8.習志野高校
D/吹奏楽のための交響的詩曲「地底」(名取吾朗)
改めてですけど・・・
この市立習志野高校ってすごい学校ですよね・・・!! ある意味「生きている伝説」を継続中という感じもあります。
ま、同じような事は、例えば・・・淀川工科の丸谷先生とか東海第四の井田先生にも同じ事は
言えるとは思いますけどね・・・
何がすごいかと言うと、ま・・色々とあるのですけど
やはり何と言っても「サウンドの洗練さ」が素晴らしいですね!!
これは新妻先生時代も現在の石津谷先生指揮の時も同じと言うのが驚異的ですね・・・
石津谷先生に指揮者が交代して以降も、伝統の音色の洗練さに加えて指揮者の「個性+アクの強さ」も
加わり、更に「伝説」が毎年毎年進化しているような所がとにかく凄いと思いますね。
石津谷先生は、1992年の習志野第四中時代の「シンフォニエッタ」の頃より、
「すごい個性溢れる演奏となんて斬新なアレンジ!!」と感心していたのですけど、
そうした持ち味を遺憾なく高校の部でも発揮されているのは、とにかくお見事ですよね!!
こうした伝統校のバトンを受け継ぐという事はも並大抵の重圧ではないと思うのですけど、
それをはねのけ、更にご自身の「個性」を発揮されているのはそう易々と出来る事ではないだけに、
やはりその偉大さも感じてしまいますね・・
今年、2015年も既に全国大会への切符を手にされていますけど
自由曲・・・
いやいや驚きました・・・!!
まさか・・リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」という1970年代の中学の部での王道派的選曲で
くるとは・・・・
この曲は、あまりにも正統派すぎて最近の吹奏楽コンクールではあまり演奏されていないだけに
どういう新しい息吹を吹き込んでくれるのかとても楽しみです。
ちなみにこの曲を高校の部で演奏されるのは、1982年の尼崎西以来実に33年振りです!!
あ・・・いけない・・・
ここの記事は、1984年の習志野でしたね・・・
だけど、この年の習志野の選曲は、今にして思うとかなり異色でしたね・・・・
基本的に習志野高校は、自由曲はアレンジ系がほとんどです。
新妻先生時代は、フランス系がメイン
(やっぱり・・1987年の「ダフニスとクロエ」は素晴らしい名演ですね!!)
石津谷先生時代はロシア系がメインで、
いわゆる「吹奏楽オリジナル作品」は、まず演奏されません。
その数少ない例外が、
1982年のバーンズの「祈りとトッカータ」なのですけど、
あの演奏・・・・今現在の視点で聴くと驚き以外の何者でも無いですよ・・・・
だって・・あの習志野がこうしたバリバリのオリジナル作品を音色かなり荒めにバリバリと雑に鳴らし、
重低音を地響きが立ちそうなほど豪快に鳴らし、
これがあの「フランスものを洗練に繊細に扱っているチームと本当に同じなのか・・・」と感じさせるくらい
意外極まりない男気溢れる演奏を聴かせてくれています。
そして・・・・もう一つの数少ない例外が、1984年の名取吾朗の邦人オリジナル作品の
吹奏楽のための交響的詩曲「地底」なのです。
この曲・・・・
多分・・知る人ぞ知る曲になってしまうのかな・・・
全国大会で演奏されたのは、1976年の富田中とこの年の習志野のみで、
支部大会でも実は、1987年の関東大会で演奏されて以降は、なんと・・・28年近くどこのチームも
演奏していません・・
曲はグレードは中級と書かれていますし、聴いた感じではそれほど技術的な困難な部分はないようにも
思えます。
というか、この年の習志野は課題曲もD/オーバスワンと易しい曲を選んでいますので、
全体的な印象としては、
音楽全体の「表現」を徹底的に深めよう・・そのためには幾分技術的に平易な曲を選び、
とことん音楽的な中身を掘り下げて演奏してみよう・・・みたいな意図は感じたりもします。
課題曲のマーチは、本当に本当に・・丁寧な仕上がりで、疲れることなく聴ける耳に優しいマーチでした。
自由曲の「地底」は、1976年の富田中の演奏を聴いてしまうと
「おぞましい・・・」
「なんか不気味・・・」
「こわい・・・おどろおどろしい・・」
「曲がドロドロしている・・」などのような印象を持たれがちなのですけど
この年の習志野の演奏を聴くと、正直・・・上記のような印象は全く感じられません・・
むしろ・・・
「都会的・・」
「近未来の風景」みたいな富田とはまるで180度異なる感想を抱いてしまうので、
やっぱり・・・音楽は、指揮者の解釈によって全然異なるものだと・・・改めて感じてしまいます。
課題曲もそうでしたけど、この年から既に習志野高校は「洗練・繊細・気品」といった習志野サウンドは
完成の域に達していたと思います。
だから・・
音楽が大変洗練されていて、どの部分を演奏してもサウンドが大変美しく・・・かつデリケートに優しく
響いてきます。
強奏の部分も、サウンドが荒れる事も全く無く自然に響いてきます。
(ホント、マジでこの演奏の2年前にあの豪快で粗野な「祈りとトッカータ」を演奏したチームとは思えないです・・)
この年の演奏で特に印象的だったのは、木管の「しなり」ですね!!
特にクラリネットセクションの美しさとか音のひそやかさは本当に素晴らしかったですし、
この曲が本来有している「おどろおどろしさ」を何て言うのかな・・いかにも和風の「あでやかさとはかなさ」に
変容させていたのは、
とにかくお見事です!!
この曲は、ラスト近くで、トランペットがかなり咆哮し、打楽器の激しさと合せて
まるで「吹奏楽のための神話」の中間部の踊りみたいな雰囲気で終るのですけど、
この部分も「うるさい」という感じは全く無く、むしろ「あでやか!!」という雰囲気がよーーく出ていたと思います。
当時の私としては・・・「これはもう金賞以外絶対にありえないじゃん・・」と予想していたのですけど
結果は銀に終わり、
やはり邦人オリジナル作品を音楽的に深く掘り下げていたにも関わらず銀になった東海大四という事例も
ありましたので、
「やっぱり邦人作品は審査員に嫌われるのかな・・」と感じたものでした・・・
ま・・・最近の吹奏楽コンクールは、当時とは全く逆で邦人オリジナル作品がむしろ主流ですけどね・・・
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名取吾郎氏の吹奏楽のための交響的詩曲「地底」は、正直・・
情報量が圧倒的に少なく、
正直・・私もこの曲の事はあまりよく分かりません・・・
音楽之友社から以前出版されていた本の中の「吹奏楽作品(邦人)総目録」を見ても
この「地底」に関しては・・
「アンサンブル・アカデミーからの委嘱作品、未知の世界「地底」を想像して作曲された、グレード・中級」としか
書かれていません・・・
名取吾郎氏が永眠されて、もう既に数年が経ちますよね。
名取氏の吹奏楽曲ってどちらかというと、陰気で劇的要素が強く、
ネリベルのように、強弱と明暗のコントラストが激しい作曲家という印象があります。
名取氏は、生前何回か吹奏楽コンクールの審査員として見た事がありますし、
たしかどこかの県大会で、審査員代表として講評を述べていたのを耳にしたことがありますが、
作品の印象とは全然異なる、柔和な人柄という印象でした。
後で聞いた話によると、名取氏の陰鬱な音楽の背景には、自身の辛い戦争体験、特に南島での
兵士としての辛い体験がベースにあったとの事です。
名取氏の吹奏楽曲と言うと、色々思い浮かびます。
〇アラベスク(1973年課題曲B)
〇風の黙示録(1990年課題曲B)
〇交響的幻想曲「ポンドック街道の黄昏」
〇永訣の詩
〇アトモスフェア
何となくですけど、名取吾郎氏の作風と市立川口高校と愛工大名電の演奏は
非常に相性が良かったようにも思えます。
アラベスクは、瑞穂青少年吹奏楽団、風の黙示録は、市立柏
ポンドック街道の黄昏は、関東大会銅賞ですけど真岡高校の演奏が
それぞれ印象的です。
永訣の詩は、1984年の市立川口の素晴らしい説得力と
アトモスフェアの名演は、1991年の愛工大名電以上に
1990年の関東大会での市立川口の怒涛の迫力が極めて印象に残っています。
だけど・・・「地底」に関しては、資料も音源もあんまりないですね・・・
この曲は、残念ながら現在では音源化されていません・・・
私は、ワールドレコード社のオリジナルカスタムテープで、
1976年の富田中の演奏と1984年の市立習志野の演奏を何度か聴いた事があります。
この「地底」は一言で言うと、冷たいひんやりとした音楽です。
前半のひそやかさとは対称的に、後半の不気味な迫力と劇的雰囲気には
かなり圧倒されるものはあります。
打楽器もティンパニー・大太鼓・シンバル・ドラ・シロフォーン程度でそれほど多彩ではないし
特殊楽器もほとんど使用されていません。
なのに、この普通の編成で、ここまで特殊な雰囲気が作れるとは
結構不思議だと思います。
ラスト近くのいかにも地底から吹き上がるような音の絵巻はまさに圧巻です。
かなり陰気な音楽なのだけど、
「冷徹さ」という感じではなくて、確かに・・・作曲者のイメージの「未知の世界」みたいな不思議さの方が
強いようにも感じ取れます。
一番不思議に思っていることは
この曲の呼び方です。
1976年の富田中のアナウンスでは、確かにカスタムテープの録音の中では
「じぞこ」と呼ばれていましたけど、
1984年の習志野の演奏のアナウンスは「ちてい」と呼ばれていました。
(もしかしたら私の記憶の間違いなのかも・・・)
結局どちらが正しいのかな・・・??
呼び方すらよく分からず、曲の事もあまりよく分からない・・・
曲自体は一応富田と習志野のコンクールでの演奏は存在しているのですけど、
何か改めて・・・
この曲の「プロの演奏」なんかも是非是非聴いてみたい気持ちはありますね!!
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素晴らしいと思います♪
どこかで読んだんですが、作曲者が「地底の冒険」みたいな
ラジオドラマ(?)を聞いてイメージしたんだとか。
でも最初はタイトルを決めてなくて、初演のときに観客に
タイトルのアンケートを取ったら「地底」が一番だったとか。
それだけ地底のイメージがしっかりしてる曲なんですね。
84年の習志野は銀のトップだったそうです。
習志野のCDの新妻先生のコメントに、課題曲の選曲ミスと
書かれていました。
課題曲の評価がよくなかったんでしょうかね。
確かに僕の習志野のイメージでいうとCのシンフォニエッタ
が一番しっくりきますけど。