マーチというと基本はマーチングとか行進の際のBGMというイメージが大変強いと思うのですけど、
そうした「行進すること」を目的としないコンサートマーチとしての素晴らしい行進曲も全日本吹奏楽コンクール課題曲には
たくさん既に登場していると思います。
今回取り上げさせて頂く曲は、1990年の全日本吹奏楽コンクール課題曲Cのマーチ「カタロニアの栄光」です!
マーチ「カタロニアの栄光」は「歩く行進曲」という感じでは全くなくて、純粋にコンサートマーチとしての課題曲
なのだと思います。
というかこの曲をバックにして歩いたとしたら、たぶんですけど歩いている人はあちこちで転倒したりぶつかったり
足がもつれたりする可能性があるのかもしれないです。
この課題曲は既に28年前の課題曲なのですけど、その素晴らしさは決して今現在でも色褪せる事は無いと思います。
一般的にコンクール課題曲と言うものは、その演奏された年が終わってしまうと余程の事が無いと再演されることは
ないと思うのですけど、この曲はその後東京佼成のCDとしても収録されていますし、
「吹楽」というサントリーホールで企画された音楽イベントでもとある中学校がこの曲を演奏されるなど
その「誉れ高い名曲」振りはいまだに健在なのだと思いますし、名課題曲の一つという評価は既に定着していると思います。
そして私自身もこの課題曲は今でも大変大好きです!
間宮芳生は日本のクラシック音楽界の重鎮の作曲家の先生で、世間一般的には
映画「火垂るの墓」の映画音楽も担当されていた事で名高いと思われます。
クラシック音楽作品としては、管弦楽のための二つのタブロー・チェロ協奏曲が代表作と思いますが、
吹奏楽作品として名高いのは、このマーチ「カタロニアの栄光」と1986年の課題曲C/吹奏楽のための序曲と
1994年の課題曲Ⅰ/ ベリーを摘んだらダンスにしようの三つのコンクール課題曲だと思います。
この三曲はもしかしたら、「私の大好き吹奏楽コンクール課題曲ベスト20」に間違いなく三つともランクインすると思います。
特に大好きなのは、「ベリーを摘んだらダンスにしよう」だと思います!
マーチ「カタロニアの栄光」は、スペインの建築家「ガウディ」とその街、カタロニアをモチーフにしたコンサートマーチです。
中間部においてクラリネットを中心とする甲高い響きによる木管セクションによるいかにもスペインらしい異国情緒たっぷりの
スペイン風のメロディーラインが奏でられていくのが大変印象的です。
曲自体は大変鋭いクラリネットセクションの甲高い響きから開始されていきます。
第1主題は木管とトランペットで奏される複雑なメロディーラインなのですけど、この音楽的処理は指揮者も
大変だったと思います。
とてもじゃないけど「マーチ」と簡単に名乗る事を許されない大変複雑な仕掛けが色々と施されているのが大変
印象的です、
中間部は雰囲気が一転し低音の長い保続音の上に朗々と展開されていくのですけど、
民族的なダンスを伴奏するバグパイプを思わせる異国情緒たっぷりの響きが大変素晴らしいです!
曲は再度第1主題に戻り、その後活気あるコーダに入って力強く閉じられていきます。
4分程度の曲ですけど、その音楽的な深さは素晴らしいものがあると思いますし大変中身が充実している曲だと思います。
カタロニアというと今現在は皆様ご存じの通り、カタルーニャ州の独立宣言もあったりしてかなり揉めている
エリアでもあるのですけど、なんとかヨーロッパらしいエレガントな解決方法を望んでおります。
カタルーニャ州はスペイン北東部の地中海岸にあり、交通の要衝として古代から栄えた背景もありますので、
この地に住む住民の皆様は「自分たちはスペイン人と一味も二味も違う」という誇りがあるのかもしれないです。
カタルーニャは独自の歴史・伝統・習慣・言語を持ち、カタルーニャ人としての民族意識を有してもおりますので、そうした気概が
今回の独立運動を引き寄せたと言えるのかもしれないです。
話を再度マーチ「カタロニアの栄光」に戻しますと、
1990年の課題曲は、私個人の見解ですが、1986年と並んで吹奏楽コンクール史上最高の課題曲の当り年という気がします。
課題曲A / ランドスケイプは、N響アワーでもかつてお馴染みだった、池辺晋一郎氏の素晴らしい名作ですし、
課題曲B / 風の黙示録は名取吾郎氏の「遺言」みたいな作品です。
課題曲D / 行進曲「マリーンシティー」も2分半程度の極めて短い曲ながらも、メロディーラインがとても魅力的なマーチです。
A~D全てが名作揃いと言うのは、吹奏楽コンクールの長い歴史の中でも大変珍しいと思います。
(私が高校二年の時の1982年課題曲が史上最低の外れ年と言われたのとはエライ対照的ですね・・汗・・!)
マーチ「カタロニアの栄光」は、上記で書いた通りカタロニア・・つまりカタルーニャ州はスペインの中の一つ能リアなのですけど、
スペインというよりは、何か中央アジアとかアラビア半島の辺境地みたいな香りが感じらます。
曲自体、イスラムの香りのような異国情緒も漂わせているのですが、
遠いはるか昔、ヨーロッパ出身の兵士が、戦争に駆り出され遠い中央アジアの砂漠が延々と続く辺境の地で、
故郷に早く戻りたいと願いながらも、異郷の地で孤軍奮闘しているような香りを感じてしまいます。
この曲が課題曲として演奏されている頃、私自身はとある第二地方銀行の営業担当として従事していましたが、
6月頃、突然支店長に呼び出され、「何だろう、何かヘマしたかな・・」とビクビクしながら行ってみたら
「君、一週間後に山梨に転勤ね。三日で引継ぎし荷物をまとめてすぐ甲府に行ってね。
君は独身で次男だから、特段困る事もないだろう。大丈夫、2年ぐらいしたらすぐに都内店舗に
戻れるはずだからさぁ」と
いきなり人事異動を内示されてしまいました・・(汗・・)
そして一週間後に炎天下の盆地のくそ暑い甲府に飛ばされたのですが、
私自身は山梨とは縁も縁もない人間なので、
「えー、何で自分がよりによって山梨に飛ばされなくちゃいけないんだよぉー」と当時無茶苦茶人事を恨んだものですけど、
同時に、「これも何かの縁だし、この異郷の地で孤軍奮闘して頑張ってみよう」と思ったものでした。
そうした時、この「カタロニアの栄光」を聴くと、縁も縁もない見知らぬ土地で孤軍奮闘している曲のイメージに
私自身の当時の「山梨という異郷の地で頑張ってみるかぁー!」という気持ちが見事にリンクし、
この曲を耳にする度に「この曲は私のシンボル曲」という感覚もあり、余計にこの課題曲に親しみを感じていたものでした。
この課題曲、演奏する方としては結構難しそうですね。
木管の甲高い響きとか不協和音、変拍子に近い拍子感・・・
特にトランペットとクラリネット奏者の方は大変だったと思います。
この曲ですけど、1990年に来日したハンスバーガー指揮/イーストマンウィンドアンサンブルのコンサートの
アンコールで演奏されていましたが、あまりのテンポの速さに驚いたものです。
このマーチはどちらかというと落ち着いた雰囲気でゆったりと響かせた方がこの曲の本質を伝えやすいと思われるのですけど
指揮者による色々な解釈はあるものなのだと改めて感じた演奏でもありました。
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当時は訳あってA部門ではなく一般のB部門に出場しました。
もし、A部門で出場していたら間違いなくマリーンシティーだったと思います。
ただ入学当時は部員も20名で、うち約10名が1年生。
その1年生のうち4人が素人(笑)
どっちにしてもA部門は無理だったでしょうね。
色々な動画を見てふと気が付いたことが。
カタロニアってソプラノサックス使われてましたよね?
課題曲でソプラノサックスを使うのって珍しい気がします。