6.富山商業
D/舞踏組曲(バルトーク)
富山商業というと・・・そうですね・・どうしてもいまだに「坪島先生」というイメージが大変強いですね・・・
そして坪島先生と言うとやっぱり・・あの「ロメオとジュリエット」の素晴らしい演奏が大変印象的です!!
ロメジュリという曲自体、富山商業が演奏する以前は、駒澤大学・逗子開成などのように自由曲として
演奏はされていましたけど、今日のような吹奏楽コンクールの定番曲の一つとして定着したのは
何と言っても富山商業の1982年のあの名演の影響が大変大きいようにも思えます。
NHK交響楽団の元トロンボーン奏者の秋山先生も、そういえばかつてはこの坪島先生の教え子だったそうですね。
秋山先生のエッセイを以前ちらっと読んだ際、
この坪島先生の事も色々と触れていて、
やっぱりこういう師弟の絆というものは大きいもんだな・・と思ったものです。
坪島先生がご逝去される直前にも秋山先生はお見舞いに来られていて、既に坪島先生は言葉も中々
話せない状態だったそうですけど、秋山先生の手をぎゅーーーっと握りしめていて最後の最後まで
色々と気にかけていたとの事です・・
1970年代までは北陸代表は1チームしか全国大会に進めない為、富山商業と高岡商業の一つの椅子を巡っての
凌ぎ合いは大変な時代もあったかもしれませんけど、
1978年に富山商は久しぶりに全国大会金賞を受賞しながらも翌年の79年は、コンクール自体に出場を
していないみたいです・・
果たしてこの1年間に何があったのかな・・・
なんか・・・「私、気になります・・」という感じですね・・
さてさて、1980年以降は北陸支部は代表枠が2つになり、富山商業も高岡商業も同時に全国大会に行けるように
なったのですけど、
そんな中の演奏でした。
そうですね・・・・
課題曲も自由曲も全体的な水準は決して低くはないと思います。
だけどなんか気になるのは、ピッチがいくぶん不安定に感じる箇所がある事と
特に自由曲で感じるのですけど、サウンドが少しもや~っとしていて「濁り」を感じる箇所がある点ですね。
この時代になると、そういう技術的な詰めの甘さがあると「コンクールでの高い評価」というものは中々受けにくい時代に
入っていましたので、
この年の富山商業の銀賞は・・・正直妥当だと思いますし、
正直・・・もしもこの年、例年通りの金銀銅の相対評価を厳格にしていたら銅賞になっていた可能性すらあると
思います。
それだけ・・・この年は全体・・・というか金賞と上位銀賞チームのレヴェルが驚異的に上がっていたという事
なのだと思います。
課題曲は、大変落ち着いたテンポ設定で特に中間部の優雅な感じが実にいいな・・・と思ったのですけど
半面・・・ピッチの不安定さが特に前半部分で目に付くところがありましたし、
金管・・・特にトランペットの音が全体に少し溶け込んでいないのかな・・とも感じる点もありました。
自由曲のバルトーク/舞踏組曲ですけど、
原曲は、ゆるやかな低音から開始される所を、いきなり第二曲のトロンボーンの強烈なグリッサンドから
開始したせいもあるのですけど、
なんか・・・何の前振りも予告も無く唐突に激しい部分が始まったな・・・みたいな「違和感」を感じたのも事実です。
バルトークらしい「泥臭さ」はうまく表現していたと思いますが
その泥臭さが・・そうですね・・なんか全体として「モヤモヤしている」というのか「もっさりしている」みたいな
なんかすっきりしない印象もあり、
その点がこの年の2年後のあの伝説的名演/ロメオとジュリエットのあの素晴らしい切れ味の世界との
違いなのかな・・とも思ったりもします。
全体的にサウンドというか音自体に「透明感」が少し足りないのかな・・という感じもありました。
ま・・・全体としては「素朴」という雰囲気は出してはいたと思います。
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せっかくですので、バルトークの「舞踏組曲」についても関連という事で少し書いてみると・・・・
この曲が初めて吹奏楽コンクール全国大会で演奏されたのは、
1978年の駒澤大学、そして次に演奏したのが80年の富山商業なのですけど
(両校ともに上埜孝先生のアレンジを使用しているため、上記の通り、唐突に第二曲のトロンボーングリッサンドから
開始しているのが何か妙に面白い・・・)
それ以降は、この曲は20年近くもほとんど演奏される事は無かったのですけど
なぜか1996年にこの曲がいきなりブレイクし、
多くのチームが支部大会・全国大会で演奏するようになりました。
何というのかな・・・
この曲の何とも言えない泥臭さ、民族的な香りが日本人の感覚にも何かマッチするものが
あったのかもしれませんよね。
タイトルに「舞踏」とついていますけど、特段「バレエ」とは関係はありません。
あくまでコンサートで聴くための楽曲です。
バルトークの独特の民族的なフレーズで彩られた個性的な現代風の作品なのですけど、
親しみやすく聴いてて「難しい」という感覚は全く無いと思います。
この曲の作曲経緯は、
ハンガリーの首都・ブタペストの市制50周年記念として委嘱されたもので、
この時の他の作曲家への委嘱作品として
コダーイの「ハンガリー詩編」があれます。
それにしてもこの曲は泥臭い・・・・
というか「大地の香り」がプンプンと漂ってきます。
この曲は、五つの舞曲と終曲から構成され、6曲にタイトルは一切付けられていません。
また「組曲」となってはいますが、
各曲は全て続けて演奏されるようになっていますので
一つの曲が終わるごとに少し「間」が入るという事はないのですけど
その分音楽的な密度が高いというか
一つの曲が終わって何か緊張感が途切れるという事は、この組曲に限っては皆無だと
思います。
この曲は冒頭だけは少しとっつきにくいかも・・・・
冒頭はいきなりピアノの低音のグリッサンドと少し硬い表情のファゴットソロで開始されます。
第二曲は、いきなりトロンボーンのグリッサンドで開始され、
聴くものを少し驚かせます。
私自身は、この曲は吹奏楽コンクールでは何度も耳にしましたけど
オケの演奏会で聴いたのは実は一度だけ・・・・
(確か日本フィルの定期だったような記憶が・・・・)
その際も、この第二曲のトロンボーンのグリッサンドは大変印象に残りましたけど、
視覚的にトロンボーン奏者がああやって一生懸命スライドを上下させている光景は
あまり実例がないだけにとても印象に残っています。
(トロンボーンの派手なグリッサンドの例としては、他に、コダーイの
組曲「ハーリ・ヤーノシュ」~Ⅳ.合戦とナポレオンの敗北がとても印象深いですね・・・)
この第二曲は、何かロシアの「コザックダンス」にちかいようなものがあるかな・・・・??
第三曲は、とても軽快で実にいいですね!!
特にクラリネットのソロがとてもノリノリで楽しいですし、
六曲の中では一番「ダンス」っぼい感じもします。
この第三曲の終わらせ方は、いかにも「曲が終わった・・・」みたいな感じがしますので
うっかり聴くと、この第三曲の終わりと同時に
拍手をしそうな人も出そうな雰囲気です・・・・(笑)
第四曲は一転して静粛な感じになるのですけど、
部分的におどろおどろしい雰囲気も漂わせ、何か「不気味」な感じも演出しています。
第五曲は、第四曲の不気味さに引きずられた様な感じと終曲に向けての下準備という
感じもあり、何か両曲を繋ぐ「架け橋」みたいな役割もあると思います。
そして終曲は、華麗に盛り上がり
これまでの舞曲が走馬灯のように回想されながら賑やかな祝典的な音楽を展開し、
ラストはズドンと曲が閉じられます。
演奏時間は15分程度と短くも無く長くも無くという感じですけど
何か日本人にとっては何か「懐かしいような感覚」もあるし、ホント、泥臭くて楽しい曲でも
ありますので、
バルトークの入門編としては意外と最適なのかもしれません。
バルトークというと、難解というイメージをついつい持たれてしまうと思いますけど
この曲とか「ルーマニア民族舞曲」あたりは
誰からも愛される資格を持っているのかもしれませんよね。
この曲をCDで聴く場合、私の一番のお勧めは
定盤と言えるのかもしれませんけど、
やはりショルテイ指揮/シカゴ響ですね・・・
この演奏は凄すぎる・・・・
カップリングも「中国の不思議な役人」ですので
まさに無敵ですね・・・・
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