かぶキャラというと「響け! ユーフォニアム」の
一年生トランペット奏者の高坂麗奈に尽きると思います!
当ブログでもアニメ「響け! ユーフォニアム」の第一期が放映された2015年と第二期が放映されていた2016年においても
この麗奈は頻繁に登場していました。
「響け! ユーフォニアム」の主人公はユーフォニアムパートの久美子なのだとは思うのですけど、
特に第一期においては最終回とその一つ前の回以外では「主人公なのに影がうすいキャラ・・」と当ブログでも散々揶揄されて
いた久美子に対して、第一期の真の主役は誰がなんといっても高坂麗奈だと思いますし、
私自身「響け! ユーフォニアム」の中で圧倒的に大好きなキャラは麗奈です。
高坂麗奈というと原作者の設定によると、
艶のある長い黒髪とこぼれ落ちんばかりの大きな瞳が目を引く自信にあふれた美しい容姿の少女とされていて、
アニメ版としても、容姿端麗・頭脳明晰な黒髪の美少女で、そのクールな印象とは裏腹に胸の内ではトランペットに対して
熱い想いを抱いていて一見して他を寄せ付けぬような雰囲気を放つというのが基本設定になっています。
原作のライトノベルを読んで頂けると分かる通り、麗奈の基本パーソナリティとして、
周囲と同じであることを良しとせず、「特別な存在になりたい」と願うストイックな性格の持ち主で、
当初は他人との間に距離を取り、特定の誰かと一緒にいることを嫌う「孤高の存在」でもあるのが大きな特徴なのだと
思います。
麗奈の不屈の精神やトランペットに対するプライドは半端ではない強さであり、
いかなる周囲の状況も我関せずといった具合で周囲から孤立しようがお構いなしで、孤高の存在と言えそうです。
第一期においては自由曲の「三日月の舞」で登場するトランペットのソロを巡って、3年生の香織先輩と
部員全員を巻き込むあのギスギスのオーディションをやってでも
「私が一番だし、私は絶対に他の人には負けたくないし、私は特別な存在である」という事を立証するために
そのオーディションを勝ち抜き、結果的に関西大会と全国大会でも立派にソロを務めあげていました!
それにしてもあのオーディションに際しても、言いがかりを付ける2年生の優子に対しても
「だったら何だっていうの? 滝先生を侮辱するのはやめてください。なぜ私が選ばれたか、そんなのわかってるでしょ?
香織先輩より、私の方が上手いからです!」と毅然として言ってのけ
優子が「アンタねえ! 香織先輩がどれだけ気を遣ったと思ってるのよ!?」と詰め寄っても麗奈は
「ケチつけるなら、私より上手くなってからにしてください」と 優子をはじめ周りの部員に対して決然と言い放っていた光景は
確かにとんでもないギスギス場面なのだけど、「響け! ユーフォニアム」屈指の名場面の一つだったと思います!
もしも麗奈が「ダンス・フォラトゥーラ」のあの超絶ソロを担当したとしてもビシッと決めていたと思いますし、北宇治高校の
麗奈・香織先輩・優子といった優秀なトランペット奏者たちが奏でていたらとてつもない名演が生まれそうな
予感もありそうです~♪
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仰る通り「吹奏楽の華はなんだかんだいってもやはりトランペットだなー」という
事を感じてしまいます。
特にそれを象徴していたのはやはりなんといっても精華女子のあの
驚異的な名演なのだと思います。
あの難曲のあそこまで精緻にかつ華麗に演奏した名演は今後不世出なのかも
しれないです。