テューブラーベル(コンサートチャイム) → 早い話が「のど自慢」の鐘なのですけど、管弦楽でも吹奏楽でも結構効果的に使用されることが多い打楽器です! そして吹奏楽での代表的使用楽曲のO.リードの「メキシコの祭り」について再度記載をさせて頂きたいと思います!

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打楽器(パーカッション)の場合、管弦楽での呼ばれ方と吹奏楽での呼ばれ方が異なるみたいな楽器もあったりします。
例えば、吹奏楽においては「ドラ」と呼ばれる楽器は、管弦楽の世界では「タムタム」と呼ばれる事もあります。
音楽専門書とか名曲解説ではほとんど「タムタム」という表記の方が多い気がします。
ちなみにですが、打楽器の「トムトム」なのですけどジャズの世界ではなぜかそれが「タムタム」と呼ばれる事もあるみたいです。

「テューブラーベル」と聞いても普通の方は「なにそれ・・・?」みたいな感じになるかもしれませんけど、
これは早い話が、あのNHKののど自慢の鐘の事です。
教会などで見られるような鐘を、演奏会の舞台で演奏しやすいように、ひとつひとつの鐘を管状(チューブラー)にして、
ピアノの鍵盤の順番と同様に並べて吊るした打楽器の一種なのです。








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この楽器ですけども通常は木製or プラスチック製 or 皮製の「ハンマー」を使用して管(チューブラー)を叩く事で
壮麗な音が出ます。
専用スタンドの下部にはペダル式のダンパーがあり、これを操作することで余韻を調節することが出ますし、
音を止める事も出来ます。
指揮者の指示により、音の余韻を一瞬で止めたい時には手で管を抑え付け止める方法もあったりします。

この楽器は、管弦楽の世界では「チューブラーベル」と呼ばれる事が多いのですけど、
吹奏楽の世界では、「コンサートチャイム」と呼ばれる事が多いです。

この「チューブラーベル」ですけど、管弦楽の世界では19世紀後半頃から楽譜に登場するようになります。
この楽器を一番最初に効果的に使用したのは、チャイコフスキーの荘厳序曲「1812年」ではないのかな?と思ったりもします。
そうした事を書くと、一部のクラシックマニアの方たちなどから
「それって違うじゃん・・・この楽器を最初に効果的に使用したメジャーな事例ってベルリオーズの幻想交響曲が
最初ではないの・・?」とツッコみが入りそうではあるのですけど。
幻想交響曲は、作曲者の指定はあくまで「カリヨン」、つまり、本物の鐘ですので、ここでは一応除外させて頂きたいと思います。

この「チューブラーベル」(コンサートチャイム)を効果的に使用したオーケストラの曲って何があるのかな・・?

色々ありますけど、ざっと思い当ったところでは・・・

〇マーラー/ 交響曲第2番「復活」

〇マーラー/ 交響曲第3番「夏の朝の夢」~第五楽章

〇ハチャトゥーリアン/ 交響曲第2番「鐘」

〇コダーイ/ 組曲「ハーリ・ヤーノシュ」~Ⅱ.ウィーンの音楽時計

〇レスピーギ /交響詩「ローマの祭り」~Ⅲ.五月祭

〇松村貞三 / 交響曲~第三楽章→2台のチャイムを駆使しています!

〇ビゼー/シチェドリン編曲版 /カルメン組曲 →冒頭がチャイムのみの「ハパネラ」で開始されます・・・

〇M.アーノルド/ 組曲「第六の幸運をもたらす宿」→特にハッピーエンディングでの連打はすてきですね~!

〇ブリテン/ 歌劇ピーター・グライムズ」四つの海の間奏曲~Ⅱ.日曜日の朝

などがあると思います。
他にも色々とあるはずだと思うのですけど、こういうのって一旦記事にした後で
「あっ、いけない! あの曲を入れておくの忘れていた・・!」という事が往々にしてあるのですよね・・・(汗・・)
ちなみにですけど、私自身が管弦楽における交響曲において、
「コンサートチャイムってこんなに効果的に静粛に荘厳に響くんだ・・」と初めて実感したのは矢代秋雄の交響曲~第四楽章
において、アレグロに展開する直前に曲が一旦静粛となった際に、コンサートチャイムがかなり効果的に響いているのを
耳にした瞬間でもありました。
(1982年の全日本吹奏楽コンクール全国大会・高校の部における仁賀保高校の矢代秋雄の交響曲の演奏でも
あの部分はかなり効果的にコンサートチャイムが響いていました!)

そしてここからがやっと本題なのですけど、吹奏楽オリジナル作品においては管弦楽作品以上に
「コンサートチャイム」が活躍する曲ってたくさんあると思います。
一例を挙げると、ヒルの「セント・アンソニー・ヴァリエーション」とか
スミスの「ダンス・フォラトゥーラ」・「ルイ・ブルジョアの讃歌による変奏曲」・「フェスティヴァルヴァリエーション」とか、
ネリベルのアンティフォナーレや二つの交響的断章、
ヤン・バン=デル=ローストのオリンピカ、
そして懐かしいところでは、スゥエアリンジェンの狂詩曲「ノヴェナ」など色々とあると思います。
そうそう、A.リードの吹奏楽のための組曲「ハムレットへの音楽」のⅠの終結部のコンサートチャイムの壮麗な連打も
大変印象的でしたし、あの部分は1988年の市立川口高校が「これでもかっ!」と言わんばかりに2台のカリヨンを
とてつもない強奏で鳴らし普門館の隅々にまで鐘の音を鳴り響かせていたのは大変印象的でした!
A.リードというとエルサレム讃歌のチャイムも壮麗な響きでしたし、それに比べると地味かもしれないですけど、
バーンズの交響曲第2番~第二楽章の静粛な場面で静かに荘厳に鳴り響くコンサートチャイムは個人的には
大好きな箇所であったりもします。
吹奏楽コンクールの課題曲において一番最初にコンサートチャイムを使用した曲ってなんなのかな・・?
1985年の課題曲Bの「波の見える風景」なのかな・・?
あの課題曲の冒頭からコンサートチャイムが鳴り響いていたのもすてきでしたね~!
これは確証はないのですけど、私が中二の時の課題曲C/幼い日の思い出のラストにおいて、確かフルスコアでは
コンサートチャイムも入っていたような記憶もあるのですけど、実際の演奏であの課題曲でチャイムを使用していた事例は
見た事も聞いた事もないので、あれは私の勘違いかはたまたオプション扱いなのだったのかもしれないですね。

だけど私的には、吹奏楽オリジナル作品で「コンサートチャイム」が大活躍する曲というと、オーエン・リードの
交響曲「メキシコの祭り」に尽きると思います!!
だってこの曲、第一楽章の冒頭がいきなり、コンサートチャイムの目覚めの乱打から開始されますし、
第二楽章の冒頭もやはりチャイムの響きから開始されます。

この交響曲は、下記の三つの楽章から構成されています。

Ⅰ.前奏曲とアスティックダンス

Ⅱ.ミサ

Ⅲ.カーニヴァル

Ⅰ.前奏曲とアスティックダンス

冒頭がいきなりチャイムの乱打・ホルンの雄叫びと
ティンパニ・大太鼓・スネアドラムの強打から開始され、この部分だけでも相当のインパクトがあります。
前半部分は、祭りが始まる前夜~夜明けをイメージしたものと思われますが、
結構夜が明けるまで長いような感じもします。
この第一楽章は10分程度の曲なのですけど、冒頭から夜が明けるのに6分程度も掛かっていますので、
「なかなか夜明けがやってこない・・」みたいな雰囲気もあるのですけど、後述しますがバンダによって夜明けのイメージの
部分が開始され、祭りが始まるとあとはクライマックスに向けての熱狂的な踊りが展開されていきます。

夜明け、そして太陽が昇り、祭りが始まるシーンは、
舞台裏から「バンダ」(別働隊)として奏でられるトランペット・トロンボーン・クラリネット・大太鼓・シンバル・小太鼓の
ミニ楽団によって演奏され、舞台裏から聴こえてくるという事で、
遠くから祭りのざわめきが聴こえてくるというイメージなのかもしれません。
このバンダ演奏部分の際は、舞台の本隊の楽団の方は奏者は全員お休み状態です。
後半は、エキサイトなダンスシーンです。
ティンパニとトムトムの掛け合いが非常に面白いし、ティンパニーのソロが実に決まっていて格好いいと思います。
あの部分のティンパニ奏者は気分爽快だと思います。
曲は一気に駆け上がって終わるのですが、その終わり方もffで終わるのではなくて、
最後にドラがゴーーーンと壮大に鳴り響き、その余韻と共に静かにとじられていきます。
こうした曲のラストでドラがゴワワワー―――ンと鳴り響き、その余韻で閉じられていくというパターンは、
管弦楽曲ですけど、レスピーギの交響的印象「境界のステンドグラス」~聖天使・大ミカエルでも使用されていたりもします。

Ⅱ.ミサ

この楽章は「祈り」と記されるプログラムもありますが、私としてはミサと言う方がなんとなくミステリアスな雰囲気が
ありそうで好きです。
この楽章は、第一楽章の興奮をそのまま引きずったように、冒頭からチャイムが鳴り響き、
金管楽器の大音量的コラールで始まります。
だけど盛り上がるのはこの部分だけで、あとは終始ゆったりとした音楽が展開されていきます。

メキシコというとカトリック教徒が多い国でもあったかとは思うのですけど、そうした教会での厳粛なミサを挙行し、
信者たちが荘厳な祈りを捧げているみたいな厳粛な雰囲気は感じられます。
そしてこのⅡの「ミサ」を人間の「聖なるもの」とすると、続くⅢの「カーニヴァル」はまさに人間の「俗なるもの」なのだと
思います。
Ⅱの静粛で厳粛な雰囲気で、少しストレスが溜まったものが、次のⅢのカーニヴァルで一気に爆発し、
人間の欲・快楽・バカ騒ぎが炸裂しまくります!

Ⅲ.カーニヴァル

この交響曲のラストを飾るのに相応しい楽しさ満載のノリノリな楽章です。
冒頭は、何となくストラヴィンスキーのバレエ音楽「ペトルーシュカ」第四場の冒頭に
何となく雰囲気が似ているような気がするのは多分気のせいなのでしょうね・・・(汗・・!)
だけどこの楽章は、奏者も指揮者も大変だと思います。
このリズム感をどう正確かつエキサイトに演奏するかは非常に難しいものがあると思います。
終始三拍子系なのですけど、ビートの躍動をどう表現するか指揮者の技量がストレートに出そうな気もします。
結構マリンバが終始大活躍していますけど、マリンバ奏者も相当のハイテクニックが求められそうです。
トロンボーンの粋な感じで半分酔っぱらったような勢いあるソロも実に巧みだと思います。

このⅢの総譜を一度読んだことがあるのですけど、曲自体はどことなくのんびりとした雰囲気があるのに、
指揮者にとってはとにかく「全体を合わせる事」が大変難しいようにも感じられますし、
奏者の視点で見てみると、指揮者をよく見て全体の流れに自分をうまく乗せていかないと、いつの間にか
全体の流れに一人取り残されてしまう・・みたいな危険性を感じたりもしたものでした。

全三楽章の曲なのですけど、多分ですけど技術的に一番大変なのはこのⅢのカーニヴァルのような気もします。

吹奏楽コンクールのこの曲の名演ですけど、一つ素晴らしい演奏があります。

1988年の一般の部に東北代表として演奏していた米沢吹奏楽愛好会の第一楽章・前奏曲とアズティックダンスの
演奏は大変素晴らしいものがありました!
夜の長さも全然冗長に感じませんでしたし、踊りの部分の躍動感が素晴らしかったですし、ラストへ向かう追込みが
圧巻でした!
私としては「当然の金賞」と思っていたのですけど、結果はまさかの銀賞・・
うーーん、あの素晴らしい演奏のどこが銀賞なのか、私にはいまだにさっぱり理解できません・・

全国大会では、他には天理高校とか長岡吹奏楽団とかが第一楽章を取り上げていますが、
神奈川大学も、こんなバリバリの正統派オリジナル曲を選曲しています。
(神大は小澤先生が来る前は、メキシコの祭りとか、仮面舞踏会とか、ジェリコといった
正統派古典オリジナル曲を取り上げています)

面白いのは、1977年に電電中国(現・NTT西日本)が第一楽章を取り上げ、
翌年の1978年に第二楽章「ミサ」を演奏している事です。
いかにも吹奏楽に自分なりのこだわりをお持ちの佐藤先生らしい選曲だと思います。
でもコンクールでほとんど盛り上がり要素が少ないミサだけを演奏してもインパクトは弱いし、アピールは大変だったでしょうね。

Ⅲのカーニヴァルを自由曲にしたチームでは「これぞ名演!」という決定打に欠ける感じはあります。
強いて言うと、1976年の函館中部高校なのびのびとした雰囲気は見事なものがあると思うのですけど、
部分的にリズムがかなりギクシャクしているのは惜しいです・・

考えてみるとこの「メキシコの祭り」は、吹奏楽コンクールにおいては、全楽章・・つまりすべての楽章が
自由曲として演奏されている事になりますね!
一般的に吹奏楽でも管弦楽でも「交響曲」という形式においては、静粛な抒情楽章というものがある関係で
全ての楽章が自由曲になる事は極めて稀なのですけど
(かなり昔の話ですけど、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」のあの全てがアダージョで悲しげに演奏される
第四楽章が自由曲として演奏されていた事は驚きでした!!)
この「メキシコの祭り」は、三楽章全てが単独ではありますけど、全て全国大会で演奏されていたというのは
大変興味深いものがあると思います。
ちなみにですけど、そうした全楽章全て自由曲として演奏された珍しい交響曲の事例としては、
ジェイガーの「吹奏楽のための交響曲」というケースもあったりします。
ジェイガーの交響曲は、ほとんどは第四楽章が演奏されているのですけど、
1980年の北海道教育大学函館分校のように第一楽章を自由曲として演奏された事もありますし、
はたまた1977年の舟入高校OB吹奏楽団のように、第二・第三楽章を自由曲として演奏されていた事もありますので、
ジェイガーも全楽章演奏の数少ない事例と言えそうですね。
そうそう・・参考までに舟入の場合は、第三楽章がゆったりとした抒情楽章で、第二楽章が活発なスケルツォ楽章ですので、
実際に演奏したのは、第三楽章を先に演奏し、その後に第二楽章が演奏されています。

どちらにしてもオーエン・リードのメキシコの祭りもジェイガーの吹奏楽のための交響曲も
忘れることなく演奏され続けてほしいオリジナル曲の一つだと思います!!

この古典的吹奏楽オリジナル作品の名作も、現在ではほとんど演奏されていません・・・(泣・・)

この曲は「コンサートチャイム」の大活躍だけでも聴く価値があると思いますし、名作の名に恥じない
素晴らしい曲でありますので
是非是非どこかのチームでも忘れずに演奏し続けて頂きたいと切に願っています!!
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