最近の吹奏楽コンクールとか演奏会では、ロバート・ジェイガーの曲を聴くことはむしろ珍しい部類に
入ってきたような気さえします。
私が中学から高校時代の1970年代後半から80年代前半は、
ジェイガーは、リードと並んで吹奏楽界の二大巨匠という風格さえあった事を考えると諸行無常の世界ですね。
逆に言うと、今現在大流行している「邦人吹奏楽オリジナル曲」が20~30年後に引き続き演奏されているかと言うと、
その答えは誰にも分からないというのと同じ事だと思います。
歌謡曲でも吹奏楽コンクールでも「流行」というものに「無限」という言葉はあんまり相応しくないのかもしれないですね。
先ほど、二大巨匠なんて言葉を使ってしまいましたけど、1980年代初めの「吹奏楽オリジナル作曲家三羽烏」というと、
リード・ジェイガー・マクベスというのが一つの正解でもありましたので、
昨今の邦人作品・スパークの「宇宙の音楽」、バーンズの交響曲第3番、クロード・スミスの一連の作品群といった
今現在の吹奏楽オリジナル作品の流行の視点から見てみるとまさに「隔世」の感はありますね・・・
そうした中でも、温故知新・・・古きを訪ねて新しきを知るという言葉ではないですけど、
1970年代~80年代に流行し、今ではすっかり「忘却の彼方」の作品の中にも、本当に素晴らしい価値のある作品も
たくさんありますし、たまには、そうしたかつて流行した吹奏楽オリジナル作品でも耳にする事で
今現在の指導とか解釈において「新しい発見」だってもしかしたらあるかもしれないですから、
そうした古い作品も、たまには聴いて貰ったり、演奏して頂けると
私のようなオールド吹奏楽ファンからすると、とっても嬉しいものがあったりもします。
ロバート・ジェイガーもそういう作曲家の一人、つまり、絶対に忘れてはいけない作曲家の一人だと思います!
ジェイガーと言うと、「ヒロイック・サガ」が1991年の全国大会で演奏されて以降、
実に20年近くもこのジェイガーの作品は全国大会で演奏されていませんでしたけど、、
2011年に高知大学が「シンフォニア・ノビリッシマ」を演奏していたのは、一部のファンの皆様にとっては
「久しぶりのビッグニュース」という事になるのかもしれないですよね・・(笑)
このシンフォニア・ノビリッシマが全国大会で演奏されるのは、
1977年の天理中以来でしたから、実に34年振りということになります!!
私自身がジェイガーの曲の中で好きなものを挙げなさいと言われると、
〇吹奏楽のための交響曲(第一番)
〇第二組曲
〇第三組曲
〇ダイヤモンドヴァリエーション
をあげたいのですが、ジェイガーの代表作は誰が何と言っても「シンフォニア・ノビリッシマ」なのでしょうね。
この曲は、ジェイガー夫妻の結婚を祝した曲で、いわば婚約時代から新婚にかけての
初々しいイメージを表現したものなのですが、
曲を聴くとすぐ分る通り、「まさにその通り!!」という非常に初々しくハッピーで気品のある曲だと思います。
昔、富山商業がこの曲を全国大会で演奏した時、タイトルはなぜか
「吹奏楽のための高貴なる楽章」というものでしたが、翌年以降は、「シンフォニア・ノビリッシマ」と表記されるようになります。
ちなみに、ジェイガーの名前も、1970年代初め頃までは「ジャガー」と表記されていたこともあります。
昔の「バンドジャーナル」のバックナンバーを見てみると、
ジェイガーへの単独インタビュー記事も特集として組まれていたこともありました。
その記事の中で、
「日本の吹奏楽コンクールで、イェーガーとかジャガーとかジェイガーとか色々な表記が
されているけど、本当に正しいのはどれ?」みたいな質問をご本人にしているのは、中々楽しいものがあったと思います。
記事では、恩師の教授も「ジャガー」と呼んでいたので、ジェイガー本人も一時期本気で改名を検討されていたというのも
大変興味深いものがあります。
この「シンフォニア・ノビリッシマ」なのですけど、本当に美しくて高貴な曲だと思います。
特に中間部の、「日本の演歌」っぽいノリのあのたっぷりとしたお涙頂戴的な歌い廻しは、例えは悪いのかもしれないですけど、
都はるみの「あんこ椿は恋の花」のこぶしの世界そのものだと思います・・・(笑)
そうなんですよね・・・・
私達日本人って・・・吹奏楽オリジナル作品で言うと、ミッチェルの「海の歌」と「大草原の歌」とか
バーンズの「アパラチアン序曲」とかスパークの「ドラゴンの年」~Ⅱ.間奏曲みたいな
中間部でググッ・・ときそうな感情たっぷりの詠い廻しに弱いのかもしれませんね。
ああいうある意味安直というのかあまりにも分かり易くて親しみやすいメロディーラインの曲自体が
最近の吹奏楽オリジナル作品では意外と聴けそうで聴けないだけに、
この曲の有する意味と価値は高いものがあるのだと思います。
吹奏楽コンクールにおける「シンフォニア・ノビリッシマ」の名演というと、正直思いつきません。
嘉穂高校・阪急・三木中・天理中など確かに色々なチームが取り上げているのですけど、
納得できる演奏にお目にかかれていません。
「これぞ名演!!」という決め手にどれも欠くみたいな印象です。
強いて言うと、1974年の瑞穂青少年吹奏楽団が一つの「お手本」なのかもしれないですけど、
瑞穂の演奏は荒っぽいの限度を通り越して「粗雑」と言えるのかもしれないです。
不思議と気持ちは伝わってくる演奏です。
瑞穂青少年吹奏楽団は、この年の課題曲B「高度な技術への指標」が抜群に良かっただけに、自由曲のノビリッシマは
少しというか相当不満が残ります。
中間部のうっとりとさせられるオーボエのソロの部分をトランペットが代わりに吹き、
しかも突然オクターブを下げている箇所が出てきて相当違和感は感じます。
また、この年の瑞穂のオーボエは、相当ひどい出来でして、あの音程不良ぶりとか、
はちゃめちゃなテクニックなんかは、「あれ・・・もしかしてウケを狙ってわざとやっているのか・・・?」と
思わせるぐらい相当ひどい演奏なのですけど、同時に思わず「くすっ・・」となってしまうほどの
なんかほのぼのとした笑ってしまう感はあったりもします。
結果的に1974年の瑞穂青少年吹奏楽団は全国大会・初の金賞を受賞しているのですけど、あくまで私個人の感想としては、
1974年の演奏よりも前年度の73年のジェイガーの吹奏楽のための交響曲~第四楽章の方がむしろ金賞に
相応しいと感じています。
実瑞穂青少年は、この2年前の1972年の都大会でもこの「シンフォニア・ノビリッシマ」を演奏しています。
そしてこの時の演奏は、74年と全く異なりかなり洗練された演奏を展開し、少なくとも74年のような荒っぽさは感じません。
一体この落差は何なのでしょうか・・?
面白い事に、1972年は、瑞穂は間違いなく都大会に出場し、
課題曲に「シンフォニックファンファーレ」を、自由曲にこの「シンフォニア・ノビリッシマ」を間違いなく
演奏しているのですけど
(トラヤで収録されていたこの年の都大会のカスタムテープは私自身も間違いなく聴いた事があります!)
なぜか都大会の記録や吹奏楽コンクールデータベースから削除されています。
聞いた話では、72年の都大会で一度は東京都代表に選出されたものの、なんらかの事情により全国大会への出場を辞退し、
代りに八田先生率いる公苑会が代表になった耳にした事がありますけど、今となっては真偽は不明です。
ジェイガーと言うと、私的には、吹奏楽のための交響曲とか第三組曲も大好きなのですけど、
どこかうまいチームが「ダイヤモンドヴァリエーション」を演奏してくれないものかなと思っています。
ああいう渋くていかにも「通好みの曲」を今現在のハイテクニックで大人の魅力で音楽的に聴いてみたい気もしますね。
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コメント
瑞穂青少年は永遠に不滅・・
貴重な情報を頂きありがとうございました。
牟田先生指揮での瑞穂のあのキラキラ輝く弾ける雰囲気は現在の吹奏楽コンクールでは多分味合う事の出来ない
無類の楽しさがあるのだと改めて感じます。
72年の「何らかの事情」についての貴重な情報を教えて頂きありがとうございました!
なるほど、そうした事情があったゆえに記録等にも残されていないのですね。
お手柔らかにというか、瑞穂青少年についてはパンチネロ・交響的舞曲第3番「フィエスタ」・ジュビラント・
81年のセレブレーション21や、臼井先生指揮での87~89年のB組特別演奏の名演とか
89年のタンホイザーなど、かなりベタ褒めで書かせて頂いていますよ~(汗・・)
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