生演奏の管弦楽団の演奏会を聴きに行く時の醍醐味の一つは、ライブ感と共に
オーケストラの発する大音響の爽快さもあるのかな・・と感じる事もあったりします。
クラシック音楽というとどうしても世間的には「お堅い」とか「生真面目」みたいな印象を持たれがちなのですけど、
中には男気溢れる豪快な作品もあったりして、聴くだけで「日頃のストレス発散!」みたいな感じの曲も実はあったりもします。
楽譜のfffに対して、管弦楽団のメンバーが「俺も、オレも、僕も、私も、自分も・・」とバカ丸出し風に
音量だけを目標に演奏するのも確かにどんなものなのかな・・とも思う時もあるのですけど、
何か気持ちを奮い立たせたい時とか、元気になりたい時とか、自分自身に喝を入れるために
管弦楽の大音量の音楽を聴いて気分をスカッとさせるのも決して悪くはないと思います。
大音量の曲というと、お勧めしたい曲が二つほどあります。
1.組曲「惑星」よりⅠ.火星(G.ホルスト)
出たしこそややミステリアスに始まり、弦楽器の刻みに乗ってトロンボーンが不気味に
メロディーを奏でますが、ホルンの絶叫の雄叫び以降は、すさまじい大音響が待っています。
金管楽器のリズムの刻みや金管セクションのメロディーラインがまるで放送事故みたいな世界を繰り広げていき、
それに小太鼓やティンパニ奏者2名やドラのリズムセクションの暴力的響きが加わっていきますので、
これはまさに「魑魅魍魎」の世界なのかもしれません。
2.交響詩「ローマの松」~Ⅳ.アッピア街道の松(O.レスピーギ)
これは前半と後半の対比がすさまじいものがあります。
前半は、コールアングレのソロを中心に展開されていきますが、
バンダ(金管楽器の別動隊)が客席又は舞台端が加わって以降は、華麗なる音の響きを展開させていきます。
そして、大太鼓による連打以降は、全楽器がひたすら楽譜の「ffff」の頂点を極めるために爆演が続いていき、
火星以上の大音量が展開されていきます。
CDでこれらの曲の大音量・大音響を忠実に再現することは難しいものがあると思いますが、
それを具現化した奇跡のような演奏も存在します。
火星は、レヴァイン指揮のシカゴ響がお勧めです!
アッピア街道の松は、バティス指揮のロイヤルフィルが圧倒的に素晴らしい名演を聴かせてくれます。
だけど思うのですが、
結局「ff」の醍醐味は、それを際立たせる「pp」の存在があるからこそ引き立つと思うのです。
火星も、それ以降の水星と金星の静かな神秘的な響きがあるからこそ、火星と木星が引き立つわけで
アッピア街道の松も、前半の静かさがあるから後半の爆発の効果が発揮されると思うのです。
要は「対比」の大切さ
音楽は、すべてが「大音量」だけでは成り立たないし、
ppがあるからffが生きると思うのです。
それは「人の道」も同じことなのかな・・・??
楽しいだけでは駄目で、辛い事があったりするから、たとえ瞬間的であっても「楽しさ」が
引き立つという事なのかもしれないですよね。
そうですね・・・音楽のダイナミックスと言うのは決して「音量」だけではないと思うのです。
要は、静かな部分と壮大に豪快に咆哮して鳴り響く部分の「静と動の対比の落差」なのだと思います。
もう一つ一例を挙げるとストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」もそうした傾向があると思います。
この組曲は冒頭の序奏から「王女たちのロンド」あたりまでは、とにかくミステリアスで静かで美しい音楽が
延々と展開されていくのですけど、
「魔王カスチェイの凶悪な踊り」の場面に入ると、唐突に金管セクションのとてつもない大音量と
バスドラム・ティンパニ・シンバルによる打楽器の凶暴ですさまじい「ドスン!!」という打撃音から開始され、
それまでの「王女たちのロンド」との静けさとのあまりにも違いが前述の「とてつもない「ダイナミックスレンジの落差」を
呼び込んでいるのだと思います。
あの場面は、それまでの静かで美しい音楽を耳にしてウトウトし始めた聴衆のまさに眠りを覚ます
とてつもなく激しく暴力的な音楽であり、
あの「落差」はとにかくいつあの場面が始まってもゾクゾクさせられるものがありますね!
私自身のむかしむかしの話なのですけど、5月の連休中に
サントリーホール近辺をブラブラしていたら(→何ていう所を散策しているのでしょうね・・)
「当日券あります」の札があったので、曲目を見てみたら、
サン=サーンスの「動物の謝肉祭」・「火の鳥」とか書いてあったから、思わず当日券を買って入ってしまいました。
沼尻竜典さん指揮/新星日響だったと思いますが、
会場に入ってびっくりしました・・・
この日は「こどもの日、特別演奏会」という事で、小さな子供とその親たちばかりで
30過ぎの男が一人でノコノコ入れる雰囲気は全くありませんでした。
むしろ「こっ恥ずかしい」感で一杯でしたね(苦笑・・)
幼児用の演奏会ですので、演奏中も子供のはしゃぐ声が終始止まらない感じでしたが、
それはそれで仕方ないのかも・・・
何か貴重な経験だったと思いますし、幼児のみなさん達もそうやって物心が付く前からこんなクラシック音楽に
触れる機会が持てていた事はとても素晴らしい事なのだと思います。
沼尻さんと司会者の女の人の会話が何か面白かったのは今でも覚えています。
確か「指揮者のお仕事って儲かりまっか?」「ボチボチでんな!」というなぜか関西弁トークはとても楽しかったです!
動物の謝肉祭の「カッコー」では、クラリネット奏者が
カッコーのお面を付けて、舞台脇でライトアップされた状態で吹いていたのは何か印象に残っています。
でもこの日一番「なるほど」と思ったのは上記で書いた「火の鳥」でした。
前半は子供たちも退屈そうにしていましたが、例の「魔王カスチェイの凶悪な踊り」の部分で全体の「ドスン!」という
とてつもない強烈な音が鳴り響いた瞬間に、今まではしゃいでいた子供達が急にシーーンとなり、
ビクッとのけぞっていたようになったのは、さすが「ストラヴィンスキーのインパクト!」と感じたものでした!
帰りに、他の子供たちと同様にお土産のお菓子を係りの人から配られたのは、さすがに「トホホ」という感じでしたね(苦笑・・)
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