ジェイムス・カーナウ / 交響的三章 → ほぼ忘れられている吹奏楽オリジナル作品ですけど、楽しさ・歌・華やかさに溢れた知る人ぞ名曲だと思います!

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流行の流行り廃りが歌謡曲・J-POP以上に激しいとも囁かれている日本の吹奏楽コンクールの自由曲の選曲事情とも
関わりが強いのですけど、最近の若い奏者の皆様にとってはジェイムス・カーナウというアメリカの作曲家自体
「誰、それ・・?」という感じなのかもしれないですね。
私が現役奏者だった頃は、フェニックス序曲・パルティータ・ダブリンスケッチ等でもある程度の知名度はあったと
思いますし、今回取り上げさせて頂くカーナウの代表曲でもある「交響的三章」のちょっとしたミニブレイク(?)によって
1980年代においては名前ぐらいは聞いたことがある作曲家という感じだったのかもしれないです。

最近はJ.カーナウの曲は支部大会でも県大会でもあまり見かけない感じでもあるのですけど、
そうした中でも21世紀に入っても時折ですけど中学の小編成部門を中心に、セレブレーション・動物園の一日・美術館の一日
といった作品が演奏され続けているのは大変嬉しいものもあったりします。
カーナウ自身、特に作風に目立つ個性がある訳でもないのですが、親しみやすい旋律・演奏効果のある曲の構成という点で
大変秀でているものが間違いなくあり、演奏しても聴くだけでもとても楽しい音楽を作られている方という
イメージが私の中ではあったりもします。

カーナウはまだご生存中の御方で、音楽活動以外にも楽譜出版の経営もされている御方というのはどこかで
聞いたような感じもあります、
初級向けから上級向けまで、幅広く作曲している印象があり、上級向きを代表する大作は「よろこびの翼」で、
ジュニア向けというのは、動物園の一日・日の出に向かって・サンドキャッスルズあたりなのかもしれないです。
カーナウ自身がユーフォニアム経験者と言う事もあり、ユーフォニアムと吹奏楽のための協奏的風な作品もあるとの事です。

カーナウの曲が全国で演奏されたのは、 81年のNECと83年の松山市民が取り上げた「交響的三章」と
86年のNECの「オーストラリア民謡変奏組曲」の三度に留まっていますけど、
天理高校が本邦初演を果たしたカーナウの大作でもある「よろこびの翼」は全国大会でも演奏された事が一度も無いというのは
ちょっと寂しい感じもあったりします・・(泣)

ジェームス・カーナウの吹奏楽オリジナル作品というとどんな曲が思い浮かぶのかと言うと、

歓喜~我らが神は固き砦による幻想曲
よろこびの翼
オーストラリア民謡変奏組曲
パルティータ
ダブリンスケッチ
伝説と太陽の踊り
フェニックス序曲

などが挙げられるとは思いますけど、私の中でカーナウの作品の中でいっちば~ん!と言うと誰が何と言っても
「交響的三章」です!
高校の頃に、三善晃の「交響三章」とこのカーナウの曲をしばし混同し周囲の失笑をかっていたのも懐かしい思い出です。(汗)
(それ以前に作風が全然違いますけどね・・・)

カーナウの「交響的三章」はかなり鳴る曲だと思いますし、金管楽器が主体となってメロディーを展開する曲だと思います。

この曲はタイトル通り短い三つの楽章より構成されていて、

Ⅰ.ファンファーレースケルツォ

Ⅱ.ソリロクイ

Ⅲ.マーチ

Ⅰの金管セクションを中心にした冒頭と展開部の堂々たる響きは大変魅力的ですし、曲の途中でテンポを速める箇所の
スピード感も素晴らしいものがあると思います。
Ⅱのしっとりとした歌や呟くようなオーボエのソロも魅力的ですが、
Ⅲの金管楽器を中心とした豪快でスピード感あふれる展開は、聴いていてしびれるものがあると思います。
各楽章が2分半~3分程度で全体としても8分以内に収まる曲でもありましたので、
その点が一時期吹奏楽コンクールの自由曲としてかなり選ばれていた理由の一つにもなっていると思います。
Ⅱの冒頭ではコンサートチャイムが静粛に鳴り響いているのですけど、その中でしっとりとソロを吹いているオーボエには
はっ・・とするほどの美しさがあると思います。

吹奏楽オリジナル作品のA-B-Aの三部構成の序曲の性格に近いとも言えると思いますし、抒情的な第二曲を真ん中に挟む
形で、最初と最後にスピード感と迫力に溢れた音楽が展開されていきますので
曲の構造としてもバランス感覚としても優れているものがあると思います。

この「交響的三章」は1981年のBJのコンクール評ではよく「内容が無い曲」とか「音量だけに毒されている」等
酷評をする審査員も見受けられましたけど、それは「ちょっと違うじゃん・・」と感じてしまいますね。
吹奏楽オリジナル作品のすべてが全て、内省的でメッセージを含む曲である必要はないと思いますし、
カーナウのように「そんな難しい事考えないで、そんな面倒くさい屁理屈は抜きにして、とにかく目の前の音楽を
みんなで楽しもう!」という作品があっても全然おかしくないと私は思います!
交響的三章のⅢは、何か嫌な事があった時にこうしたひたすら豪快で前向きな曲を聴いただけで何かしらの元気とパワーを
貰えそうな曲なのではないのかな・・と思ったりもしますね!
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