A.リード / アルメニアンダンスパートⅡ~Ⅲ.ロリからの歌 → しっとりとした歌ありスピード感溢れる展開あり悲壮感漂う冒頭と魅力たっぷりのこの名曲も最近ではほとんど演奏されていないのが勿体無いです・・ この曲のいっちば~ん!の名演は1980年の玉川学園高等部に尽きると思います!

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私が高校生あたりの頃には既にリードの「アルメニアンダンスパートⅠとパートⅡは定着化された作品であり、
演奏頻度の極めて高い曲であり大変人気の高い作品でした。
既にあの当時よりリードのアルメニアンダンスは「吹奏楽オリジナル作品の中でも特筆すべき名曲」として認知されていたと
思いますし、私も既にその当時から「リードのアルメニアンダンスは別格的存在」という認識は有していたと思います。
当時よく吹奏楽仲間内の噂では、
「リードは、実は、アルメニアンダンスパートⅢの構想を練っていて現在作曲中・であり、1980年代中盤には
発表されるのではないか?」という話がよく出回っていましたけど、結局、パートⅢとして発表される事はありませんでした。
結果として「アルメニアンダンス」と同様にアルメニア地方の「讃美歌」をモチーフにした作品が
「エルサレム讃歌!」というこれまたリードを代表する超大作となって歴史に残されることになりましたので、
あながちあの噂は単なるガセネタではなかったと言えるのかもしれないです。

アルフレッド・リードは生粋なアメリカ人ですし、特にアルメニアやエルサレムとの接点は無いはずなのに、
どうしてアルメニアンダンスとかエルサレム讃歌みたいなアルメニアに色濃厚な曲を残したのだろう?と
思ったことがあるのですけど、
アルメニアの音楽学者であるゴミタス・ヴァルタベッドという方が集めたアルメニアの民謡・聖歌を
「このまま歴史に埋没してしまうのは勿体無い・・」と感じた
イリノイ大学でゴミタスの研究をしているハリー・ビージャンという学者・バンド指導者が、
ゴミタスの集めた聖歌や民謡を使った作品をリードに委嘱したことがこれらの名曲が生まれたきっかけになっています。
そしてリードは、民謡を「アルメニアンダンス」で巧みに用い
7世紀頃のアルメニアのローマ教皇管区教会典礼聖歌集からキリストの復活を称えた讃美歌を
「エルサレム讃歌」で大変効果的に用いています。

リードのアルメニアンダンスはパートⅠとパートⅡと二つに分けて出版されています。
私自身リードの「アルメニアンダンス」を初めて知ったのは、高校入学後のその年の定期演奏会で
アルメニアンダンスパートⅠを演奏した時なのですけど、実はその時点ではパートⅠとパートⅡの間には特に関連性が
無いものなのかなと勘違いをしていたものですけど(汗・・)
実はパートⅠとパートⅡは姉妹作と言うよりも組曲または一つの交響曲の中の楽章同士の関連性があったりもします。
5つのアルメニア民謡が続けて演奏される単一楽章のアルメニアンダンスパートⅠと、
同じくアルメニア民謡に基づく3つの楽章からなるアルメニアンダンスパートⅡの二つを合わせて一つの組曲または交響曲を
構成すると考えた方が宜しいのだと思います。
大変奇妙な事に、その理由と背景はよく分からないのですけど、パートⅠとパートⅡの出版社は全然別の会社であり、
そうした事がパートⅠとパートⅡは全然関連性がない曲であるとかつての私が誤解をしたように勘違いをされている方も
決して多くは無いという理由になっているのかもしれないです。
ちなみにですけど、パートⅠとパートⅡで使用される楽器編成も微妙に異なっていて、パートⅡの方が打楽器は、
パートⅠでは使用されなかったドラ・コンサートチャイム・トライアングルが追加されたり、ハープも加わるなど
そうした違いを味わってみるのもこの曲の楽しみ方の一つなのかもしれないです。

アルメニアンダンスパートⅠは、あまりにも普遍的な名曲すぎるもので、このブログでは実は意外とあまり語っては
きていないのですけど(汗)、私自身かつて演奏した事があるという事もありますし、あの異国情緒が次から次へと
魅力的に展開されていき歌あり踊りあり涙あり笑いありというこの素晴らしき名曲については、いずれこのブログでも改めて
じっくり語る場を設けてみたいと思います。
アルメニアンダンスパートⅠの誰もが認める歴史的名演は、1986年の淀川工業と1987年の創価学会関西を
推される方は大変多いとは思うのですけど、私自身がいっちば~ん!大好きな演奏は、そう・・! 言うまでもなく
1983年の野庭高校のあの個性的で歌心たっぷりの演奏に尽きると思います!
(隠れた名演という事では、とにかく音質がクリアで清楚なサウンドで響きがとてつもなく美しい1980年の間々田中も
推したいと思います)

アルメニアンダンスパートⅡの方はパートⅠに比べると若干演奏頻度が落ちると思うのですけど、
それは第一楽章と第二楽章がゆったりとした部分から構成されていてこの部分を吹奏楽コンクールで演奏されることは
ほぼ皆無で、第三楽章のロリからの歌のみが演奏されているという事情も多少はあるのかもしれないです。
だけどロリからの歌は、冒頭の悲壮な激しさ・たっぷりとした歌・前半のスピード感あふれる展開、そしてラストに向かっての
疾走と追込みと聴かせどころたっぷりの曲でもありますので、パートⅡに関しては「ロリからの歌」という
単一楽章みたいな認識にどうしてもなってしまいそうですね・・
というか、私自身、パートⅡの第一楽章と第二楽章は正直あんまりピンとこないというか印象がうすいのかも・・?と
ついつい感じてしまいます。

パートⅡは下記の三曲から構成されています。

Ⅰ.農民たちの嘆き

Ⅱ.結婚の踊り

Ⅲ.ロリからの歌

Ⅰは、アルメニア民謡「農民の訴え」を基にした曲でありコールアングレのソロが大変印象的です。
Ⅱは、アルメニアの田舎の素朴な結婚式の舞曲で、8分の6拍子の楽しげな曲となっています。

アルメニアンダンスパートⅡは前述の通り、吹奏楽コンクールで演奏される場合は、ほぼ全て第三楽章のロリからの歌が
演奏されます。

アルメニアンダンスパートⅡ~Ⅲ.ロリからの歌で印象に残る演奏と言うと、
1979年の浜松工業のカットはかなり大胆すぎるけど、端正さと理性が曲の隅々まで遺憾なく発揮され、尚且つ
男子校らしい豪快さとパワフルさが感じられる大変知的な演奏と
同じく1979年の「下品でどこが悪いねん!」と吹っ切れたように開き直った豪快でパワフルな尼崎西高校や
1981年の中学生とは到底思えない迫力と切れ味が見事な弘前第三中学校などが挙げられますけど、
やはりこの曲の過去から現在におけるいっちば~ん!の歴史的最大の名演はどこかというと、言うまでもなく
1980年の玉川学園高等部に尽きると思います。

1980年の玉川学園高等部の演奏はとてつもない素晴らしい名演だと思います。人によっては
「あれはいくらなんでも乱暴極まりない演奏・・」
「とても4年前にドビュッシー/三つの夜想曲~Ⅱ.祭りのあの繊細でひそやかな演奏をしたチームとは同じとは思えない」
「テンポが速すぎ・・!! とにかく煽って煽って煽りまくった演奏ではないのか?」
「結果的に金賞なのだけど、あれは勢いだけでかっさらっていったもの」
などのように否定的見解もあるかとは思うのですけど、
私の意見としてはとにかくスピード感と爽快感と切れ味の鋭さは素晴らしいとしか言いようがないと思います。
テンポか速すぎるというけど、よく聴いてみると中間部もきちんとしっとりと歌い上げているし
冒頭の悲壮な重厚感の表現も素晴らしい!と感じられます。
曲全体としても、きちんと静と動の対比、強弱のバランスが見事に取られているから
そうした否定的見解は私的には「そんなの全然的外れじゃん!」という感じですね。 

一般的にはこの曲を演奏する場合、ほとんどのチームはどこかの部分をカットする事が多いと思います。
上記で書いた通り、浜松工業はその洗練さとサウンドの輝きは大変素晴らしいものがあるのですけど、
カットがかなり強引で、せっかくあんなに中間部をしっとりと歌いこんでいるのに、ホルンの二重奏が終わったと思ったら、
いきなり曲の終結部に飛んでしまい、印象としては尻切れトンボみたいな感じにもなっているのは否定できないのかも
しれないです。
弘前第三中も中間部の冒頭のフルートがしっとりと歌う場面はカットしていたと思います。
玉川学園高等部はなんとこの曲をノーカットで臨んでいます!!
これは実はすごい冒険と賭けだったようにも思えます。
80年の玉川学園の課題曲は「南の島から」とマーチのような短めの曲を選んでいないし、
課題曲と自由曲の間をつめたとしても7分半程度に収めないと「タイムオーバー失格」になってしまう危険性もありましたし、
この賭けはなかなかの冒険だったと思います。
ましてやこの年は玉川学園にとっては、5年連続金賞という栄誉がかかっていましたから、本来はあえて冒険をしないで
他校のように部分的にカットしても仕方はやむを得ない事なのだと思います。
この曲の吹奏楽コンクールのノーカット版の演奏としては、
1990年の金山学園という例もありましたが、課題曲が「マリーンシティ」という2分半程度の曲だから実現できたと思われます。
だけど玉川学園は一切カットをしないで、一気に駆け抜けていきました!
あの英断に対しては・・・私は心の底から敬意を表したいと思います。
冒頭が大変重厚で重苦しい雰囲気なのですけど、これがなんかいかにも「農民の嘆き」みたいな雰囲気を
十分に伝えていて、とても素晴らしかったです。
アレグロに入ると、とにかく速い、速い、速い・・・!! だけど速いのだけど音楽自体は崩壊していないし、
適度な緊張感もキープしていますし、
1979年の尼崎西のような「煽りまくった猪が突進するような演奏」ではない所がすごいと思います。
この年の玉川学園のサウンドの透明さ・音の洗練さはまさに「一つの極限」に達していて
あんなにテンポを速めに設定し飛ばしに飛ばしていても少しも「煩い!!」と感じる事はなく
サウンドがとても美しく響いているものですから、逆に「洗練された印象」すら与えてしまいます。
そうそう、自由曲全体を通してシロフォーンの硬質な響きが実にいい味を出していると思いますし、
シロフォーンの硬質な甲高い響きが曲全体の中で大変見事なアクセント効果を出していたと思います。
そして中間部のしっとりとした歌いかたが大変素晴らしく感涙ものです!
あのしっとりとした「お涙ちょうだい・・」というしっとりとした抒情的な演奏は、前半の壮絶なスピード感との対比という意味で
大変斬新で鮮やかなものがあったと思います。
中間部のクラリネットの美しい音色は、とてもこの世のものとは思えないはかなさもありましたし、同時に
色気も感じられ本当に「美的限界」を超えた演奏だと思います。
中間部の最後を締めくくるホルンの二重奏も大変素晴らしかったです。

だけど、玉川学園高等部がすごいのが、ここから先があまりにも超絶的演奏のオンパレードという点でありまして、
「演奏者たちは本当に人間なのか・・!?」というとてつもない世界を普門館の聴衆たちに聴かせていました。
ラストに向けての追い込みがとにかくお見事だったと思います!
こういうエネルギッシュな演奏は往々にして後半息切れというパターンが多い中、パワー不足とか息切れという現象は全く無く、
中間部でしっかりと金管セクションが休んでエネルギーを充当し、再度後半の追い込みで
エネルギーを大爆発させてくれていたのだと思います。
後半のホルンの雄叫びもほぼ完璧に決まっていましたのは圧巻です!
トロンボーンのあの強奏状態での 「はもりの美しさ」は、本当に「伝説の名演」に相応しいと思います。

最後まで一直線で何の迷いもためらいもなくひたむきに駆け抜けてくれた素晴らしい自由曲だったと思いますし、
5年連続ゴールド金賞のラストを飾るのに相応しい演奏を聴かせてくれたと思います。

それにしても最近では、アルメニアンダンスはあまり演奏されないのが残念すぎますね。
パートⅠもパートⅡも支部大会では少ないながらも演奏実績はあるものの、全国大会ではパートⅠもパートⅡもどちらも
実は2002年以降は全く演奏されていないです。

この曲の現在の奏者の感性から捉えた素晴らしい演奏も是非是非聴いてみたい気もしますし
リードの「アルメニアンダンス」という普遍的名曲を演奏する事で、温故知新ではないけど、何かしらの新しい発見があると
とても素晴らしいと思います。
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