24.名古屋電気高校
A/吹奏楽のための仮面舞踏会(V.パーシケッティー)
そうですね・・・・大変感想を書くのが難しいチームです。
ただ一つ言える事は、この演奏がとっても大好きである事と
吹奏楽コンクールでは、1981年以降はほぼ全く演奏されない吹奏楽オリジナル作品としては
「不滅の名曲」であると確信しているこの曲を演奏してくれて、涙が出るほど嬉しい・・・
それに尽きると思います。
演奏なのですけど、
自分自身とっても矛盾した事をさらっと言ってしまいますが、
一言で述べると、とてつもなく薄口の演奏なんだけど、同時にとてつもなく複雑怪奇な味がするという事
なのだと思います。
うーーん、この感覚・・・言葉にするのが大変難しいですね・・・
課題曲A/花祭りですけど、実に端正な仕上がりで技術的にはほぼパーフェクトな演奏だと思います。
だけど・・・聴く者にはあんまり「何か」は伝わってこない・・・
やはり、なんか表現が「薄口」というのか飄々としすぎて枯れているのかダイナミックスなのか
それからもよく判別できない演奏・・・
とにかく不思議な演奏です。そうですね・・・課題曲に関しては、男性的でも無くて女性的でもなくて
不思議な「中性的な香り」がする演奏です。
自由曲のパーシケッティーの「吹奏楽のための仮面舞踏会」という知る人ぞ知る吹奏楽オリジナル作品の名曲を
こういう吹奏楽コンクールの場で取り上げてくれたその勇気に、まずは敬意を表したいと思います。
この曲はとにかく大変な難曲で、
多分・・・・曲を譜面通り正確に吹いたとしても聴く者には何にも伝わらないと思います。
そうですね・・・
労多くして実りが極端に少ない曲と言えるのかもしれないです。
聴く者に「分かりやすさ」とか「ストーリー性」でもってアピールできることは、曲の性質上出来ない内容ですし、
派手にガンガンと鳴らす曲でもないし、
コンクールの自由曲としてはもこんなに不利な曲も珍しいとすら思ってしまいます。
曲の内容もかなり深いし、とにかく大変抽象的な内容だし、
曲は一種の変奏曲なんだけど、その主題も変容も今一つよく分からんし、
何よりも・・・変拍子&不協和音に満ちているし、
ホント・・・・これ・・・コンクールの自由曲としては全く不向きと言うか、大変やりにくい曲なのだと思います。
だけど、この年の名古屋電気はあえてこうした難解な「吹奏楽オリジナル曲」に果敢に挑戦し、
ある程度満足できる演奏は出来ていたと私自信は確信しております。
だけど・・・
あまりにも曲自体が抽象的ゆえに、確かにこんな大変な難曲をよく音にしているのですけど
やはり薄口だけど複雑怪奇な味という大変矛盾する内容を二律背反的に含んでいて、
結果として・・・
指揮者も奏者も200%以上の力を遺憾なく発揮しているのに
聴衆にはあんまりこの曲の素晴らしさが伝わってこない・・・みたいなとてつもない「もどかしさ」を感じたりもします。
あ・・・なんか書いていて自分自身ですら、何言っているのかさっぱり分からなくなってきました・・・・
そうなんですよ! そこなんです!!
この曲の持ち味は「何を言っているのかさっぱり分からない」みたいな抽象的な感覚を・・・その怪しい雰囲気を
楽しみましょう・・・みたいな曲ですので
「もどかしい・・」とか「言語明瞭意味不明」というのは、この曲の正しいアプローチではないのかな・・という気も
いたします。
だけど、この「仮面舞踏会」の演奏は、技術的にはほぼパーフェクトだと思います。
全く非の打ちどころがない完璧な仕上がりです。
ユーフォニアムをはじめ各ソロの仕上がりも申し分ないです。
だけど今一つ伝わりきらない要因として「カット」というものがあったと思います。
この曲は元々11分程度のオリジナル曲なのですけど、
コンクールの時間制約という事で無理やり6分半程度にコンパクトにまとめてしまった・・みたいな印象もあります。
この曲のノーカット版を後日聴いた上で
改めてこの名電の演奏を聴くと・・・
ま、確かに・・・ズタボロにカットされているから、いい所で唐突にカットされ次の変奏に入っているみたいな
感じもあったりもします。
だけど・・確かにカットの問題とか全体的な薄口の感じとか、色々難点は多いのですけど
ここまで「古典的な吹奏楽オリジナル曲」に正攻法で切りこんでいる演奏事例は極めて少ないですので
そういう意味では、もう少し高い評価を出してあげてもいいんじゃないのかな・・・と
思ってしまいました。
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さて、ここから先は、このパーシケッティーの「吹奏楽のための仮面舞踏会」について記した過去記事を
一部転記したいと思います。
なぜかって・・・?
それは・・・プログラム18番の花輪高校と全く同じ理由なのですけど
歴史に埋もれがちな「知る人ぞ知る名曲」を誰か一人でもいいから知って欲しい・・・という私の願いからなのでありますので、
何卒過去記事の転載はご容赦頂ければ幸いであります。
→ここから転記開始・・・・
「仮面舞踏会」というと、日本人にはあまり馴染みがない分野なのかもしれませんけど、
クラシック音楽の上ではヴェルディーの歌劇「仮面舞踏会」が少しは知られているのかも
しれませんね。
自分自身の勝手な感覚なのですけど、
「仮面」というと、
本来自分が有しているキャラを隠して、本来自分が有していないキャラを意図的に演じる事が
出来るというような感じがします。
自分が元々有しているキャラを隠蔽し、別のキャラを演じる事で
何か「今までの自分とは違ったもの」を見出してみたいという意図が多少はあるのかもしれませんよね。
何やら「怪しい→妖しい」領域と言う感じもあります。
これが「仮面舞踏会」というと、
何か妖しげな男女の出会いの場という感じもありますね・・・
私、実は今まで生涯で「お見合い」という経験をした事が一度もないのですけど、
そうした男女の最初の出会いの場が「仮面舞踏会」みたいに、お互いの顔・身分・素性を全て
隠した上で、「演じたキャラ」で出会いの場に臨むというのも
何だか面白い感じはあります・・・
吹奏楽の中で、邦人作品を含めてみると「仮面」を取り扱った作品と言うと
何があるのかな・・・
それ程数が多い訳ではありませんが、
〇マクベス/マスク
〇大栗裕/仮面幻想
〇小山清茂/交響組曲「能面」といった作品が思い当ります。
だけど自分にとってはパーシケッティー作曲の吹奏楽のための「仮面舞踏会」が
やはり一番大好きな曲ですね。
このパーシケッティーの吹奏楽のための「仮面舞踏会」は、正直とても難解な曲だと思います。
何がメロディーラインで、何を言いたい曲なのか、それを明確に伝える事は
大変難しいようにも思えます。
例えばこの曲を知らない人100人にこの曲をいきなり聴いてもらったら
恐らく97~99人の方は
「よく分からない・・・」・「訳がわからない・・・」という印象を持たれそうな気がします。
だけど、私、この曲、ホント大好きなんですよね・・・
何だろう・・・この曲の魅力って・・・
やはりその「素性を隠す」とか「妖しげな雰囲気」なのかな・・・・??
拍子は変拍子ばかりだし、不協和音が多いし、メロディーラインがよく分からないし
一見聴くと確かに「訳がわからん曲」なのかもしれません。
だけど、くどいようですけど、その「妖しげな感覚」が本当に魅力的なのですよね・・・
この曲は、6小節程度の短い「主題」の提示とそれに続く10の変奏、そしてラストの劇的なコーダに
よって構成されていますので
見方によっては一つの変奏曲と言えるのかもしれません。
出だしの劇的で不協和音に満ちた短い序奏にはじまり、
不安げなトランペットと低音セクションが何やら不気味な感じを演出する第一変奏、
細かく動く打楽器をベースに不気味に激しく展開されていく第二・第三変奏を経て
妖しげなオーボエのソロから開始される第四変奏へと展開し、一旦激しく盛り上がる第五変奏へと
続いていきます。
そしてユーフォニウムのやはり不安げなソロとかミュートを付けたトランペットの哀愁溢れるソロへと
つながる第六変奏になるのですけど、この部分のアルトサックスの何やら本当に妖しいリズムの支えと
いかにも「冷涼感」溢れる木管セクションの美しい響きは
本当に背筋がぞっとするほどの「感銘度」があります。
そして第七~第十変奏は、打楽器・金管楽器が大活躍し、
特にシロフォン・トムトムの響きが極めて印象的です。
そしてこの激しく盛り上がる変奏を経て、ラストのコーダまで一気に曲が展開していき
華麗に曲が閉じられていきます。
全体的には、「難解」・「訳が分からない」という印象が強いのですけど、
言葉にできないほどなにやら「妖しい雰囲気」とソロ楽器の扱い方の巧みさは
本当に上手いと思います。
確かに分かりにくい曲なのですけど
分かる人にはたまらん・・・という感じの曲なのかもしれません。
この曲は、吹奏楽コンクールではこれまでに三回全国大会で演奏されています。
一番最初が1973年の神奈川大学、二度目が(上記の)1980年の名古屋電気、三度目が同年のヤマハ東京・・・
神奈川大学は小澤先生着任前の時代の演奏ですけど、悪くはありませんし、曲は無難に
消化できています。
ま、あまり感銘度はないけど・・・
名古屋電気に関しては上記の通りです。
この三つの中ではヤマハ東京が一番よい仕上がりだと思います。
この頃の職場の部は、金賞以外はレコード化されない為
仕方が無いので、私はわざわざトラヤ(1990年に倒産・・・)にカスタムテープを発注し、幸いにして
このチームの課題曲・自由曲を聴くことが出来ました・・・
名古屋電気に比べてカットの頻度が短いせいもあり、この曲本来の魅力がかなりよく発揮されていると
思います。特にアルトサックスの響きが実に秀逸だと思います。
この曲は、フェネル指揮/東京佼成の素晴らしい録音が最高なのですけど
自分としては、ハンスバーガー指揮/イーストマンウインドを強くお勧めしたいですね。
だけどこのハンスバーガー指揮の演奏は残念ながらいまだにCD化されていません・・・
1987年にパーシケッティーが逝去された際、
日曜の朝のFMで放送された「ブラスのひびき」にて「追悼 パーシケッティー」の特集があり
ここでハンスバーガー指揮での「仮面舞踏会」が放送されていました。
この時、カセットテープにて録音出来て良かったと思います。
この演奏はテープが擦り切れるまで何度も聴いたものですけど、
その演奏レベルの高さ・何かを確実に伝える感銘度の高さ・音楽的表現の高さは
本当に素晴らしいものがありました。
何とかこの演奏、CD化されないかな・・・
この曲とこの演奏がこのまんま埋もれてしまうには勿体ない感じもありますね・・・・
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ハンスバーガー指揮/イーストマンウインドの演奏ですが、ブラスの響きと同じ音源かどうかは分かりませんがCD化されてます。
アメリカン・ミュージック・フォー・シンフォニック・ウィンズというタイトルです
ハートレーのシンフォニア第4番とダールのシンフォニエッタ収録という貴重な音源です