矢代秋雄の「交響曲」は、邦人シンフォニーの中でもトップクラスの名曲だと思います。
そして私自身が日本人が作曲したクラシック音楽に分類される交響曲の中で、私自身がとても大好きな曲であり、
同時に私自身の音楽観を構成する上で、松村禎三の交響曲と共に私自身にいっちば~ん!に影響力を与えてくれた交響曲
というのは間違いないと思います。
当ブログでは何度も語っている通り、私自身が吹奏楽とクラシック音楽に強い関心を持つようになった最大のきっかけは
1982年に聴いた全日本吹奏楽コンクール・東北大会・高校の部【A部門】に出場したチームの中で、
秋田県立花輪高校吹奏楽部が演奏したウィリアム・ウォルトンの交響曲第一番変ロ短調~終楽章と、同じく同大会の
秋田県立仁賀保高校吹奏楽部が演奏した矢代秋雄の交響曲~第四楽章に強い衝撃と感銘を受けた事が
全てでもあるのですけど、当時まだ音楽の事を何も知らない真っ白の状態の一人の高校生に与えた影響は
計り知れないものがあったと思いますし、矢代秋雄の交響曲を知った事で、私自身が多少は日本の作曲家が残したきた
素晴らしいクラシック音楽を少しは聴くようになったいっちば~ん!のきっかけと言えるのだと思います。
本日は上の記事でも書いている通り、当ブログの「ブログ開設6周年」という節目記事でもありますので、それに合わせる形で
私自身の音楽観を構成する上で絶対に避けては通れない曲の一つである矢代秋雄の交響曲について
ほんの少しばかり語らさせて頂ければ幸いです。
毎年のように新進気鋭の若手作曲家とかベテランの作曲家の方が新作交響曲を発表されているのですけど
大半は初演で演奏されてその後誰にも演奏されないでいつの間にか忘れ去られるというパターンが大変多い中、
初演から何十年が経過した後でも引き続きこうやって定期的に演奏され続けている矢代秋雄の交響曲は
大変貴重なものがあると思います。
矢代秋雄の交響曲は、吹奏楽にもアレンジされて、今現在も本当に数多くのアマチュアのスクールバンド等が
この曲に挑み、そしてたくさんの素晴らしい名演を残し続けている事は本当に嬉しいものがあります。
素晴らしい名曲というのは、こうやって後世に受け継がれていくものなのですね!
上記で既に触れたとおり、私自身が「クラシック音楽」という大変深い森の中に迷い込むきっかけとなったのが
1982年の全日本吹奏楽コンクールの東北大会の高校の部でありまして、その中でも特に特に
花輪高校が演奏したウィリアム・ウォルトンの交響曲第1番と
仁賀保高校が演奏した矢代秋雄の交響曲と
秋田高校が演奏したプロコフィエフの交響曲第5番が、私がそうした「深い森の中」に迷い込む直接のきっかけを
作ってくれた曲でもありました。
話を矢代秋雄の交響曲に戻します。
この交響曲は、変拍子・不協和音の炸裂など難しい側面がある一方、第一楽章のテーマが循環主題のように、
第三楽章で再現され、第四楽章の終曲部のコラールでも高らかにもう一度再現されるなど分かりやすい面も多々あります。
特に第四楽章のあの金管楽器による清らかなコラールは本当に胸にしみるものがあります。
あのコラールとか循環主題を聴いてしまうと、やはり矢代秋雄はフランス留学時代はメシアンに師事した事も
あるのですけど、作風はフランクに何か近いものがあったりするのかも・・?と感じてしまいますね。
私的には、第二楽章のティンパニの「テンヤ・テンヤ・テテンヤ・テンヤ」という特徴ある
リズムが大好きですし、二楽章のこの特徴あるリズムを前面に出したティンパニとシロフォンとピアノの
掛け合いは特に大好きです!
あの第二楽章のシロフォン奏者は技術的に大変ですけど、とてつもない見せ場&叩き甲斐はあると思います。
「テンヤ、テンヤ、テンテンヤ、テンヤ」(6/8+(2/8+6/8)というリズム形は、作曲当時に朝日新聞で
連載されていた獅子文六の小説「自由学校」の神楽のシーンからヒントを得たとの事です。
第三楽章の冒頭のコールアングレの寂寥・・とした響きが実に味わい深いですし、
途中で執拗に繰り返される打楽器の掛け合い(ティンパニ→シンバル→トムトム→大太鼓→→ウッドブロック)が
大変効果的だと思いますし、この楽章はなんとなくですけど「和風の夜想曲」という感じもあるように感じられます。
第四楽章は全曲の白眉だと思いますし、前半の静けさ、後半のアレグロ、その静と動の対比が実に鮮やかだと思います。
第四楽章の前半のホルンの雄叫びとアレグロに入る前のコンサートチャイムの寂寥感溢れるチャイムの清涼な響きが
特に大好きな箇所です。
矢代秋雄の交響曲は、私が所有してるCDは、
①渡部暁雄指揮の日本フィル
②佐藤功太郎指揮の都響
③湯浅卓雄指揮のナクソス盤
という3枚ですけど、いずれの盤もそれぞれいい所があってどれも素晴らしいのですけど
やはり渡辺暁雄の日本フィルの演奏が圧倒的に素晴らしいと思います。
しかもこの録音、ライヴ演奏なんですよね!ライヴであそこまで精密な作りが出来てしまうとは信じられないほど驚異的ですし
凄まじいほど完成度と集中度が高い名演だと思います。
ちなみに、広上淳一指揮の日本フィルで、この交響曲を聴いたことがありますけど、緊張感溢れる素晴らしい演奏でした。
矢代秋雄自身は、かなり若い時期にお亡くなりになっていたりもします。
矢代秋雄の作品は、交響曲とピアノ協奏曲と交響的作品しか聴いたことがないのですが、それは仕方がない事なのです。
というのも、矢代秋雄は恐ろしいほどの寡作家で、生涯の作品リストも極めて少ないとのことで、
管弦楽曲はせいぜい10曲程度とのことです。
だけど、矢代秋雄はこの「交響曲」一曲だけでも、十分すぎるものさえあると思います。
この交響曲とピアノ協奏曲の二曲でもって後世に永遠に受け継がれていくべき素晴らしい名曲を残されたと思います。
改めてですけど、第二楽章のあの「「テンヤ・テンヤ・テテンヤ・テンヤ」という特徴あるリズムは本当に面白いですよね!
特にシロフォンが絡む場面はとっても聴き応えはあるのですけど、あの場面は二回ほど同じような場面が出てくるのですけど
一回目は、シロフォン+ティンパニ+ピアノの構成であるのに対して
二回目になるとトランペットがこれに更に絡んで来て、更に面白い雰囲気を醸し出していると感じられます。
第四楽章も圧巻ですし、終結部の清純な金管コラールがとっても印象的ですけど、
第三楽章の静粛さも実はとても大好きだったりもします。
私が10代~20代の頃ってこの第三楽章は「ちょっと退屈なのかも・・?」と感じなくも無かったのですけど、
今現在はこの静粛な第三楽章もとっても大好きです。
冒頭のコールアングレの長大なソロも素晴らしいですし、ラストの消え去るようなフルートソロも素晴らしいのですけど
中間部の打楽器の執拗な掛け合いが何度も繰り返されて、この掛け合いに乗っかる形での
弦楽器とホルンのクライマックスでの響きと雄叫びは何度聴いても胸に響くものがあると思います。
あの打楽器の掛け合いなのですけど、レコードを聴いただけでは当時よく分からなかったのですけど、
1986年にこの交響曲を東京文化会館にて初めて全曲演奏を生で聴いて
あの打楽器の掛け合いは、ティンパニ→シンバル→トムトム→大太鼓→ウッドブロックを担当する5人の奏者が
あの執拗な繰り返しを演出しているという事が判明したものでした。
やっぱりこういう事はライヴ感覚で無いと分からないかもしれないですね。
あの打楽器の執拗な繰り返しの掛け合いは、最初は弱く弱く開始され、段々と音量が大きくなり
クライマックスで最高潮の音量に達していきます。
そして再度ゆっくりと音量が弱められていき、最後は消えるようにその掛け合いが終結します。
第三楽章の最後の方で、第一楽章の「主題」が再登場し、その主題と共に奏でられるチャイムの弱音の響きが
とても印象的です。
それにしてもあの打楽器の掛け合いの部分は、音の強弱のコントロールとん雰囲気のキープとか
奏者にとってはとてつもなく高いモチベーションとテンションが求められそうですね。
最後に、そのティンパニ→シンバル→トムトム→大太鼓→ウッドブロックの掛け合いの打楽器を
ご紹介させて頂き、本記事の締めとさせて頂きたいと思います。

こちらはティンパニです。
昔は手締め式でしたけど、最近は足元のペダルで音程を調整するペダル式が圧倒的な主流です。
普通は4台で一組です。
通常の曲は、一人の奏者が一組のティンパニを担当しますけど
例えば、世俗カンタータ「カルミナ・プラーナ」のように曲の途中で別の奏者がその一組のティンパニの演奏に参加し
二人の奏者が一組のティンパニを担当する場合もありますし、
ウォルトンの1番とかホルストの組曲「惑星」とかマーラーの交響曲第1・3・6・9番などのように二人の奏者が
二組のティンパニを叩く場合もあります。

こちらはシンバルです。
通常は「合わせシンバル」が主流ですけど、中には「サスペンダーシンバル」と言って
吊し上げて、ロール奏法でクレッシェンドしていく種類もあります。

こちらはトムトムです。
現在ではダンス音楽やジャズでも使用されており、ヘッドが両面または片面のみに張られている2種類があります。
サイズは大小さまざまで、音程を変えて複数個を使用する事が多いです。

こちらは大太鼓です。
ズドン!!という打点を叩きこむ感じがとても重量感がありますね!

これはウッドブロックです。
木魚が楽器として変化したものが始まりとも言われていますので、
チャンスの「呪文と踊り」で取り上げた「テンプル・ブロック」に極めて近い楽器なのだと思います。


それにしても日本の吹奏楽コンクールのレヴェルって驚異的に高いと思いますし、確かにコンクールは賛否両論あるのは
分かってはいるのですけど、
日本の管弦楽団において管楽器や打楽器セクションの奏者の皆様の中にも、昔と違って最近では随分と
吹奏楽経験者も増えてきているそうですので、
吹奏楽コンクールが日本の管弦楽団や指揮者の皆様にもたらした影響というのは、もしかしたら相当強いと言えるのかも
しれないですね。
そして私自身は吹奏楽コンクールでのJKの皆様が叩かれ奏でられる打楽器がとっても大好きです! (笑)
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秋田南校の演奏に触発され、東京文化会館の音楽資料室で渡辺暁雄/日本フィルの初回の録音レコードも聴きました。フルスコアも借りて聴いたのですが、第2楽章の目まぐるしい展開に楽譜が追えず四苦八苦。それでも聴き終えて京成電車の上野駅までの徒歩、頭の中が真っ白で呆然としていました。その後お小遣いでフルスコアも購入してしまいましたが・・・
この初回の録音、1980年に日本コロムビアからの現代邦人作品の再販シリーズには出されていませんでしたので、少々残念に思った記憶があり、その代わり、三善晃、柴田南雄、武満徹の作品の入ったレコード、矢代秋雄の2つの協奏曲や器楽曲等もよく聴きました。それ故に浪人に突入(笑)となりましたが・・・他に間宮芳生のヴァイオリン協奏曲も近所の図書館からレコード借りてよく聴いていたなあ・・・
戦後からオイルショックまでの4半世紀、邦人の名作が多く出現されたように思えます。アカデミックなものから土俗的、通俗的なものまで様々な作品がありますので、一度系統的に聴き直してみたいものです。当然、今の吹奏楽との関連性も多々あると思えます。そういえば矢代秋雄の吹奏楽作品、まだ聴いていないので、トライしないといけませんね。