14.福岡工大付属高校
D/喜遊曲「踊る行列」(増田宏三)
このチームの一つ前の演奏チームが秋田南の三善晃/交響三章、一つ後の演奏が淀川工業の
大栗裕/大阪俗謡による幻想曲という事で、
偶然にも「邦人作品」が3チーム続けての演奏という事になります。
邦人作品が自由曲として選ばれる事自体が「少し珍しい・・」という時代でしたので、こういう3チーム連続邦人作品の演奏
というのは当時としては珍しい事だったのかもしれないですね。
ま・・邦人作品が大人気で全国大会の自由曲の半数近くが邦人作品という昨今のコンクール事情という視点で
立ってしまうと
「そんなの別に珍しい事でもなんでもないじゃん・・」という事になるとは思いますが・・・
だけど1970年代~80年代前半の吹奏楽コンクールなんて
「邦人作品」というと、兼田敏・保科洋・藤田玄播・小山清茂・大栗裕あたりがかろうじて・・・
「ま・・・邦人作品の中では演奏される部類なのかな・・・」と認知されている状況でしたので、
それを考えるとこの年の3連続邦人作品というのは、中々興味深いものがあると思います。
しかも・・・!!
その邦人作品を選んだ3チームがそれぞれ全て素晴らしい演奏を後世に残してくれていて
この演奏は今現在の視点・感覚で聴いても
全く色褪せてはいないと思います。
あくまで・・・
私の個人的な見解ですけど
三善晃の「交響三章~第三楽章」に関しては、あれだけ多くのチームがその後この曲を自由曲に選びながらも
この年、1980年の秋田南を超える演奏はいまだに存在していないと思いますし
(肉薄しているのは・・・1989年の習志野と96年の常総学院、2007年の神奈川大学あたりかな・・・)
大栗裕の「大阪俗謡による幻想曲」は、その後丸谷先生が「いい加減マンネリ!!」と言われ続けながらも
3回に一回はこの曲を自由曲に選んでいるにも関わらず
丸谷先生自身が1980年度の自身のこの演奏の壁をいまだに超えられていないような感じすらあります。
さてさて・・・・この秋田南と淀川工業に挟まれる形になっているのですけど
この福岡工大付属の演奏も大変素晴らしいものがあると思います。
ま・・・審査結果としては、秋田南と淀川工業は金賞に輝いているのですけど
福岡工大付属は残念ながら銀賞に留まっています。
だけどな・・・・
あくまで個人的な見解ですけど、福岡工大付属の銀賞は少し厳しすぎる様な感じもあります。
正直・・・東海大学第四・中標津が金にするなら、この福岡工大付属とか東海大学第一とか名電が
金の方が相応しいようにも思ったりもします。
ま・・・こうしたコンクールは水物ですからね・・・・
課題曲D/オーバー・ザ・ギャラクシーですけど、
やはり天理高校のあの高度なテクニックの演奏の方に目が行きがちなのだと思いますけど
私個人の好みとしては福岡工大付属の方が大好きです。
そうですね・・・
天理は全体として課題曲は音が硬質ですし、トランペットの一番があまり響いてこないのが勿体無い感じがありますし
音楽全体が大変人工的な香りが漂います。
一方福岡工大付属の方は、音楽が大変温かくて正攻法のまっすぐな音楽を展開していると思います。
とても素直な響かせ方&解釈をしていて、
聴いていて大変心地よいです。
私個人としては、全国大会としては全部門を通して最高の課題曲Dの演奏だったと思っています。
自由曲も大変面白いですよね・・・・
「喜遊曲」というと・・・モーツアルトとかR.シュトラウスの「ディヴェルティメント」を思い起こす方も多いと思いますが、
この増田宏三の「喜遊曲」は
いかにも・・・和風な喜遊曲だと思います。
そうですね・・・感覚としては・・・・兼田敏の「シンフォニックバンドのための交響的音頭」の世界に近いのかな・・・?
ま・・・兼田敏みたいな「泥臭さ」はあんまりなく
どちらかというと洗練されているような感覚もあったりします。
ま・・・兼田敏は・・・あれは・・・「辺境の地の田舎鄙びた盆踊り」という感じですね・・・・
増田宏三の「踊る喜遊曲」は、チャンチキとか和太鼓等の和楽器を曲の最初から最後までかなり効果的に使用し
曲としての面白さは十分アピール出来ていたと思いますし、
ユーフォニアムとかオーボエ等の少しおどけたようなソロも大変ユニークなものがあったと思います。
だけど・・・
この曲の一つの「欠点」とも言えると思うのですけど
曲としての「変化」に欠ける事があると思います。
そう・・・・最初から最後まで和の打楽器という特殊楽器の音の響きに頼り過ぎているような感じもあり、
曲の速度の変化があんまりなく、
ドラマティックな部分や盛り上がりがほとんどなく
終始一貫して「平和なのほほーーーん」とした世界を描いていますので
必然的に復温工大付属の演奏も、
確かに上手いし、聴かせどころも心得ているし、ソロも上手いし、全体の響きも申し分ないしという印象はあるのだけど
やはり・・・
「ワンパターン」とか「変化に乏しい」・「平坦」みたいな印象も与えてしまいがちだったと思います。
そのあたりがこの年は銀賞に留まってしまった理由と言えるのかもしれませんし、そうではないのかもしれないし
正直・・何とも言えません。
だけど私個人としては、聴いていて大変面白いと思いますし、
特に・・・ラスト近くで
打楽器のみの掛け合いの部分が数小節続くのですけど、それ以降の全体のエキサィティング振りは
中々聴き応えがあると思います。
そうですね・・・確かに評価は分かれる演奏かもしれないですけど、私は大好きな演奏の一つです。
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