以前も掻きましたけど、この年の全国大会が私が生で聴いた初めての全国大会で、
同時に初めて普門館で聴いたコンクールです。
ま・・初めてという事で、私自身も相当気合が入っていたのかな・・・・
前回の記事で写真でお見せしたこの年のプログラムですけど、余白には・・・
今現在の自分が見ても思わず驚いてしまう程、プログラムの余白には、各演奏団体に関する感想等が
びっしりと書き込まれています・・・
うーーん、当時の18歳の私は・・一体なんて真面目だったんだ・・・(苦笑・・)
というか・・この余白のメモをベースに1984年の記事を書いていますので、
とっても楽です・・・・
無理に「記憶」という引き出しをこじ開ける必要がないから・・・
3.嘉穂高校
D/歌劇「イーゴリ公」~ダッタン人の踊り(ボロディン)
プログラム1番が天理、2番が高岡商業と実力校が続き、そして第3番が嘉穂で、
いずれも直近3年以内に全国大会金賞と言う実績があり、この嘉穂高校も大変注目していました。
というのも・・・
この年の3年前の「ガイーヌ」の名演が大変鮮やかで躍動感にあふれていて、特にレスギンカ舞曲の
全く一糸乱れない情熱的なあの演奏にすっかり心を奪われていましたし、
1982年の評価は銀でしたけど「三角帽子」の幾分荒れ気味でしたけどその生命感溢れるダイナミックな演奏も
よかっただけに、結構期待はしていました。
「ダッタン人の踊り」と言うと、前年の1983年に明石北高校が洗練されているけどすごーーくクセがあり
独特な解釈と表現をしていた演奏が当時の自分の耳に焼き付いていましたので
「果たして嘉穂はどんな演奏&表現を聴かせてくれるのかな・・」と思っていました。
だけど結果は・・・
正直に書くと・・・「うーーん、一体どうしちゃったんだろう・・」みたいな不本意な演奏だったと
思います。
早い出番でしたので、緊張してしまったのかな・・
演奏が開始されて、「あれれ・・普段と何かが違う・・」とステージ上で感じていた「ズレ」がどんどん広がっていき
修正が出来ない内に演奏が終了してしまった・・・何かそういうような印象を受けました。
嘉穂高校は1988年はプログラム一番の演奏でしたけど、その時も「あれれ・・普段と何かが違う・・」みたいな
奏者のズレが客席にいた私にも伝わっていましたので、
嘉穂高校吹奏楽部は、もしかして「朝」に弱かったのかも・・・??
竹森先生の指揮は、この時初めて目にしましたけど、この指揮振りは大変強く記憶しています。
というか・・・この先生・・・
全く大振りしない・・・
傍から見てしまうと、振っているのか振っていないかよく判別できないほど大振りはしません。
何となくですけど・・・・「大振り」とか「情熱的な指揮」というと雄新中の鈴木先生が大変印象的なのですけど、
鈴木先生とは全く対照的な指揮振りです。
ポイントだけを的確に奏者に伝え、余計な事は何もしない・・・・
だけど生徒さん達を温かく見守り、生徒さんを心の底から信頼している・・・
そんな雰囲気はよーーく伝わってきました。
特に課題曲D/マーチ「オーバスワン」はそうした指揮者と奏者のよい雰囲気が演奏にもそのまんま
表れている感じがありました。
音楽が大変素直で素朴で温かく、聴く者に間違いなく「にじみ出る優しさ・温かさ」は伝わっていたと思いますし、
竹森先生の「誠実さ」が生徒を通して音楽にも表れていたと思います。
確かに・・演奏自体は・・「あれれ、一体どうしたのかな・・」みたいな面も濃厚なのですけど
出てくる音楽は大変温かい・・・
何か矛盾している書き方なのかもしれませんけど、だけど「技術的な拙さ」と「温かさ」は必ずしも矛盾するものでは
ないのだな・・とも思ってしまいます。
ま・・・課題曲は平易な曲ですので、あまり感じなかったのですけど
自由曲の「ダッタン人の踊り」は技術的にはかなり難易度が高いという事も在ると思いますが、ここで
一気にポロが出てしまったような感じがあります。
とにかく技術的にはかなり未消化の感じがありました。特に木管セクションの速いパッセージに奏者が
ついていけていないというのか、
とにかく音楽が仕上がっていないみたいな印象はありました。
だから音楽の仕上がりとしては大変「不安定感」が残ります。
音楽自体は前述の通り大変優しく誠実なのだけど、いかんせん、それを伝える技術の詰めが大甘だから
聴いていて「あ・・・なんか勿体無い事をしているな・・・」と痛感したものです。
一般的に「ダッタン人の踊り」と言うと、フルートソロとオーボエソロから開始し、
あのあまりにも有名でメロディーラインが大変人の心を打ってしまうオーボエ&コールアングレのソロへと
繋がる部分から開始されるのがほぼ定番なのだと思いますが、
嘉穂高校は、木管楽器、というかクラリネットがかなり細かい動きをする部分から曲を開始し、
通常のオーボエ等のソロへと曲をつなげているのですけど
そうですね・・・
何か結果として「余計な事しちゃったのかな・・・」みたいな印象は否定できないと思います。
この木管の速い動きが大変不安定でぼろが出まくっていましたので、
この部分で奏者達が「あ・・・なんかやばい・・」みたいに感じてしまい、その後の不安定さを招いてしまったのかな・・とも
感じられなくはないと思います。
だけど・・・
不思議な事に・・・下手なんだけど音楽は大変温かい・・・
この曲は、元々戦闘中に敵に捕獲されてしまい、故郷をしのんで落ち込んでいるイーゴリ公を慰めようと
敵の大将が
「それならぱ・・わが軍の勇猛な踊りを見て貰って楽しんでもらおうじゃないか!!」と思って盛大な踊りをお披露目
したのですけど、その際の音楽がこの「ダッタン人の踊り」の部分なのです。
敵の大将の優しさ・イーゴリ公の寂しさと故郷を懐かしむ望郷の想い・・
そうした温かいものは、この嘉穂高校からの演奏は大変よく伝わってきました。
聴いていて・・思わす涙が出そうなほど心にスー―ッと染み込む演奏なのですけど、
くどいようですけど技術的には大変拙い・・・
そうした拙さと温かさが同時に存在する演奏と言うのも、全国大会ではむしろ珍しい部類に入ると
思うのですけど、
そうした音楽をこの学校は聴かせてくれていたと思います。
結果は当然銅賞なのですけど、その音楽的感銘度だけは金賞をあげたい気持ちで一杯でした・・・!!
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