最近の住宅業界の傾向としては、一戸建ての新築は伸び悩みの傾向で決して景気は良くないと思うのですが、
その分を内装外装のリフォーム・リノヴェーションの需要の高まりと売り上げの貢献で新築の不調を十分すぎるほど
カヴァーしているような傾向もあるんじゃないのかと思います。
そして同時に現在絶好調なのが、アパート・ワンルームマンションの新築と築10年~15年程度経過による大規模改修の
増加じゃないのかなとも思ったりもします。
考えてみると1980年代後半~90年代前半も節税対策とか土地建物の有効活用みたいな事をバカの一つ覚えみたいに
開発業者とか金融関係が盛んに資産家・高齢者に煽り立て、
当時は随分とアパート・マンション建築ラッシュが続いていたような印象もあったりしたものでした。
そうした金融機関がバブル絶頂期の頃に、私も運悪く(?)金融機関に在籍していた時期とビタリと重なりますので、
バブルのおいしい面もその後処理の大変さ等バブルの光と影については私自身も随分と痛い目に遭った
ものでした・・・
あの頃の金融機関の営業は、融資量増強が絶対的命題であり、
私達も住宅ローンの借り換えとか、不動産担保付の事業性融資とか
金利は無茶苦茶高いけど300万円までは無担保無保証人の消費性ローンとか
保険ローン(保険料を一括して払い込むと、月額の払いの保険料よりも総額で支払金額が
低くなり、これ一括保険料を銀行融資で払い込むとんでもないローン)などを
毎月毎月無茶苦茶な設定のノルマを一方的に押し付けられたものです。
特に保険ローンなんて商品は、お客にほとんどメリットがないばかりか、保険ローンを
途中で解約すると、お客がローンの金利差額までも負担しなくてはいけない事になり、
アパートローンと並んでトラブル商品の典型みたいなものでした。
それでも毎月毎月各商品ごとにノルマを割り当てられ、それを達成できない月の罵詈雑言・叱責は
完全に今で言う「パワハラ」の概念を飛び越えるすさまじいものがあったと思います。
(昔も今もそうした罵詈雑言は比較的馬耳東風で聞き流せちゃうことができる能力みたいなものが
そうした事でもあんまりストレスを感じなかった要因と言えるのかもしれないですね・・←鈍感なだけなのかも・・?)
私自身も夜遅くまでお客の家を廻っては「お願いセールス」したり、土日に普段会社で
書けない貸出の稟議書類や不動産査定書・貸借対照表を作成したり休まる時間はほぼ皆無だった印象があります。
そうした中、「アパートローン」は当時私もかなり関わっていた印象があります。
だってアパートローンは金融機関的にはかなり美味しい案件でして、大抵の場合、地元ビルダー・地元工務店、
稀に大手ディベロッパーからの紹介案件という事で、別に金融機関側からそうしたニーズを探す必要もありませんでしたし、
まずは土地オーナーにアパートの建築資金を長期ローンで貸し付け出来ますし
(土地建物という担保をしっかり取れますので本店稟議が否決という事はまずありえませんでした・・)
地元工務店等に対しては、アパート建築に関わる運転資金を短期間ではありましたけど融資できましたし
(土地オーナーにアパートローンが実行したと同時にその融資金が丸ごと地元工務店等に流れて、その時点で
融資が全額返済されます・・)
いわば一度の案件で二度融資が実行できるといううまみはあったと思います。
そして大抵の場合、アパートの家賃の振込先として当金融機関の返済口座を指定させれば、
アパートローンの毎月の返済も滞る事なく返済され続け、場合によってはその返済口座の通帳に金利が安い普通預金の
残高が増えれば金融機関にとっても御の字ですし、
アパートの借家人が「子供もできたので一戸建てを購入したい、どこか銀行を紹介して・・」と言ってくるケースも
当時は結構ありましたので、
バブル前後のアパートローンは、金融機関の一つのビジネスモデルとすら言われていた時期もありました。
だけど・・・
世の中、そんな美味しい話は続く訳はないのですよね・・・(滝汗・・)
当たり前の話ですけど、アパート・マンションが建築後10年~15年程度経過し、既に「新築物件」と言えなくなってしまうと、
常に入居率100%をキープできる事はまずありえなくなり
(駅近とか学校の目の前といった極めて良い立地条件ならば別ですけど・・)
築15年も経過すると、ぼちぼち室内の設備も痛み始め設備の入替も必要になってきますし、
外壁の塗り替え等も必要になってきて、色々と維持費・メンテナンスにお金が掛るようになってきます。
一般的に金融機関的には、新築物件以外のアパート・マンションなんて「入居率は6~7割程度」で査定をするのが
現実なのですけど、
どうしてもオーナーさん的には
「いやいや、うちのこの物件はまだまだ人気あるでしょ・・」とか
「建築当時、工務店とか銀行の担当が空室が出たらお客を紹介しますよ・・と言っていたから何とかなるのかな・・?」
みたいなあま~い幻想に陥り、ついつい現実を忘れてしまい、
気が付いてみると、物件の半分近くは空室が目立ち、家賃収入が期待や返済シミュレーションの下限値すらも下回り、
全体の家賃収入をもってしても毎月のアパートローンの返済に達せず、
結果的に返済の遅れが出始め、金融機関等に
「あんた、あの時空室が出たら入居者を紹介する・・」と言っていたじゃないかっ!と文句を言っても
「そんなこと言った覚えはありません・・」とか「当時の担当は既に異動で別の支店に行っていますので分かりかねます・・」
みたいな冷たい返事しかかえってこず、
最終的には返済が出来なくなってしまい、そのアパート等の抵当物件が競売・任意売却という事態が続出していたのは
バブル崩壊以降珍しい話どころか「日常茶飯事」みたいな話になっていたと思います。
オーナーにとっては土地を遊ばせるのも勿体無いし節税対策として金融機関が盛んに勧めていた
こうした「アパートローン」に飛びついてしまったのがそもそもの失敗の元・・という教訓を多分ですけど、
日本各地の土地オーナー達は骨の髄まで身に沁みた・・痛い経験をしてしまった・・という事になっていたのだと思います。
だけど・・・・
歴史は繰り返すのですよね・・・
なんで過去のそうした「痛い教訓」から学習しないのでしょうね・・(汗・・)
実はなのですけど、最近の日本の融資の中で突出して目立っているのは、こうしたアパートローンの増加なのですよね・・
事実、国土交通省が2016年の新設住宅着工戸数を公表したデーターを見てみると、
大幅に伸びたのは貸家・・特に賃貸用のアパート・マンションの建築なのでした。
そのデーターによると、2016年の住宅着工戸数2年連続で増加し、貸家が2ケタアップで
そうした動きを牽引しているのが賃貸物件なのだというのがよく分かります。
全国の新設住宅着工戸数は96万7237戸で、対前年で6.4%増、2年連続で増加しましたけど、
内訳をみると、持ち家として住宅を建設する「持家」は29万2287戸で前年比3.1%増。
分譲する住宅を建設する「分譲住宅」は25万532戸で前年比3.9%増となっています。
(このうちマンションは11万4570戸で前年比0.9%減、一戸建ては13万3739戸で前年比8.2%増)
これに対し、アパートや賃貸マンションを建設する「貸家」は41万8543戸で、
前年比10.5%増と大きく伸びて、着工戸数全体を押し上げる結果となりましたし、
貸家が40万戸を超えるのは実に8年ぶりのことです。
貸家がこれだけ大きく伸びているのは、2015年からの相続税増税の影響があるとも言われています。
実勢価格で計算される現金や株で相続するより、実勢価格より低い評価額で計算される不動産で相続したほうが、
節税効果があり加えて、貸家の場合は借家人が住んでいて売買に制約を受けることから、
さらに評価額が下がる仕組みとなっているのも大きいと言えると思います。
アパートの建設をしたい建設事業者が、長期間借り上げて賃料を保証することを安心材料に
積極的に営業しているという背景もありますし、
住宅ローンの貸し出しが頭打ちの金融機関が低金利のアパートローンを積極的に営業しているという背景もあって、
こうした賃貸アパートの建築が増えているのだと思われます。
(ま・・・こうした家賃保証というのは最近色々な所でトラブルとか訴訟が発生していて、
約款をよく読んでみると、建築後15年後には全体を見直すとか会社の経営状況によっては家賃保証を見直すと
細かい字で書かれているというのはよくある話ですよね・・)
でも、ちょっと待ってほしいのですよね・・・
というか前述の「バブル時の苦い思い出」を建築業者も金融機関も土地オーナー自身も
覚えちゃいない・・というのは、
「本当に日本人というのはすぐ忘れちゃう国民性なんだよな・・」と感じちゃいますよね・・・(汗・・)
すでに日本は家余りの状態にあり、多くの貸家が存在していていますし、現実既にたくさんの「空室」が発生しまくっています。
しかも、人口や世帯数が確実に減っていくことが分かっていますし、
需要が細くなっているなか、長期間常に入居者で埋まっているということはそう簡単なことではないと思います。
建築当時の新築の間はいいのだけど、建物はどんな建物でもいずれ老朽化してくるし、
建物が老朽化すると常に満室が続くという保証は全く無いという事をきちんと理解した上で、
安易な節税対策に囚われずに検討する必要はあるんじゃないのかなと思いますし、多分ですけど、
10年~20年後の日本は、賃貸物件の空室が相当社会問題化しそうな予感もあったりします・・・
どうして「バブルの教訓」を活かせないのでしょうかね・・・・??
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