クラリネットの派生楽器の一つである「バスクラ」(バスクラリネットの略)は、普通のB♭クラリネットの約2倍の長さがあり、
管弦楽においては重要な低音旋律において、チェロやコントラバス等の演奏に重なることで明快さを与えたり、
時には自らソロを担当することもあります。
吹奏楽では金管低音楽器を補うための存在として地味ながらも縁の下の力持ち存在として、チューバやコントラバスと共に
全体のリズムを支える目立たない中でも大切な役割を担っている楽器でもあります。
バスクラよりも更に低音が出せるクラリネットの派生楽器として「コントラバスクラ」という楽器もありますけど、
このコントラバスクラは価格的にはとてつもなく高額な楽器であり、私が現役奏者の頃には、普通の公立校の吹奏楽部に
コントラバスクラやコントラファゴットが常備されていることなんてまずお目にかかったことはなかったです。
私自身、都内の大学の吹奏楽団に入団した際に初めてこれらの楽器の実物を目の当たりにした際には、結構感動した
ものでした・・
最近の吹奏楽コンクールにおいては、最近の少子高齢化の影響もあるせいなのか、学校数・生徒数が少ないという事も
あるせいなのか吹奏楽部の予算が私の頃に比べると格段に増えているのかどうかは定かではありませんけど、
こうした高額なコントラバスクラ・コントラファゴット・コールアングレがごく普通に配置されていることは珍しくもなんともなくて
このあたりからも「時代は既に変わったよね・・」としみじみ実感させられるものもあったりします。
支部大会以上の吹奏楽コンクールや東京佼成Wとかシエナのようなプロの吹奏楽団の場合は、
パスクラリネットとクラリネットの持ち替えという事はあまりないように感じられます。たいていバスクラ奏者は持ち返せずに
単独で配置されています。
プロの管弦楽団の場合、日常的ではありませんがクラリネット奏者がバスクラを掛け持ちして吹く事もあるようです。
(日曜PM21:00から二時間枠でEテレで放映されているN響の定期公演の映像を見ると、クラリネット奏者がバスクラを
掛け持ちしたり、またまたクラリネット奏者がエスクラというかE♭クラリネットを掛け持ちしている様子も散見されます。
またオーボエ奏者がコールアングレに掛け持ちしている様子やはたまたファゴット奏者が曲の途中でコントラファゴットに
持ち替えしている様子を見ると「プロ奏者は大変・・」と改めて感じたりもします)
改めてですけど、バスクラとは、クラリネットより1オクターブ低い音が出るクラリネットの派生楽器の一つで、
普通のクラリネットの長さで言うと大体倍ぐらい大きさがあります。
指使いはクラリネットと同じですので、クラリネットと持ち替えをしても違和感はほとんどありません。
マウスピースがクラリネットよりもかなり大きめですので、クラリネットと比べてはるかに簡単に音が出ますし、大変吹きやすい
楽器であると思います。
特徴はなんといってもあの重厚な低音だと思いますし、
管弦楽でもそうした深みのある表現とか内省的な雰囲気を出したいときに作曲家がたまにですけど使う場合も
あったりします。
(その代表的使用例がチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」第一楽章だと思います)
吹奏楽作品でこのバスクラが使用されている代表的事例としては、
何といっても小山清茂の「吹奏楽のための木挽歌」~Ⅳ.フィナーレのラストのバスクラの鬱々としたソロで閉じられる
あの雰囲気が大変印象的ですし、
(木挽歌のバスクラのソロはバスクラ以外に音は入らない完全ソロですので、他の奏者は曲の終結までバスクラ奏者の
完全ソロを「どうか外さないで無事に閉じられますように・・」と願っているのかもしれないです)
クロード・スミスの「フェスティヴァル・ヴァリエーション」にて中間部が盛大に盛り上がって終結部に入る所のつなぎとして
バスクラのソロが用いられているのは大変印象的です。
1997年の全国大会では、愛工大名電があまりにも盛大に感動的に中間部を吹きあげたため、ここで曲が終わったと
勘違いした多くの聴衆が拍手をしてしまい、バスクラのあのソロが拍手でかき消されてしまったという
エピソードはいまだに語り継がれています。
今でこそ「フェスティヴァル・ヴァリエーション」は精華女子等の名演によって超メジャー人気曲になっていますけど、当時は
どちらかというと「忘れられたオリジナル曲」という感じでしたので、普門館の聴衆もスミスのフェスティヴァル・ヴァリエーションを
ご存じない人は意外と多かったのかもしれないです。
ちなみにですけど、私自身がバスクラのソロを初めて耳にしたのは、1978年の吹奏楽コンクールの課題曲Aの
ジュビラーテにおいて、中間部が閉じられてトランペットのソロが開始される直前のバスクラの伸ばしによるソロでした。
翌年の1979年の吹奏楽コンクールの課題曲はCの「幼い日の思い出」でしたけど、この課題曲も冒頭の全体でのffの一音の
後にはバスクラの朗々とした音の伸ばしへと受け継がれていきますので、バスクラは意外と使い勝手があるのかも
しれないです。
そして吹奏楽コンクールにてバスクラの威力を初めて実感させられた演奏が1982年の仙台第一高校によるグローフェの
組曲「グランド・キャニオン」の「山道を行く」の楽章の終結部近くのバスクラの軽快で躍動感あふれる弾力的なソロを
聴いた時といえそうです。

バスクラってクラリネットとの違いとして他にどういう事が挙げられるのでしょうか・・?
リードがクラリネットに比べて1.5倍程度大きいせいもありますけど、「リードミス」が少ないというのは奏者にとっては
ありがたいものがあります。
それでも吹奏楽コンクールでも時折事故はあったりしまして、1977年の駒澤大学の「春の祭典」~第二部の際に
終結部近くにてバスクラの完全ソロ時にバスクラがまさかのリードミスを起こしてしまい、普門館の会場内に
とてつもないバスクラの絶叫音が響き渡りましたけど、その後奏者は何事もなかったかの如く、残りのソロを見事に
吹き上げていましたし、駒澤大学は無事に金賞も受賞しましたので、あのバスクラ奏者の精神力の強さには
最大限の称賛を改めておくらさせて頂きたいと思います。
バスクラはかなり重たい為、首にストラップを付け、ストラップと楽器を結ぶことが多いです。
(ストラップを使用するサックス・バスクラ・ファゴット奏者は首こりと肩こりが多いと言われるのは、多分このストラップの
おかげだと思います)
また管体に取り付けられたエンドピンで楽器を支える事もあります。
バスクラは音量的にはどちらかと言うと弱いと思うのですけど、そのせいか同じ木管低音セクションの中でも
バリサク(バリサンサックス)に音がかき消されてしまうというのは吹奏楽あるある話の一つなのかもしれないです。
私自身、バスクラは何度か吹いたことがあります。
私の高校の場合、毎年秋になると「アンサンブルコンテスト」(略称、アンコン)に出場するパートもあったりして、
毎年クラリネットパートはこのアンコンに欠かさず出ていました。
私自身はクラリネットとバスクラを掛け持ちし、
低音が必要な場合、さっとクラリネットからバスクラに持ち替えし、低音パートとして支える事がありましたけど、
前述のようにバスクラはリードミスがあまりない安定した楽器なので掛け持ちはし易かったと言いたいところですが、
逆にバスクラからクラリネットに戻る際の違和感が相当残り、こちらの方が苦戦した記憶があります。
またなんどかエスクラ(スモールクラリネット)もクラリネットと持ち替えしたこともありますけど、
クラリネット→エスクラへの持ち替えは難しさ・唇の抵抗感を感じたものの、エスクラ→クラリネットへ再度持ち替えする際は
そうした難しさはほとんど感じなかったものです。
一時期クラリネットからアルトサックスにコンバートされた際に、アルトサックスは大変吹きやすかった事と合わせて考慮すると、
マウスピースが大きい楽器からマウスピースが小さい楽器への持ち替えは難しく扱いが厄介で慎重さが求められるのに対して、
逆にマウスピースが小さい楽器からマウスピースが大きい楽器への持ち替えはそれほど難しくもなく抵抗感もないと
私的には感じたものです。
金管楽器の中でマウスピースが小さいホルンとトランペットは音が出にくく、マウスピースが大きいトロンボーンやチューバは
比較的音が出しやすいという事にも通ずるものがもしかしたらあるのかもしれないです。
管弦楽の世界でバスクラが使用されるようになったのは18世紀末期の頃で、楽器としてはむしろ新参者なのかもしれないです。
ソロとしてのこの楽器に光を当てたのは19世紀以降の作品であるのも楽器の成立時期と関係しているのだと思われます。
このバスクラが効果的に使用されている管弦楽曲を挙げてみると・・・
〇チャイコフスキー/バレエ音楽「くるみ割り人形」~こんぺい糖の踊り
〇 同 /交響曲第6番「悲愴」第一楽章
〇ワーグナー / 楽劇「神々の黄昏」~夜明けとジークフリートのラインへの旅
〇ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」第二部
〇グローフェ/組曲「グランドキャニオン」~山道を行く
〇ウィリアム=シューマン/交響曲第3番第二楽章第二部
〇ショスタコーヴイッチ/交響曲第7番「レニングラード」第二楽章
〇ラヴェル / スペイン狂詩曲~Ⅱ.マラゲーニャ
ショスタコーヴィッチの7番のバスクラのソロの扱いは見事だと思います。
あの呟くような陰鬱なソロがあるから次のオーボエの悲痛なつんざくような高音のソロが生きてきますし、
次の全体でのffの音響が対比として効果的だと思います。


ららマジにおけるクラリネット奏者は綾瀬凛という後輩からは怖がられているきょっと気難しくて、自分にも他人にも厳しい
雰囲気があるJKさんです。
キリッ・・!としていて後輩に対して厳しく接する雰囲気の綾瀬凜お姉さまの上記のようなちょっと怒ったような表情も
とてもかわいらしいものがありますけど、
同じパートに自分に厳しすぎる子がいたりするとちょっとつらいものがありそうですけど、ららマジの綾瀬凜みたいな
JKさんだったら、私は喜んで同じパート内で頑張らさせて頂きたいものです~♪
優雅で真面目で完全主義者の綾瀬凛も、その優雅な姿とは異なり、 陰ではクラリネット特有のリード調整の難しさとか
リードミスによる絶叫音に意外と苦労しているのかも しれないです。
ららマジ器楽部の合奏の中で指揮者が「木管の重低音が欲しい・・」と感じた場合は、綾瀬凛もクラリネットからバスクラに
持ち替えされるのかもしれないですし、性格的には多少不器用そうでも楽器の持ち替えは器用そうに造作なく
こなされるのかもしれないです~♪
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自宅断捨離中、長い間吹いていなかったバスクラが出てきて、ちょっと吹いてみた後にこのブログと出会いました。偶然とはいえ、びっくりです。
高校時代にB.Cla とC.b.Claの持ち替え(つまりバスクラ専属)奏者でした。一般バンドではこれにアルトクラが加わり、ほとんどクラリネット族中低音なんでもこい状態でした(笑)
バスクラって吹奏楽では地味な存在ではありますが、ソロがあるときは伴奏ナシのソロになるという特典があり(笑)、これがやめられない原因かと思われます(笑)
もちろん、他のパートとのハーモニーを合わせていく際にも媒介となって新しい音(というか、混ざり合った音)を出すのに役立つ楽器であるという実感もあったりしましたが。(偉そうですね(笑))
とにかくハマる楽器なのです!(熱弁!)
1984年くらいだったか、フェスティバルバリエーションを定期演奏会でやり
(天理高校が全国で演奏した年です。)、コントラバスクラのソロの前に大拍手が起こり、拍手が収まってからソロを吹いたという経験あり。(貴重な経験ですね。(笑))
あの曲はバスクラ吹きにはたまらない曲ですね。
木挽き歌も、吹奏楽とオケの両方吹きました。あれもいいですね。
邦人作品では、結構活躍させていただき、感謝感激でした。(うまく吹けたかどうかは別問題です(笑))
アレンジものも、楽しく演奏させていただきました。(いや、うまく吹けないというプレッシャーの方が大きかったかもしれないですが)
その後、一般バンド・オーケストラ(こちらは2ndClaとの持ち替えでしたが)バスクラを楽しませていただきました。クラの方々、バスクラは一度やったらやめられない楽器ですよ~!
20年ぶりにバスクラを吹いてみたら、リードが固く感じられました。もう、年かな(笑)今度リードを買う時は3番にします(笑)
最後に、自分が演奏していた演奏についてもいくつかブログにお書きくださっているようで、ありがとうございます。さっそく拝読させていただきます。
往年のバスクラ吹きより