S.バーバー / バーバーというと「弦楽のためのアダージョ」ばかりがやたらと有名ですけど、ヴァイオリン協奏曲などすばらしい名曲もたくさんあります!

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本記事の一つ後の記事は東方カテゴリなのですけど、東方の純狐の何かに憑りつかれたような復讐劇のバックボーンが
ギリシア悲劇「王女メディア」にどことなく共通するものがあるのかもと記させて頂きましたが、
その王女メディアのストーリーを素材にして20世紀のアメリカの作曲家、サミニュエル・バーバーが作り上げた音楽が
バレエ音楽「メディア」であり、このバレエ音楽を更に単一楽章的にギュギュ~っと濃縮した音楽が
バーバー作曲、「メディアの瞑想と復讐の踊り」でもあります。

一般的には、バーバーと言うと何と言っても「弦楽のためのアダージョ」で超有名な方ですよね。
サミュニエル・バーバーという作曲家の名前は御存じなくても、おそらく一度ぐらいは「弦楽のためのアダージョ」の
あの厳格な音楽を耳にされているような気もします。
「弦楽のためのアダージョ」は20世紀内で生まれた不滅の名曲の一つと思いますし、
終始瞑想的な内省的なゆったりとした弦楽曲です。
この曲が有名になったのは、1988年公開のアメリカ映画「プラトーン」でしょうね。
この映画は私も見ましたけど、ベトナム戦争を背景に、主人公が苦悩するシーンで必ずこの曲がバックに流れていましたね。
上官同士のいざこざの果てに、一人の上官がもう一人を罠にかけ、敵部隊に集中砲火というか銃の乱射を浴びるシーンにても
この時のBGMはやはり「弦楽のためのアダージヨ」でした。
このシーンは、この映画の宣伝のテレビCМでも使用されていましたので、ご記憶ある方もいるのではないでしょうか?

「弦楽のためのアダージョ」も素晴らしい名曲なのですけど、私にとってバーバーと言うとこの後の記事でも触れいる通り
「メディアの瞑想と復讐の踊り」を断然推したいです。
バレエ音楽「メディア」として作曲された作品を作曲者自身によって組曲版として再構成したものを更に組曲版とは別の形で
バレエのエッセンスを交響詩みたいな形で再編成したのが「メディアの瞑想と復讐の踊り」だと言えると思います。
この曲は、一言で言うと、内面的心理ドラマの世界です。
本来は優しい女性であったはずのメディアがなぜここまでやらなければいけなかったのかその心の葛藤を描いた
心理的交響詩みたいなものだと思います。
そしてこの曲を聴くと東方の純狐の内面もなんとなくわかるような気もするように感じられます。
前半は、静かな内面の葛藤の世界で後半は、何かが弾けて「狂」の世界に突進していくメディアの狂気の世界を
見事に表現していると思います。
全体的に14分間程度に渡って最初から最後まで緊張の糸がピーンと張りつめられていると思いますし、この曲を聴くと
「弦楽のためのアダージョを作曲している人らしい緊張感と内面的葛藤に溢れた曲」と感じずにはいられないです。

冒頭からして既に緊張感たっぷりで、大変静かな開始なのですが、シロフォーンの不気味な表現が既に「狂気」を
醸し出しています。
中盤から後半は狂気の音楽が全開で、復讐に燃えたメディアの狂気が炸裂し迫力満点のスピード感あふれる音楽が
展開されていきます。
演奏時間は14分前後ですが、非常に音楽的中身が濃い曲なので、「長い」と感じ事は絶対にないと思います。

バーバーは、どららかというと内省的的な曲とか美しい抒情的な曲を得意にしたようにも思えますが、抒情的というと
その代表的な曲はヴァイオリン協奏曲なのだと思います。
この協奏曲はとても20世紀に作曲されたとは全く思えないロマンチックと美しさに溢れていて、
悪く言うと完全に時代遅れなのですけど、20世紀と言う
現代音楽という訳のわからん無調音楽が幅をきかせていた時代だからこそ、こうした純粋に美しい曲は、
かえって20世紀には光り輝くのかもしれません。
そうした事と同様な事は、協奏曲で言うと

〇ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番

〇コルンゴルド/ヴァイオリン協奏曲

にも言えるのかもしれないです。

バーバーの「ヴァイオリン協奏曲」は、第一楽章の出だしを聴くだけでも価値があると思います。
冒頭から、ため息ものの美しい音楽が静かに流れていきます。
第一と第二楽章は非常に静かで内省的な音楽なのですけど、この曲が更にユニークなのは第三楽章にありまして、
第三楽章は3分程度であっという間に終わってしまうのですけど、
第一・第二楽章とは全く対照的に、終始せわしく落ち着きなくあっという間に駆け抜けていきます。
何となくリムスキー・コルサコフの「熊蜂の飛行」みたいにハチがブンブン飛び交うような雰囲気の音楽です。
第一~第二楽章と第三楽章が全く正反対ですし、そのギャップがこの協奏曲を聴く一つの醍醐味なのかもしれませんよね。

そしてヴァイオリン協奏曲に近い性格の音楽として「ノックスヴィル~1915年の夏」も挙げられると思います。
この曲は、派手な部分はほぼ皆無の美しい歌曲集です。
終始ゆったりとした音楽が展開され、ソプラノがゆっくりと管弦楽をバックに抒情的に淡々と歌い上げる音楽です。
全体でも20分程度の作品です。
元々は、ジェイムズ=エイシーという方の「ある家族の死」という長い散文詩にバーバーが曲を付けたというものですけど、
一言で言うと「ノスタルジー」ですよね。
遠い昔に家族で過ごした時間を、大人になって「ああ、あの時の自分は実は幸せだったのだな・・・」と振り返るような
感覚の音楽だと思います。
聴けば分かるのですが、この曲に葛藤もドラマも派手に盛り上がる部分も演出も派手な効果も何もありません。
過剰な期待をして聴くと、あまりにも何もない淡々とした展開に落胆すると思いますが、
この「淡々とした何も無い感覚」が実にいいと思います。

バーバーのヴァイオリン協奏曲とノックスヴィル~1915年の夏はとにかくとろけるような音楽で
この曲をBGMとして布団の中に入ってしまうと、多分ですけど数分後には夢の世界へといざなってくれそうな気もしますし、
「夜、眠れなくて困っている・・」という皆様には、こけほど睡眠導入としての音楽として向いている曲は無いようにも
感じられますね。
「メディアの瞑想と復讐の踊り」があまりにも緊張感をもたらしてくれているのとはとてつもないギャップがあると
言えるのだと思いますね。
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