トロンボーンは、スライドの伸び縮みで音程を調節する中音域の金管楽器の一つです。
トロンボーンは小編成でも大編成でもたいていの場合3人一組で構成される事が多く、
その構成は、ファースト・セカンド・バストロという感じなのですけど、バストロンボーンは楽器自体が
ファーストとセカンドと管の構造自体が違っているという感じです。
トロンボーンの爆発的なあの推進力とか大音量の迫力は見ていても大変気持ちがいいものです!
例えばレスピーギの交響詩「ローマの松」とかショスタコーヴィッチの交響曲第5番終楽章とか
マーラーの交響曲第1番「巨人」終楽章などのような管弦楽曲の中で「ここぞクライマックス!」という場面でのトロンボーンの
豪快な響きはトランペットと共に最大限発揮されていると感じられます。
トロンボーンは2本のU字管を互いに挿し込んだような形状をしていて、片方のU字管がスライドできるようになっており、
管の長さを変えることによって音の高さを調整するのが大きな特徴です。
このスライド機能というのはトロンボーンが最初に登場した時からの特徴でもあり、他の楽器にはない最大の特徴でも
あります。
最近ではそうした光景はまず見られないですけど、1970年代の吹奏楽コンクールの地区予選等では、下手くそな
トロンボーン奏者が演奏中にうっかりと勢い余ってスライドをポロリと床に落してしまった・・みたいな都市伝説もあったりも
します。
トランペットよりも1オクターブ低い中音域の金管楽器であり、複数本で奏でるハーモニーの美しさには定評があります。
トロンボーンのメロディーのはもりや美しさの代表的事例としてワーグナーの歌劇「タンホイザー」序曲、
ブラームスの交響曲第1番終楽章、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」~第二楽章、
マーラーの交響曲第2番「復活」第五楽章、マーラーの交響曲第3番「夏の朝の夢」~第一楽章などを挙げたいと思いますし、
吹奏楽オリジナル曲としては、リードのアルメニアンダンスパートⅡ~Ⅲ.ロリからの歌やチェザリーニのアルプスの詩、
バーンズの交響曲第2番~Ⅱ.中断された変奏曲などを挙げたいと思います。
唇の締め具合とスライド管の七つのポジショニングの併用で自由に半音階を奏でることが出来ますけど、
真のレガート奏法が大変難しい楽器でもあったりします。
強奏時の鋭く輝かしい迫力ある音色も素晴らしいですけど、弱奏時の暗くしめった音も大変幽玄で美しいです。
以前の当ブログのバルトークの「中国の不思議な役人」記事の際に、トロンボーン奏者二人によるソロ的部分はとてつもなく
しびれてかっこいい!と記させて頂きましたけど、それ以外に管弦楽曲でトロンボーンがソロ的に大活躍したり、とてつもなく
目立つ曲でどんな作品があるのか考えてみると・・・
M.ラヴェル / ボレロ
トロンボーンにとって大変難しい高音域でのソロが与えられています。
都市伝説化している話として、とある管弦楽団のトロンボーン奏者が指揮者より
「今度の演奏会で演奏するボレロのトロンボーンパートのソロを完璧に決めたら、君は明日から当団の正式メンバーとする」と
言われて本番に臨んだものの、結果は見事に外してしまい、その日のうちにトロンボーン奏者は失踪または自殺を
してしまったというネタが古くからあったりします。
リムスキー・コルサコフ / 序曲「ロシアの復活祭」
一般的にソロが指定されるのはファースト奏者ですけど、この曲においてはなぜかセカンド奏者が指定され、
中間部の朗々としたソロを神秘的に奏でられます。
セカンドトロンボーンはリムスキー・コルサコフに足を向けて寝られそうにないですね~
A.コープランド / バレエ組曲「ロデオ」~Ⅰ.カウボーイの休日
中間部に粋で洒落っ気たっぷりのユーモラスなソロが用意されています!
小山清茂 / 管弦楽のための(吹奏楽のための)木挽歌~Ⅱ.盆踊り
(小山さんの作品としては鄙歌第2番にもトロンボーンのソロと強奏はもりがあったりもします)
C.アイヴズ / 交響曲第2番終楽章
ソロではないですけど、ラスト近くの豪快なメロディーラインをトロンボーンがほぼ独占状態で、あのメロディーを奏でる
トロンボーンパートは気分爽快だと思います!
トロンボーンの特徴は上記でも触れた通り、そのスライド操作にあるのですけど、スライド管をすべらせるように吹いたり、
グリッサンド気味に吹くとある時は不気味に、ある時はユーモラスな雰囲気を醸し出せると思います。
不気味な例がバルトークの「中国の不思議な役人」ですけど、ユーモラスな事例としてゾルダン・コダーイの
組曲「ハーリ・ヤーノシュ」を挙げたいと思います。
ゾルダン・コダーイというハンガリーの作曲家には、最近の吹奏楽コンクールでは、ハーリ・ヤーノシュよりはむしろ
ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲とかガランダ舞曲の方が演奏頻度が高いのかもしれないですけど、
クラシック音楽に精通した皆様の感覚で言うと、コダーイは合唱の作曲の分野にも多大な貢献があり、
ハンガリーの民謡を世界に広めようとした貢献度と
学校の音楽教育に熱心であった御方という印象も実はあったりもします。
ちなみにですけど、ハンガリーは東欧圏なのですけど日本と少しだけ似ている点もあったりして、その一つが温泉文化が
定着している事や学校の数学の授業としてそろばんが採用されている点もありますし、
氏名表記が共通しているというのも面白い点だとも思います。
例えば日本において、鈴木一郎というと姓は鈴木で名前は一郎なのですけど、欧米の場合ですと、例えば
マイク・スミスの場合、マイクは名前でスミスが姓です。
要は日本と欧米は氏名の表記が全く真逆なのです。
その中でハンガリーの氏名表記は日本と同じであり、例えば上記のハーリ・ヤーノシュの場合、
ハーリが姓でヤーノシュが名前という事になります。
コダーイの組曲「ハーリ・ヤーノシュ」はハンガリーで親しまれているお伽噺の主人公であり、
若い頃の武勇伝を大ぼらを交えつつ語りかけるというのがお話の概要でもあったりします。
合戦でナポレオン皇帝を打ち負かしたり、ナポレオンの奥様のジョセフィーヌ皇后より
「今すぐ私と結婚して私とどこから駆け落ちして!」と誘惑された・・等の大嘘話がかなり出てくる楽しいお話でもあったりします・・
この組曲で最も有名なのがⅡの「ウィーンの音楽時計」だと思います。
冒頭いきなりコンサートチャイムとドラによって時計の音が描写されます。
時計と言うよりは、むしろ「ゼンマイ仕掛けのおもちゃ」みたいな感じもするのかもしれないです。
聴いていて実にハッピーな気持ちになれるとても楽しい曲です。
ちなみにこの曲、アニメ「のだめカンタービレ」でも何回か使用されています。
コダーイの組曲「ハーリ・ヤーノシュ」は下記の6曲から構成されています。
Ⅰ.序曲、お伽話は始まる
Ⅱ.ウィーンの音楽時計
Ⅲ.歌
Ⅳ.合戦とナポレオンの敗北
Ⅴ.間奏曲
Ⅵ.皇帝と廷臣たちの入場
Ⅰの冒頭においては、管弦楽団による壮大なくしゃみの音の模倣から開始されます。
これは「聞いている者がくしゃみをすれば、その話は本当のことである」というハンガリーの伝説をベースにしているそうです。
ⅢとⅤにハンガリーの民族楽器であるツィンバロンが使用されていることが際立っています。
そしてこの組曲において、管弦楽曲としては大変異例な事ですが、ⅡとⅣにおいては弦楽器は一切使用されていません。
吹奏楽コンクールにおいて、Ⅱ・Ⅳ・Ⅵの組合せによる自由曲の定番曲である事もある意味妥当といえそうです。
そしてこの組曲において全体的にトロンボーンは大活躍を見せています!
特にⅣの合戦とナポレオンの敗北におけるトロンボーン奏者による強烈なグリッサンド奏法は迫力満点ですけど、
これがまたとてつもなくユーモラスで楽しい表現となっています。
途中出てくるトロンボーンとチューバによって奏される主題は、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」のパロディです。
そして最後に出てくるアルトサックスのうらぶれたメロディーを伴奏として支えているトロンボーンの弱奏によるグリッサンドも
たいへんいい味を出していると思います~♪
このハーリ・ヤーノシュはトロンボーン冥利に尽きる曲であり、確かにトロンボーン奏者は大変ですけど、吹いていても
聴いていてもとてつもない爽快感があります。

美少女とトロンボーンというと印象的なのは「響け!ユーフォニアム」以外では、アニメ作品ではないのですけど、
2017年1月にリリースされた音と魔法の学園RPG「ららマジ」が大変印象的です~♪
ららマジのストーリーは、とある呪いにより廃部寸前となってしまった東奏学園器楽部を舞台に、
プレイヤーは器楽部員として登場する30人のヒロイン達を呪いから救い出し、彼女たちが再び演奏できるようにすることを
目指すように頑張るという内容です。
そして30人のJKさんのメンバーの中で、トロンボーン奏者兼コンサートマスターの地位にいるのが3年生のお姉さまの
星崎梨花です。
担当楽器はトロンボーンで、器楽部のコンミスを務める完璧超人で、器楽部創立メンバーの一人であったりもします。
武器のトロンボーン型の槍は突いたり切りつけたりするだけでなく小規模な爆風を放つこともできるそうです。

上記画像の星崎梨花はいかにも聡明でお勉強ができそう・・という雰囲気に溢れていると思います。
星崎梨花のゲーム上での声優さんは赤崎千夏さんと言う事で、赤崎さんは2019年度の夏アニメの一つである
「女子高生の無駄づかい」にてバカ役(田中望役)を怪演された御方であり、あのバカの
「なー、今からすげー事言ってもいい?」の
フレーズを聞くだけで田中の尋常でないバカ振りが見事に伝わってきたものですけど、
「ららマジ」ではそんな雰囲気を微塵も感じさせないばかりか、星崎梨花の声の雰囲気はいかにも聡明で頼りになる
上級生のお姉さまという雰囲気に溢れていますので、改めて声優さんの声の演技の素晴らしさには目を見張るものが
あると思います。
それにしても美少女がトロンボーンを奏でているシーンはとても素晴らしいと思いますし、星崎梨花のトロンボーンによる
「中国の不思議な役人」や組曲「ハーリ・ヤーノシュ」の爆演も聴いてみたいですね~♪
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ⅢとⅤで登場するハンガリーの民族楽器、ツィンバロンの響きがとても印象的です。
ただ楽器としての奏者が限られているせいなのか、
デュトワが指揮したN響ではツィンバロンではなくてシンセサイザーで代用していたのがとても印象的でした。
吹奏楽コンクールでは淀先生時代の亜細亜大がツィンバロンを加えたこの曲の本来の響きを実現していたのが
予想外でもありました。