4.札幌白石高校
D/序曲「春の猟犬」(A.リード)
前年の「ハムレットへの音楽」が全国大会初出場でしたので、この回が2回目の出場という事になります。
後年の・・・例えば、1990年~94年の栄光の5年連続金賞の偉業を達成した頃のあの貫録に比べると
この頃は・・・さすがに初々しさがあったと思いますね。
前回、この年のプログラムの余白に18歳当時の私の直筆による(?)演奏に関するコメント・メモが
びっしり書き込まれていると記しましたけど、
この札幌白石に関しては、なんかやたらと「チャーミング」・「可愛い」・「生き生きとしている」・「躍動感」という単語が
頻発しています。
同時に、「音が少し生臭い」とか「クラリネットのタンギングの発音が甘いからもたついている印象あり」とも
書かれています。
そうですね・・・
印象としては、決して上手い演奏ではないのですけど、音楽が大変生き生きとしていたのは
大変印象的です。
いかにも・・・「ワンちゃんがあちこちを跳ね回る・・」みたいな光景が見に浮かびそうな感じもありました。
そして表現自体がとっても素直だと思います。
高校生らしい若さがいい意味で溢れた演奏をしていたと思います。
この「春の猟犬」は、吹奏楽コンクールの上では、1982年の福岡工大付属の正統派の演奏と
1988年の野庭高校の少しやり過ぎなんですけどいかにも個性溢れる演奏の
二つが過去演奏の中では双璧と思っているのですけど、
この年の札幌白石の演奏は、丁度その中間地点に位置している演奏のようにも感じられます。
でも当時の自分のメモでも無いのですけど、少し音が生臭く感じるのはなぜなんだろう・・?
原因の一つとして、金管楽器特にトランペットの高音の音域が少し破裂音みたく聴こえる事と
クラリネットがこの当時は少しモタモタしている感じがあり、音の透明さに少し欠いていたからなのかなとも
思ったりもします。
それとまだこの当時は全体のバランスが少し良くないようにも感じられます。
音が客席に向けてストレートにどんどん響いてくるような印象もあり、それが「生臭い」と感じてしまった理由の
一つのような気もします。
だけど全体的にはとにかく気持ちの良い演奏で、このチームの銅賞は少し気の毒のような感じもありました。
翌年は北海道大会でまさかのダメ金でしたけど、翌々年の1986年以降から、このチームの
快進撃が開始されます。
その意味では・・
この年の演奏は、その快進撃に向けての途中経過だったのかもしれませんよね。
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ここから先は、リードのこの「春の猟犬」について
過去記事をベースに少しだけ書かせて頂きたいと思います。
改めて感じる事ですけど、
A.リードの吹奏楽オリジナル作品って本当に素敵な曲が多いですよね。
例えば・・・・
アルメニアンダンス【パートⅠ バートⅡ】、オセロ・ハムレットへの音楽、エルサレム讃歌、
パンチネルロ序曲、エル・カミーノ・レアル、第二組曲「ラティーノ・メキシカーナ」なとなど
ほーんとキリが無いですよね・・・
その中でも8分半程度の曲なのですけど
序曲「春の猟犬」も決して忘れる事が出来ない素晴らしい作品だと思います。
この曲いかにもリードらしい感じが満載で、
まず出だしの「ウキウキとした感じ」がたまらなく素敵ですし、
中間部のうっとりさせられるロマンティックで甘い曲想が本当に堪らないです・・・
曲の構成も
A-B-Aと実にシンブルなのもいいですけど、
あえて少し注文を付けると、もう少しAの部分が長くても良かったような気もします・・・
この曲が日本の吹奏楽コンクールで演奏され始めたのは1982年だと思いますけど
この時の表記は序曲「春の猟犬」となっていましたけど、
1984年の全国大会・高校の部でこの曲を演奏した札幌白石高校のプログラム表記を見てみると
スゥイバーンの詩に基づく管楽器のための序曲「春の猟犬」となっていましたが、
実際はこちらの方が正式タイトルみたいですね。
この序曲は19世紀の詩人A.スウィンバーンが1865年に出版した詩の印象に基づいて
作曲されたらしいのですけど、
その詩とは・・・・
春の猟犬が冬の足音をたどる頃
月の女神が牧場で草原で
暗がりを、風吹く場所を
葉音、雨音で満たす
微笑み隠す唇ほど柔らかな
木々の茂みを陽気に分け入り
追い求める神々の目を逃れ
かの乙女は身を隠す
といった内容のものです。
リードは、この詩から「若さ溢れる快活さ」と「甘美さ・優雅さ」の二つをこの序曲に
託したようです。
6/8拍子を中心とした軽やかな明るいリズムは、「快活さ」を・・・・
そして中間部の4/4拍子の甘いメロディは、「恋という青春の優美さ・甘さ」を
それぞれイメージしたものなのかもしれませんよね。
実際聴いていて、
「こんなに分かり易い曲無いよな・・・」と思わず頷いてしまうくらい実にシンブルな曲です。
分かり易いメロディーに、躍動感と甘さが加わり、形式もA-B-Aと非常にシンプル・・・
ほーんと、「分かり易さ」を絵に描いたような序曲です。
リードって色々な演奏会用序曲を残していますけど
こんなに分かり易くてメロディーラインが魅力的な曲って
意外と少ないような感じも無くは無いのですけど、
個人的にはリードの「序曲」というと、
この春の猟犬と、ジュビラント序曲、そしてパンチネルロ序曲が三大名序曲という
感じもします。
私の高校も定期演奏会でよーくリードを演奏していました。
高校一年の時は、アルメニアンダンスパートⅠとパンチネルロを・・・
高校二年の時に、第二組曲とジュビラント序曲を・・・
(リードの第二組曲の事は、このブログでも確か2013年1月頃にかなりしつこく書いていたような記憶が・・・??)
そして高校3年の、自分にとって最後の定期演奏会では、
是非是非、ハムレットまたはオセロ、それが無理ならばせめて春の猟犬は演奏したいと思っていましたが、
残念ながらボツになってしまいました・・・(泣・・)
アルメパートⅠと第二組曲という大本命を演奏出来たのだから、これ以上望むのは
確かに高望みだったかもしれないけど
せめて「春の猟犬」は演奏してみたかったですね・・・
ま、でも一応この「春の猟犬」は大学で演奏する事は出来たから、ま、それはそれで仕方ないか・・・・
この曲の出だしのウキウキとした感じはまさに「春の陽気」ですね。
吹くだけで聴くだけでもとても「ハッピー」な気持ちになれます。
そして中間部のしっとりとした歌が実に素敵ですね。
徐々に盛り上がっていく感じが実にいいのですけど、その中間部の頂点での
トランペットの高音が実にいいです!!
この部分を聴くだけでも何か胸が「きゅん・・」となってしまいますね・・・・(笑)
再度アレグロの部分に展開した際のトロンボーンのアンサンブルが素敵ですし、
ラスト近くのティンパニーのソロを経てラストの全合奏のffで閉じる感じもまた実に魅力的です。
全体的に楽しいけど実にロマンチックな曲ですね。
パンチネルロの中間部も実にしっとりとした歌がありましたけど、
パンチネルロの場合、多少「哀愁」みたいなものがあったのに対して「春の猟犬」は
実に抒情的でロマンチックというのが二つの序曲の違いかな・・・・
この曲、1980年代~90年代前半までは、コンクールでもかなりの人気曲でしたけど
最近はとんと聴かなくなりましたね・・・・
支部大会でも、A部門(大編成)では中々耳にする機会も無くなっています・・・
こういう名曲は是非、しっかりと受け継がれて欲しいものですね・・・・
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個人的にはリードの作品で演奏したことあるのは、アルメニアン1・パンチネロ・春の猟犬、そして、エル・カミーノ・レアルですね。
ちなみに・・・・
アルメニアン(大学コンクール3rdCl・社会人定演BassCl)
パンチネロ(大学コンクール3rd)
春の猟犬(大学定演3rdCl・社会人定演BassCl×2回)
エルカミ(社会人定演BassCl×2回)
・・・3rdとBassばっかりですね(笑)