
「ウルトラセブン」は、円谷プロダクション制作による空想特撮シリーズ第3弾にしてウルトラシリーズ第4作目なのですけど、
そのドラマ性・キャラクターの魅力・ストーリーとしての素晴らしさなど総合的に考えるとウルトラマンシリーズとしては
最高傑作であるという評価も十分成り立つようにも感じられます。
前作の「ウルトラマン」がどちらかというと自然現象としての怪獣が敵であるというパターンが多かった中、
ウルトラセブンの敵とは言うまでもなく明確な侵略の意図を持った宇宙人という事になるのですけど、
その宇宙人が地球を侵略するにもなにかしらの理由があめのではないかとか、ウルトラセブンが守るべきものとは
地球や地球人であるのですけど、果たして自分勝手な理屈ばかり並べる地球人そのものが本当に「守るべき対象」で
あるのかどうかも含めて結構シリアスな側面も含まれており、単純な勧善懲悪的側面だけの特撮ものではない事は、
ウルトラセブンの放映時期が1967~68年という時代を考慮するととにかく画期的な記念碑的な作品と言える事は
間違いないと思います。
ウルトラセブンで登場していた話と宇宙人として私的に印象的な回は何なのかというと、一例を挙げると
「狙われた街」のメトロン星人・「ウルトラ警備隊、西へ」(前・後)のキングジョー・「人間牧場」のブラコ星人・
「北へ還れ!」のカナン星人・ 「ノンマルトの使者」 の蛸怪獣ガイロスと海底人ノンマルト 、
「セブン暗殺計画(前・後)」の ガッツ星人 、 「第四惑星の悪夢」の ロボット長官、ロボット所長、第四惑星人などが
挙げられると思うのですけど、そうした中でも特に光り輝いているというのか感動的な回が
最終回の前後編における「史上最大の侵略者」なのだと思います。
最後の戦いに挑むモロボシ・ダンがアンヌ隊員に自らがウルトラセブンであることを告げる印象的なシーンのBGM
として効果的に使用されている楽曲がシューマンのピアノ協奏曲~第一楽章冒頭です。
ダンがアンヌ隊員にぼくは・・・、実はウルトラセブンだったんだ」と衝撃的に告白するシーンが終わると同時に
シューマンのピアノ協奏曲冒頭の「ジャン!! ダダン・ダダン!!」が鳴り響きますのでこれはかなりインパクトがあると思います。
ちなみにウルトラセブン最終回のシューマンのピアノ協奏曲で登場していたピアノのソリストは
ディヌ・リパッティという33歳で夭逝したそのあまりにも早すぎる死が惜しまれる若きピアニストでもありました。
リパッティは1917年ルーマニアに生まれ、1950年に、わずか33歳の若さで白血病(厳密には悪性リンパ腫のホジキンリンパ腫)
のためにこの世を去った天才型のピアニストなのですけど、亡くなる直前までほぼ気力だけで演奏会のステージに立ち続け、
特に得意としてきたショパンのレパートリーにおいて、生来のバランス感覚に基づいた清潔な叙情と繊細なデリカシーを
遺憾なく発揮されていて聴く者の胸を打つものは間違いなくあると思います。
第二次世界大戦の勃発により国を転々とします
リパッティはその短い生涯はほぼ全て戦争に振り回され、第二次世界大戦が終結しやっと落ち着いて
ピアノに専念できる時間が出来た時に、悪性リンパ腫のホジキンリンパ腫を患ってしまい、
激痛と高熱に戦いながら演奏活動とレコーディングをされていたとのことです。
リパッティのピアノの特筆すべき点として特に強調しておきたい点は、瑞々しい感性と
ペダルを極端に踏まないという奏法を重視し、音を伸ばすところはしっかり伸ばし切るところはしっかりと切るという
ピアノの本来の基本技術を素直に演奏に取り入れた点も挙げられると思います。
ウルトラセブンの最終回が放映されていたのは1968年で、そのBGMとして使用されていたリパッティソリストによる
シューマンのピアノ協奏曲がフィルハーモニア管弦楽団・カラヤン指揮で演奏・録音されたのは1948年ということで、
正直録音もアナログ録音に近いものがあり、決して良好な録音状態ではないですけど、当時のウルトラセブンのスタッフの
皆様のシューマンピアノ協奏曲を選曲し、そのソリストにリパッティの演奏を選択した感性の素晴らしさと見識の高さには
強く敬意を表させて頂きたいと思います。
ちなみに冒頭の画像は、2018年のウルトラセブン最終回放映から50年が経つという記念すべき節目に合わせて、
最終回のBGMとして流されていたリパッティソロによるシューマンのピアノ協奏曲とグリーグのピアノ協奏曲が
新規DSDリマスターでの復刻販売が実現され、そのCDジャケットでもあります。
このCDは限定販売で特別仕様としてのウルトラセブンとリパッティが描かれたジャケットと別冊40Pブックレットの特典も
当時は付属されていたとのことです。
シューマンの「ピアノ協奏曲」は私自身は結構昔から大好きな協奏曲でもあります。
聴いているだけで凛としたものというか張りつめた瑞々しさみたいなものを感じてしまいますし
第一楽章冒頭のあの何とも言えない哀愁と凛とした決意みたいなものは聴くだけでやはり「何か」を感じてしまいます。
出だしはいきなりピアノの「ジャン!! タタン・タタン」で唐突に開始されるのですけどそれに続くオーボエのソロがあまりにも
美しすぎてこの冒頭の部分だけでも私は一撃でKOされてしまいそうです。
冒頭で記したとおり、ウルトラセブンの最終回でこの曲が選曲されたというのも十分妥当なのだと思います。
面白い事にこの協奏曲は、グリーグの「ピアノ協奏曲」とカップリングでCD化される事が多いと思います。
(前述のとおり、リパッティの復刻版もグリーグとシューマンのピアノ協奏曲が収録されています)
雰囲気が似ている訳でもないし、音楽の方向性は全然バラバラだし、あまり共通性はないと思うのですが、
似ていると感じるのは強いて言うと冒頭の出だしなのかもしれないです、
グリーグは、ティンバニのトレモロのクレッシェンドが終わると同時にピアノがすぐに入らないといけないし、
シューマンは、管弦楽団のジャンという第一音の次の瞬間には演奏がスタートしなくてはいけないし、
二つの協奏曲ともにその出だしはかなり神経を使うのは間違いないと思います。
グリーグのピアノ協奏曲は、一言で言うと抒情性の高い誇り高き協奏曲という感じなのですけど、
シューマンの方は、どちらかと言うと協奏曲というよりは、シンフォニーのようにも
聴こえるくらい、管弦楽との融合性が高く感じられる曲です。
シューマンの場合、協奏曲というよりは、ピアノと管弦楽のためのファンタジーとも言えるような構成に近いと思います。
グリーグの場合、ピアノが完全に主役で、管弦楽団はピアノの引き立て役という感じが濃厚です。
シューマンの場合、ピアノとオーケストラが完全に一体化しているような感覚もありますし、
特に第三楽章の、ピアノとオーケストラのかけあいの場面は、完全に一つの楽器として融合しているような感じさえします。
だけど、シューマンのあの第三楽章のソリストは大変だと思いますね。
あんな難しいパッセージを変調に次ぐ変調を重ねながら休み無しに一気に駆け抜けていく様子は、
スピード感とか爽快感というよりは、むしろ「気高い美しさ」みたいなものを感じてしまいます。
チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲」は、見方によっては管弦楽団とソリストのバトルというのか
「やられたらやり返す」みたいな雰囲気すら漂う音楽の格闘技みたいな雰囲気すらありますけど、
シューマンの場合、本当に優雅と言うか、
確かに第三楽章のソリストと管弦楽団の掛け合いはバトルに近いものもあるのですけど
間違いなくこの第三楽章は、オーケストラとピアノはほぼ完璧に一つに溶け合っていると思いますし
その幻想的融合性は、お見事の一言に尽きると思います。
それにしても改めてシューマンのピアノ協奏曲のソリストは大変ですよね。
第三楽章の変調の変調につぐ指使いの難しさもそうですし、一般的にピアノ協奏曲の第一楽章の冒頭は
1~2分程度の管弦楽による前奏や主題提示があり、ピアノソリストはその間の心の準備ができそうなのですが、
第一楽章の冒頭からすぐに登場しないといけない難しさやタイミングの難しさはソリスト泣かせのものがありそうです。
確か1998年秋だったと記憶していますが、パスカル=ヴェロ指揮での新星日響の定期演奏会での
二曲目のシューマン/ピアノ協奏曲にて、ソリストが椅子を調性しあとは指揮者がタクトをおろすのを待つのみという
その演奏開始直前に突如、ソリストが、「ノンノンノン!」みたいな言葉を発し、唐突に舞台裏に消えて行ってしまった事も
ありました。
そして3分くらい経過して、何事もなかったかのように再度ピアノに座り演奏が開始され、演奏も無難に終わらせていました。
結局あの時何が起きていたのかは今現在でも謎ではあるのですけど、ソリストもシューマンのあの出だしのプレッシャーに
瞬間的に負けてしまったのかもしれないですけど、とにかく珍しい体験でもありました。
音楽というか、ライヴ演奏においては、 ありえないミスとか想定外の事故というものはプロといえどもありうると思いますし、
人間が行うものですので予想外の出来事というのはあるのだと思います。
私が、過去において見かけた吹奏楽コンクールの演奏中での事故はいろいろとありましたけど、
一番笑ってしまったのが、トロンボーン奏者が、ついついうっかりスライドがポロっと抜けてしまい、
前方のサックス奏者の後頭部を直撃した事なのかもしれないです・・(汗・・)
他にも、ヴィヴラフォーンの電源コードに打楽器奏者の足が絡んでしまい打楽器奏者が思いっきり壇上で転倒したりとか
指揮者の指揮棒がすっぽ抜けてコントラバスを直撃したりとか色々ありますよね~
こういう事って全国大会でもたまーにあったりするものでして、 一つの事例として、
1980年の全国大会・中学の部で、山王中学校が、自由曲のバレエ音楽「四季」の演奏中に
打楽器奏者が間違えて、サスペンダーシンバルのスタンドを倒してしまい
本番中なのに、ガッシャーンと結構すごい音を立てていた事もありました。
(この音は「日本の吹奏楽80」というレコードの中にもしっかりと収録されています)
最後に再度話をウルトラセブンに戻しますと、私自身ウルトラセブンを始めてみたのは当然リアルタイムではなくて、
たぶん再放送か再々放送だったと思います。
私自身、子供のころは実はこうした特撮もの、仮面ライダーや戦隊ものはあまり興味がなく、クラス内でも
男子児童が夢中になって当時の仮面ライダーやウルトラマンタロウや戦隊ものの話題をしている中で、
私は女の子たちと一緒に当時放映されていた魔法少女系の話ばかりしていたのですけど(汗・・)
それでも「ウルトラセブン」は別格だと思います。
ダンもよかったしキリヤマ隊長もかっこよかったですし、やっぱりアンヌ隊員はすてきなお姉さまだと思います~♪
そしてウルトラセブンで登場するウルトラ警備隊の一人にフルハシ隊員がいるのですけど、
それが実は毒蝮三太夫というのもすごい話なのかもしれないですね~
毒蝮三太夫は初代ウルトラマンでもアラシ隊員として出演をされていましたので、2シリーズ連続で隊員として出演を
されていたという事になるのだと思います。
今現在は、TBSラジオの「大沢悠里のゆうゆうワイド」内ではなくて毎週金曜日の「たまむすび」のみの
毒蝮三太夫の「ミュージックプレゼント」というコーナーにとどまっていますが、
そこで登場する毒蝮三太夫は、「このくそババア!」とか「このくたばりぞこない!」とか等の名毒舌ですっかりお馴染みで、
今現在はお年寄りのアイドルと誉れ高いお方なのですけど、ウルトラセブンやウルトラマンでの隊員としての出演を
知る者にとっては「えらい変わりようだけどそれはそれでとても面白い」と感じさせるのは毒蝮三太夫のすてきなお人柄と
年寄り愛なのだと思います。
そしてなによりも毒蝮三太夫は、ウルトラセブンの頃から基本的に風貌・喋り方・声のトーンがあまり変わっていないのは
驚きでもあります。
私が中学・高校で吹奏楽部にいた頃は、嵐という名前の部員がいました。
中学では顧問の先生から、高校では先輩からほぼ例外なく毒蝮というあだ名を付けられていましたけど
それは時代としてはむしろ普通の感覚だったといえるのかもしれないですね。
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ボクも再放送やビデオで見た人間です。
ウルトラシリーズでも屈指の名場面のBGMだと思います。
マグマライザーに爆薬を詰めてゴース星人の基地を爆破。
ラストのアイスラッガー返しは涙が出ます。
シューマンといえばトロイメライがオルゴールの定番とか。
嫁さんのクララは美人だとか。
他にもいっぱいあるんですけど、このくらいで。