管弦楽の作品を吹奏楽としてアレンジされる事は全然珍しくないのですけど
その逆のパターン・・・・
吹奏楽オリジナル曲を管弦楽曲にアレンジしてしまうという事も
たまーにですけどあったりします。
その代表的な例が伊藤康英の吹奏楽のための交響詩「ぐるりよざ」を作曲者本人の手で
管弦楽ヴァージョンにアレンジしたケースなのかな・・・?
他にもそうですね・・・
K.フーサの「プラハのための音楽1968」とか「この地球を神と崇める」なんていう素晴らしい古典的名曲を
管弦楽作品としてアレンジした事例もありましたね。
「プラハのための音楽1968」の管弦楽版は、マルコポーロから出ていたCDを持っているのですけど
この演奏・・・申し訳ないけどスカですね・・・
聴いていて全然何も伝わるものが無いし、淡々と無機質に音楽が進行するだけ・・・という印象があります。
「この地球を神と崇める」の管弦楽版は、確か数年前に下野竜也さんが振られていましたね。
熱い指揮者の下野さんですので、これは是非とも生で聴いてみたかったです。
さてさて・・・そうした吹奏楽作品を管弦楽にアレンジした最初の曲って何だろう・・・?
正直この回答は分かりませんけど、その先駆者的ケースなのが
ヴォーン=ウィリアムズの「イギリス民謡組曲」なのかもしれませんよね。
この曲は1923年に吹奏楽作品として作曲され、確か・・・翌年の1924年にジェイコブによって管弦楽曲化されたと
記憶しています。
でもこの「イギリス民謡組曲」ですけど、本当に素晴らしい名曲ですよね!!
曲の至る所にどこかで聴いたことがあるような親しみやすいメロディーがちりばめられていて
聴いているだけで
別に私はイギリス人ではないのですけど「懐かしいな・・・」みたいな感覚になるからとても不思議な気がします。
あくまで個人的な意見なのですけど
古典的な吹奏楽オリジナル作品の名曲中の名曲作品を三つあげなさいと言われたら迷う事なく
リードのアルメニアンダンスパートⅠとホルストの吹奏楽のための第一組曲と
そして・・・このヴォーン=ウィリアムズのイギリス民謡組曲を推したいと思います。
このイギリス民謡組曲ですけど、下記の三曲から構成されています。
Ⅰ.行進曲「今度の日曜日で17才」
Ⅱ.間奏曲「私の素敵な人」
Ⅲ.行進曲「サマーセットからの歌」
実はこの組曲は元々は四曲から構成されていて、四曲の中の第二曲である行進曲「海の歌」はその後
この組曲から分離され
独立した曲になったのですけど
逆にその方がよかったかも・・・
だって三楽章構成で急-緩-急という現行の構成の方が音楽としてのまとまりがあるような気がしますね。
それに行進曲「海の歌」はかなり元気があるマーチですから
現行の「イギリス民謡組曲」のあのしっとりとした感じの中に組み込んでしまうと、もしかして
違和感があるような感じもしますね。
この組曲ですけど、大編成をイメージしたような曲ではなくて元々30人前後の編成を前提にして
作曲されています。
打楽器もティンパニ・大太鼓・シンバル・小太鼓・トライアングルのみですので、
ま・・確かに最近の吹奏楽オリジナル作品のあの華麗なる響きに耳が慣れてしまうと
とてつもなく地味に聴こえてしまうのかもしれませんけど
あのほのぼのとした地味な感じが実にたまらないと思います!!
第一曲 行進曲「今度の日曜日で私は17才」
第二曲 間奏曲「私の素敵な人」
第三曲 行進曲「サマーセットからの歌」
全体的に生き生きとした可愛らしい小品なのですが、民謡をベースにしてあるせいか
何だかとても「懐かしい」という香りもします。
特に第二曲の後半からのしみじみとしたメロディーは少し泣けてくる感じもします。
第三曲のマーチも本当に気品さと愛くるしい感じがマッチしていて
素晴らしいと思います。
組曲「惑星」で有名なホルストとヴォーン=ウィリアムズは友人関係だったという事ですが、
そのせいなのかわかりませんが、
イギリス民謡組曲の第三曲「サマーセットからの歌」のメロディーが
ホルストの「サマーセット狂詩曲」にも使用されていたりします。
ま、これは民謡をベースにしているのだから、どちらかがどちらかの作風に
影響を与えたとか、主題を拝借したという訳ではないのですが、
何となく両者の親交振りが垣間見えるような気もします。
ところで、ヴォーン=ウィリアムズって作曲家は
若い頃は、ラヴェルにも師事したことがあるそうですね。
これは少々意外でした。
だって作風が全く異なる人同士ですし・・・
事実ラヴェル自身、ヴォーン=ウィリアムズを評して
「自分の弟子の中で唯一自分の作風の影響を受けなかった人」としていますが、
これはとても面白いエピソードですね。
確かに・・・ラヴェルとヴォーン=ウイリアムズの作風って全然共通点と言うか接点がありそうも
無いですからね・・
ま・・ヴォーン=ウィリアムス自身は、「ラヴェルのように書きたくとも、そんなセンスも才能も自分には全く
無かった・・・」とトホホ・・・・なコメントを後日残していますけどね・・
結果的にヴォーン=ウィリアムズは、自分の生きる道として「民謡」をテーマに
していますが、これは正解だったと思いますし、その選択こそが
ヴォーン=ウィリアムスを後世に残る作曲家としたのでしょうね。
この作曲家の交響曲は、正直あまり演奏会では聴いた事がないのですが、
交響曲第一番「海の交響曲」は日本フィルで聴いた事があります。
出だしの合唱のインパクトが強すぎて、後の展開は正直あまり印象にないです。
個人的には、晩年の作品となりますが、南極交響曲の次の
交響曲第8番が、分り易さとパズルを解くような感覚が混ざったような感覚の曲であり
結構好きです。
さてさて・・・この「イギリス民謡組曲」なのですけど、どちらかと言うと吹奏楽原典版の方が
親しみがあるような気もするのですけど
管弦楽ヴァージョンの方も中々素晴らしいものがあると思います。
全体的な印象は・・・そうですね・・・単純に比較してみても大きく際立った差は無いと思いますが
例えば第Ⅱ曲において吹奏楽版ではトランペットにソロの役割を与えているのに
管弦楽版ではクラリネットが担当という風に幾分のニュアンスの差はあるのですけど
どちらも「素朴」な感じは漂っています。
私は吹奏楽版も管弦楽版も両方とも大好きです。
ちなみに・・・
管弦楽版としては、マリナー指揮/アカデミー室内管弦楽団の演奏が大変素朴な味わいがあり
同時に録音も優れているので
お勧めしたいです。
- 関連記事
-
スポンサーサイト
音源は忘れましたが、初めて聴いたときは思わず「(」゚ロ゚)」(」゚ロ゚)」(」゚ロ゚)」オオオオオッッッ」となってしまいましたw
この曲はご存知の通り1970年度の高校・大学・職場・一般部門の課題曲なんですが、実はこの曲、課題曲に選ばれる前に、既に何度も吹奏楽コンクールの「自由曲」として演奏されていたんです。
他の方のブログで紹介されていたんですが、1970年以前に支部大会以上の大会だけで11回演奏されていたほどの人気曲だったようです。
鈴木清の世界と同様、是非入手してみたい音源の1つです。