A.リードの「エル・カミーノ・レアル」は、全国大会ではもう28年以上も演奏されてはいないのですけど、
県大会・支部大会では忘れることなく継続して演奏され続けている事はとっても嬉しいものがありますし、
改めてではありますけど「こうした素晴らしい吹奏楽オリジナル名曲というのは、やっぱりその価値をわかっている方には
ちゃんとわかって頂けて、後世にこうやって受け継がれているもんだなぁ」と感じたりもします。
時代は変わっても、ジェイガー・リード・マクベス・カーター・コーディルとか
カーナウとかオリヴァドーティなどのようなすてきな吹奏楽オリジナル作品を残された皆様のお名前とその作品は、
いつまでも後世に受け継がれて欲しいものです。
リードの「エル・カミーノ・レアル」は、感覚的には吹奏楽のための第二組曲「ラティーノ・メキシカーナ」の姉妹作みたいな
ラテン系ノリノリの、まさに「ラテンの血が騒ぐ!」みたいな曲だと思います。
特に冒頭のガツンというインパクトある出だしは、それだけでノックアウトされそうですね~!
この曲は、典型的なA-B-Aの三部構成の曲でして、
大変な勢いと迫力がある前半のAの部分と、スローでしっとりとした抒情的な歌の部分で構成されるBと
ラストの追込み!という感じのAの三つの部分で構成されていますけど、
とにかくあっという間の9分間という感じで、聴いていて飽きるという事だけは絶対にないと自信を持って
お勧めしたい曲でもあります。
高校時代に リードの第二組曲を定期演奏会で演奏した際に、第二組曲が大好きで大好きでたまらなかった私としては、
この「エル・カミーノ・レアル」のあのノリの良さは、その第二組曲の延長戦みたいな感じもあり、
最初にこの曲を聴いた時から既にこの曲の虜になっていたような感じすらあります。
カスタネット・タンバリンといったリズム系打楽器がいい働きをする前半の躍動感も素晴らしいけど、
「スペインの民族舞曲のホタのファンタンゴをイメージしたようなしっとりと歌い上げる中間部にもうっとりさせられます。
そしてラストはクライマックスに向けて一気に追い込みをかけ華麗に曲は閉じられます。
演奏時間も8分30秒~9分程度ですので、課題曲が短めのマーチを選べば、余計なカットをしなくても
全曲ノーカットでいけそうな気もします。
吹奏楽コンクール演奏の場合、Aの部分が終了し、Bの部分に入る直前のオーボエソロをカットしてしまうパターンが
多かったようにも感じられます。
あのオーボエの完全なソロ部分は、オーボエ奏者にとっては腕の見せ所でもありますし、
あの少しだるそうな雰囲気とても美しいだけに、あの部分のカットを聴くたびに少しばかりガッカリさせられるものでも
あったりします。
この曲が日本中で演奏されたのは1986年~1990年あたりだったと思いますが、
1986年の全国大会でもNTT中国・富山ウインドが自由曲として演奏していました。
1990年の関東大会で野庭高校が自由曲として演奏し、私もこの演奏は聴いていました。
あくまで率直に感想を書くと、春の猟犬・アルメパートⅠ・ハムレット・オセロの時のような
新鮮さ・音楽としての感動・躍動感はほぼ皆無で、おとなしめ系の何か去勢されたような演奏で、
当時としては「全然野庭らしくないじゃん・・」とガッカリした記憶があります。
結果もダメ金でした(当然の結果だと思いますし、私の評価としては銀と銅の中間だとすら感じたものです)
数年後に「ブラバン・キッズ・ラプソディー」という野庭高校吹奏楽部と中澤先生に焦点を当てた本を読んでみると、
この関東大会の前日に色々と事件・ドラマはあったのですね~・・
やはり高校生くらいだと、あれくらいの事件でも心理的に影響はあったと推察されます。
ちなみに事件といっても、
トランペット奏者が自由曲で使用する掛け持ち用のコルネットを学校に置き忘れ、
部長もその奏者も中澤先生に中々報告できずにいて、
練習中にそれが発覚し、中澤先生が大激怒したというものですが、
当時は既に中澤先生は大御所だったから、生徒も中々悪い報告はしにくいという
雰囲気はあったのかもしれませんなよね。
あ、でもそういう事って会社の中でも結構あったりしますよね・・・ (汗)
残念ながら、吹奏楽コンクールでは中々「エル・カミーノ・レアル」の「これぞ名演!!」という決定的名演には
いまだにお目にかかっていません。
強いて言うと、都大会本選の「B組特別演奏」という形ではあるのですが、1986年の共立第二女子と
87年の富士見が丘女子の演奏は、とにかくとてつもない躍動感とスピード感と切れに溢れていて素晴らしかったです!
両チームとも前述のオーボエソロもカットなしで演奏していたのもポイント高いです!
「エル・カミーノ・レアル」の生演奏でいっちば~ん!印象に残っているのは、1989年の川口市民会館で開催された
市立川口高校の演奏です!
当時はまだ川口駅西口の「リリア」という立派なホールはなく、
市立川口みたいな名門チームでも、市役所わきの薄汚れたホールで演奏していた事は意外な感じもありました。
演奏の冒頭もあの「ガツン!」という雰囲気が強烈に決まっていましたし演奏もノリノリで、
この年、1989年に全国大会で聴いた「仮面幻想」のどことなく不安定で、よそいきの演奏をしていた光景とは
明らかに異なるものであり、 普段の市立川口らしいのびのび且つ大胆な雰囲気が出ていたと思います。
あの演奏会で使用されていたグランドハープですけど、中間部のしっとりとした雰囲気づくりにも
大変大きく貢献していたようにも感じられます。
地元のホームグランドで実にのびのびとした演奏をしていた!という感じがあったと思います。
「エル・カミーノ・レアル」は吹奏楽オリジナル作品なのですけど、実は管弦楽にもアレンジされ、実際に日本で世界初演が
果たされています。
指揮者のロバート・ライカーが管弦楽に編曲し、2005年に開催されたキッコロ&モリゾーでお馴染みの
「愛・地球博」のイベントの一環としてお披露目されています。
2005年7月20日に愛知万博エキスポホールにて、
ライカーが音楽監督を務めるインド国立フィルハーモニックにより初演されています。
更に余計な事を書くと、作編曲家の中原達彦による管弦楽編曲版は、2009年12月18日に
ザ・シンフォニーホールにおいて下野竜也指揮の大阪フィルハーモニー交響楽団によって演奏されています。
中原氏は、アーノルドの交響曲第2番や歌劇「ヘンゼルとグレーテル」の吹奏楽アレンジがとても印象的です。
管弦楽版の「エル・カミーノ・レアル」は聴いた事がないですので興味津々です!
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ちなみにこちらの県大会では、
リードの曲は一つも演奏されてませんでした。
自分の学生時代は定番中の定番でしたが、
最近演奏されないということは
過去の名演で
すでに完成された感(それ以上の演奏はできない)があるのかもしれないのでしょうね。