ある一曲を聴くことが目的で演奏会に行ったものの
その曲以外に演奏された別の曲に惹かれ興味を持ち、結果的にその曲も好きになってしまったという事は
結構しばしばありました。
私にとってその代表例が、プロコフィエフ/ピアノ協奏曲第3番なのかもしれません。
1987年10月23日 東京文化会館で開催された第394回日本フィルの定期演奏会で演奏された
曲目は・・・
〇バルトーク : バレエ音楽「中国の不思議な役人」
〇プロコフィエフ: ピアノ協奏曲第3番
〇矢代秋雄 : 交響曲
だったのですけど、当然目的はバルトークと矢代秋雄でした。
当時はプロコフィエフのピアノ協奏曲は一曲も知りませんでしたし、プロコフィエフというと、スキタイ組曲・交響曲第3番と5番・
ロミオとジュリエット・シンデレラくらいしか聴いたことがありませんでした。
の日の演奏会は、勿論バルトークも矢代秋雄/交響曲も本当に素晴らしい演奏を聴かせてくれたのですけど
それ以上の収穫は、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番でした。
この曲出だしのクラリネットのファンタジー感溢れる出だしとは対照的に終始才気煥発というか、次から次へと大胆なメロディーが展開され、時に抒情的になったかと思えば、時に爆発し時にいかにも「モダン感覚溢れる場面」があったりと全く飽きる事は無く、
この曲が終わった瞬間にはすっかりこの曲に取りつかれてしまったという感じすらありました。
演奏時間も26分程度だし、短くもないし長くもないしという感じで丁度いい」いうのもあったかもしれません。
それにしてもプロコフィエフの「ピアノ協奏曲第3番」は何度聴いても素晴らしい曲ですね~♪
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番と並んで「20世紀を代表する優れたピアノ協奏曲」の一つだと思います。
このプロコフィエフの3番は、全体を通じてモダンな感覚と言うのか、メカニックな香りがプンプンと漂い面白いと感じます。
この曲とラフマニノフのピアノ協奏曲第2番がたかだか20年前後しか作曲時期が隔たりが無い事に改めて驚かされます。
ラフマニノフは20世紀に生きた方なのに、作曲手法は19世紀そのものであり、伝統的手法に忠実という感じが強いです。
ラフマニノフもプロコフィエフもどちらもロシア革命→共産党政権の樹立を嫌って、ロシアを飛び出し
欧米へと亡命した共通点はあるものの、ラフマニノフは、一度自分が決めた事は生涯ひるがえすことも無く、
本音は「ロシアに・・、自分の祖国に戻りたい」という事だったのかもしれないのに、
自分の心の本音をさらけ出すことも無く
ひたすら19世紀の「ロシア音楽」の伝統を守り続けたという感じがあります。
それに対してプロコフィエフは・・・
その点は、まさに自由そのもののちゃらんぽらんみたいな感じもあり、ソ連の共産党政権が嫌なら、アメリカへ、
そしてアメリカで自分の音楽が受け入れられないと分かった瞬間にヨーロッパへ、
そしてヨーロッパで音楽活動をするうちに故国が恋しくなり
「戻ってもべつにいいっか・・」みたいな軽いノリでロシアに舞い戻ってきたという節操のない感じもありますけど、
そうした自由さがピアノ協奏曲第3番の土壌みたいなモダン感覚にも繋がっているのかもしれないです。
このピアノ協奏曲第3番は、個人的には第一楽章が大好きですね。
特に最後の方のピアノの超絶技巧のオンパレードは、まさしくバックのオーケストラとの格闘技そのものにも思えます。
この曲の第二楽章は何となくですけど、プロコフィエフの交響曲第3番泰一楽章にも繋がるものがあるような気もします。
何かと言うと、漠然としたイメージかもしれないのですけど「ロシアの大平原」みたいな感覚です。
延々と牧草が広がる穀物地帯を悠然と風が通り抜けていく・・・そういうイメージを感じたりもします。
この曲が作曲された当時は、ロシアにとってはまさに激動の時代でした。
この曲の構想が具体化した頃に、ロシア革命が勃発し、共産党体制による政情不安に嫌気をさし、
安定した環境での作曲活動を希望したプロコフィエフは亡命を決意し、アメリカ、そしてヨーロッパへと活動の場を移します。
そして最終的にこの曲は、パリで完成されたのですけど、
その亡命の道すがら、プロコフィエフは日本にも立ち寄り約二か月程度滞在しています。
この曲の第三楽章の雰囲気と旋律が何となく日本の長唄「越後獅子」と似ていることから、
日本の滞在時にもしかしてこの越後獅子を聴いて自分の曲に取り入れた・・・なんていう人もいるようですけど、
私の見解は、「それはありえない」と思います。
改めて聴いてみてもこの二つの曲にそれほどの共通性があるとは思えないし
何となく全体の雰囲気が少し似ているような似ていないような・・・という類のものだと思いますし、
例えは悪いかもしれませんけど
テレビ朝日のタモリ倶楽部の「空耳アワー」の世界に近いようなものがあると思います・・・・
そうそう第一楽章ですけど、
この楽章のカスタネットの「タン、タン、タタン」というリズミカルな響きに何か惹かれるものがあります。
第二楽章はいわゆる抒情楽章なのですけど
途中でテンポが唐突に早くなるスケルツォみたいな部分が現れたり
メロディーラインが非常に美しく、
後の交響曲第5番第三楽章とか、シンデレラ~お伽話の終わり
ロメオとジュリエット~ジュリエットの墓の前のロメオみたいな感じの抒情的ではかないメロディーも
出現し、驚かされます。
ラストの第三楽章もホント切れ味が鋭く、そのスピード感は爽快の一言に尽きます。
大変モダン感覚と切れ味鋭い曲なのですけど
前作のピアノ協奏曲第2番の前衛さ・過激さは随分と後退し、「分かりやすさ・聴きやすさ」は
その代わりに進化したような感じもします。
それにしても・・・
本当にラフマニノフとプロコフィエフがほぼ同じ時代を生き、共にロシア革命と亡命を経験しながらも
二人の作品の極端な違いとか生きざまには改めて驚かされたりもします。
そうした違いがあるからこそ音楽は面白いものなのだと改めて感じたりもします。
プロコフィエフは「ピアノ協奏曲」を計5曲残しているのですけど、いわゆる三楽章の古典形式を順守しているのは
この名作の誉れ高い第3番のみで、残りは全て三楽章形式ではありません。
何かこのあたりも時代と形式の枠に収まりきらないプロコフィエフらしい話なのかもしれないです。
第一番→単一楽章
第二番→四楽章構成
第四番→これは「左手」のみで演奏されます。四楽章構成
「左手のためのピアノ協奏曲」というとラヴェルが圧倒的に有名です。
依頼者の第一次世界大戦で右腕を失ったヴィトゲンシュタインは、ラヴェルにも
「左手用の協奏曲」の依頼をしましたけど、
実はプロコフィエフにも依頼をしています。
第五番→なんと五楽章形式・・・
この曲はCDで聴くよりも生の演奏会で聴いた方が真価が分かると思います。
ちなみにプロコフィエフ自身がソリストを務めたCDも現在でも発売されています。

上記でちらっと触れた通り、この協奏曲のカスタネットの扱いはとても大好きです~♪
カスタネットというとなんとなくですけど「どんなアホでも叩けば音は出る簡単な楽器」という誤ったイメージがありそうな
打楽器なのかもしれないですけど、実際に管弦楽や吹奏楽で使用されるカスタネットの奏法は大変難しく、
私自身、高校3年の時の定期演奏会で演奏した曲目の一つがリムスキー・コルサコフの「スペイン奇想曲」だったのですけど、
あの時もパーカッションパートで特に第5曲でカスタネットを担当していた奏者は、あの独特な切れ味鋭いカスタネットの
リズム感を出すために相当裏では苦労していたと思いますし、朝練習や全体練習が終わった後でも一人黙々と
カタカタとカスタネットを刻んでいた光景が大変印象的でもありますし、ああした光景を見ると言えることはカスタネットは
決して簡単な楽器ではないし、少なくともどんなアホでもすぐに全体練習に参加できるような簡単な楽器ではないと思いますし、
同様な事はトライアングルにも言えると思います。
カスタネットは木製の打楽器で、体鳴楽器に分類される打楽器の一つです。
スペインで特に発達した楽器であり、スペインの民族音楽に欠かすことはできない楽器であり、
スペインの舞踊フラメンコにおいては、今現在も踊り手にとっては必要不可欠な楽器でもあります。
カスタネットの情熱的なリズムの刻みは心地よいですし、あの躍動感は素晴らしいです~♪ あのカタカタと小気味よいリズムを
耳にしただけで既に気分は南欧気分になりそうです。
カスタネットは、手のひらに納まるくらいの丸い貝型の木片を2枚合わせ、これを打ち合わせることによって音を出す楽器
なのですけど、端にひもを通してつなげ、このひもに親指を通して楽器を保持したり2枚の開き具合を調整しますし、
基本的には音程がわずかに異なる二つのカスタネットを右手と左手の両方に持ち、一般的には音程が高い方のカスタネットを
右手に持つことがスタンタードです。
ららマジでカスタネットを担当しているのは奥村映という中性的な雰囲気の高校2年生のJKさんでけど、
カスタネットを使ったフラメンコが特技で、カスタネットの手入れも欠かさず行うとの事です。
ららマジの打楽器パートのトライアングル奏者はかなりの不思議ちゃんの女の子なのですけど、奥村映も少しそうした
不思議ちゃんみたいな雰囲気も無くはなく、どちらかというと男性的でもないし女の子そのものという感じでもないし、
少し不思議な中性的な女の子という印象もあったりします。
少しだけ鈍感な性格というのも、不思議ちゃん系としての浮世離れした性格の為せる業なのかもしれないですし、
奥村映がプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番のカスタネットの場面をいかに解釈されるのかは興味津々ですね~♪
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