21.基町高校
D/リシルド序曲(パレ)
そう言えば、最近というか・・・ここ何十年も全国大会ではパレのリシルド序曲は演奏されていないですよね。
支部大会とか県大会ではたまーーにですけど、この懐かしい曲をお目にかかれる事もあったりするのですけど
全国大会では1989年の広島大学以降どのチームも演奏していないですね。
ま・・・だけどそれも仕方がないのかも・・・・
曲があまりにも「地味」で単調ですから・・・
この曲に関しては、私も申し訳ないのですけど
「この曲の一体どこが面白いのだろう・・」という感じはあります。
そうですね・・・地味すぎてあんまり印象に残らない曲です。
だけど、この曲、1960年代~70年代の吹奏楽コンクールにおいては、ある意味外すことが出来ない曲でもあり、
今津中学校・尼崎吹奏楽団・出雲吹奏楽団・銚子商業・淀川工業・湊中学校・石田中学校など
数多くの名門チームがこの曲を自由曲に選んで全国大会に臨んでいますからね。
そうですね・・・
ま、確かに分かりやすい曲でシンプルでいい曲だとは思うのですけど
なんか全然印象に残らない曲なんですよね・・・私にとっては・・・
導入部のゆったりとした展開、木管の躍動感溢れる中間~後半、ラストのコラール風な歌い上げ、
決して悪い曲ではないのですけど
「地味」という印象が大変強いです。
ま・・・多分・・・ある意味「スルメイカ」に近い感覚なのかな・・・
噛めば噛むほど味わいが出てくる曲という感じなのかもしれないです。
余談ですけど、私が高校の頃、上級生の一人がなぜか知りませんけど
ジールマンの「チェルシー組曲」というあまりにもマイナー過ぎて知る人ぞ知る作品が大好きな人がいて
その人が指揮者も担当されていましたので
よーくその人から
「このチェルシー組曲とパレのリシルド組曲みたいな渋い曲が分からん奴には
吹奏楽・・・いや音楽を語る資格はない!!」とやたら息巻いていましたけど
ま・・・その意味では・・・
私なんか・・・いまでに吹奏楽を語る資格が無いのかもしれないですよね・・・苦笑・・
ともかく・・・パレのリシルド序曲とはそういうかなり「地味」な曲なのです。
そうですね・・・
最近の吹奏楽コンクールのスミスの「ダンス・フォラトゥーラ」とかバーンズの交響曲第3番とかスパークの宇宙の音楽等の
あのあまりにも華麗なサウンドに耳が慣れてしまうと
このリシルド序曲を現役の高校生たちが聴いても
「なに、この単調な曲は・・・・?? これってなにかの練習曲・・??」と思ってしまうのかもしれないですよね・・
パレという方は、フランスのパリ・ギャルド吹奏楽団の第4代目指揮者を務められ、
ベルリオーズの「幻想交響曲」~Ⅴ.ワルプルギスの夜の夢の編曲者としても一時期名が知られていたと
思います。
前振りが長くなってしまいました・・・
1980年の基町高校の演奏ですけど、一つ興味深い点があります。
このチームは、ロッシーニ/タンクレディ序曲とかシベリウスのカレリヤ組曲とかゴセックの古典序曲みたいな
吹奏楽コンクールとしてはあまりにも地味すぎる曲を自由曲に選び、それを大変丁寧に誠実に控えめに知的に
演奏する傾向が強く
人によってはそうした基町高校の演奏スタイルを「基町トーン」と評する人もいましたけど
それは大変よく分かりますね。
その基町トーンが遺憾なく発揮された素晴らしい名演こそが、あの1981年のカテルの序曲「ハ長調」なのだと
思います。
このチームの音楽って本当に温かいものがありましたよね。
指揮者の増広先生という吹奏楽界の長老・・・というのか大ベテラン指揮者の先生のいかにも「温かい手作り音楽」
という雰囲気が伝わってきましたし、
そこから聴こえてくる音楽は・・・
いかにも・・おじいちゃんが孫をあやす時の子守唄みたいな「優しさ」に包まれていたような気もします。
個人的には・・・・増広先生の勇退時の最後の普門館となってしまった
1982年のニコライの歌劇「ウインザーの陽気な女房たち」序曲の温かみのある優しいサウンドはとっても
大好きでしたっ!!
ま・・・増広先生=基町の一つ前の演奏が
市立川口のあの伝説的な演奏・・・・「無言の変革」~そこに人の影は無かったでしたので・・・・
あれはちと・・・気の毒な感じはありましたね・・・
だけど・・・その点はさすがにベテラン先生!!
市立川口のあのあまりにも凄まじい「猛毒」をこの基町の温かい音楽で持って完全に普門館の空気を
「中和」していたような感じもありました・・・
ま・・こうした温かい音楽こそが「基町トーン」なのですけど、前述の「一つ興味深い点」というのは
この年に限って、
なぜか、このチームは・・・そして増広先生はこうした自らが築いてきた「基町トーン」を打破しようとする試みに
挑んでいます。
ま・・その辺りは、当時の「日本の吹奏楽」というLPの裏ジャケットに当時の出場チームの出演者のコメントが
記載されているのですけど
その出演者のコメントとしてはっきり明記されていたのが今でも大変印象的です。
そのせいか・・・この年の基町は、例年に比べると確かに・・「少し粗いな・・・」という印象があります。
課題曲D/オーバー・ザ・ギャラクシーですけど、こういう弾けるポップな曲は、基町みたいな真面目さを一つの
売り物にしている学校のサウンドには今一つ合わなかったような感じもあります。
聴いていて、上手いんだけど音楽が固いんだよな・・・みたいな雰囲気があり、
特に・・・ハイハットシンバルとかトムトムはもう少し弾け飛んでもいいと思います。
トムトムの音が唐突に浮かび上がってくるようにも聴こえるので、正直違和感があったりもします。
音は大変クリアで綺麗ですね。
自由曲は、そうですね・・・・
一言で言うと・・・・
地味で単調なこの曲に無理やり「盛り上がり」を作ろうとした不自然さみたいなものを感じてしまいます。
そして全体的に・・・特に珍しく金管セクションが粗い・・・
そのせいか、全体的な印象は・・・
この異常にレヴェルが高い1980年の高校の部においては、大変うすいですね・・・
こういう地味な曲は、やはり従来の「基町トーン」を受け継いで演奏した方がよかったようにも感じられますし
その点で大変勿体無い演奏とも言えます。
ま・・もっともこうした路線はこの年だけで終わり、
翌年は・・・前述の通りカテルの序曲「ハ長調」という大変素晴らしい名演を後世の私達に
残してくれています。
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