11.雄新中学校
A/スペイン奇想曲
このチームとしては二回目の全国大会出場を果たしたのがこの年でした。
だけど・・この年の演奏なのですけど、なぜか・・・銅賞という結果で終っているのですよね・・・
正直・・・これは私のあくまで個人的感想なのですけど
この演奏のどこが「銅賞」なのかさっぱりわかりません。
課題曲も自由曲もとにかく生き生きとして躍動感に溢れ、技術もしっかりしているし、
何よりも・・・
自由曲でのクラリネットをはじめ、フルート・オーボエのソロ陣も大変安定した見事なソロを
聴かせてくれているし、
金管のリズムの切れもサックスセクションの洗練された音色も文句のつけようが無いと思います。
音楽的な解釈も極めて妥当で、特段妙ちくりんな解釈をしている訳でもないし
極めて人の心にまっすぐと伝わる素直で伸び伸びとした演奏であり、
私としては・・・「素晴らしい!!」としか言いようがない演奏だと今でも思っています。
後年の、例えば・・・・1985年~87年の演奏の方がいかにも鈴木先生らしい個性が溢れた演奏を
聴かせてくれているのですけど
この年は・・・正直、まだ鈴木先生らしい解釈とかアクの強さは漲ってはいません。
ま・・・いってみれば極めてオーソドックスな解釈&演奏だと思うのですけど
それでもコンクールの「評価」としては銅賞ですからね・・・
本当にこうした「審査」というものは、水物ですし、審査員の好き嫌いによっても大分傾向は変わってくると
思いますし、
別にそれが絶対的なものとは全く思えません。
というか・・・
この評価は、たまたまそうした審査員と巡り合った結果としてのものであり、
全然別の場で別の審査員から審査を受けていたとしたら、評価も全然別の物になる可能性すら
あると思います。
そうですね・・・
とにかく私はこの演奏は大好きです!!
だから・・・確かに審査結果に納得はしていないけど、
それが絶対的な全てではない・・・
「私」が「素晴らしい!!」と言うのだから、それでいいじゃないか・・!!という感じなのだと思います。
ちなみに・・・
この雄新中の「スペイン奇想曲」の翌年の定期演奏会の曲目の一つがこの「スペイン奇想曲」でありまして、
この時、ソロクラ&ファーストクラを担当した私なのですけど、
とにかく技術的には難しかったです。
雄新の演奏を聴くと、難しい部分もさらっと吹いているので、
知らない人が聴くと「そんなに難しい曲でないのでは・・・?」みたいな誤解を与えかねないのですけど、
いやいや、そんな事はありません・・
難易度的には結構グレードは高いと思います。
何て言うのかな・・・自分自身がこうやって吹いてみると、やはり雄新中の偉大さは痛いほど・・・
よーーく分かりました・・・
ちなみにですけど、自分達の定期演奏会の際、
私は個人的には「スペイン奇想曲」は、原曲のオーケストラ版としては、
オーマンディー指揮/フィラデルフィア管弦楽団を
吹奏楽アレンジ版としては、前述の雄新と1982年の尼崎西高校と1981年の中村学園を
結構参考にしました・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここから先は、私がこのブログで記した雄新中に関する記事から幾つかを再構成して改めて
記したいと思います。
プロフィールで記している通り、
とにかく私は・・・・雄新中の1987年の「エルザの大聖堂への厳かな行列」の素晴らしい演奏に感銘を受けてしまい、
あの演奏の素晴らしさ、
そして・・・ま、この事は既に上記の1982年のスペイン奇想曲でも書いた通り
私が素晴らしいと感じた事と実際の審査結果は必ずしも一致するものではないんだな・・・という事を
改めて皆様にご理解頂ければ・・・本当に幸いです。
でも私は・・・あの演奏の素晴らしさをこうやって少なくても私の命がある限りは・・・後世に伝え続けたい
気持ちで一杯です!!
ま・・・同様な事は・・・1982年の花輪高校のウォルトンの交響曲第1番とか
就実高校の「幻想舞曲集」とか
仁賀保高校の矢代秋雄/交響曲とか
屋代高校の松村禎三/交響曲などにも
言えるのですけどね・・・・
雄新中学校なのですけど、鈴木先生時代にこんなにも素晴らしい演奏を聴かせてくれているのに
評価的には必ずしも高い評価を受けていないのは
個人的にはとても残念です。
ホント・・・もう少し高い評価を得ていても決しておかしくはないのですけどね・・・
「雄新にしては・・・少し消極的な演奏だな・・・」とも感じてしまう1984年の「運命の力」は金賞・・・・
うーーーん、やっぱり「コンクール審査」は水物ですし
審査員の価値観・好き嫌いで随分と評価も変わってしまうものなのかもしれませんよね・・・・
特に雄新が光り輝いていたのは、1985年~1987年の3年連続銀賞の頃かな・・・・
1985年 課題曲C 自由曲/こうもり序曲
1986年 課題曲B 自由曲/ローマの謝肉祭序曲
1987年 課題曲E 自由曲/歌劇「ローエングリン」~エルザの大聖堂への厳かな行列
あの3年間は、本当に素晴らしい演奏を聴かせてくれていましたね。
評価は全て「銀賞」なのですけど、
私の中では・・・・あの3年間の演奏は・・・・
「金賞」以上のものがありますし、
何よりも「人の心にまっすぐと伝わる何か」は間違いなく残してくれていたと今でも確信しています。
その中でも特に1987年の「エルザの大聖堂への厳かな行列」は本当に
素晴らしかったです!!
あそこまで素晴らしい演奏を聴かせてくれたのに、あの演奏が審査結果で「銀賞」と発表された時は・・・
マジに・・・
「審査員、全員死んでしまえ!!」と思ってしまいましたけどね・・・・(苦笑・・)
1987年の雄新は、何と恐るべきことに36人編成です。
当時、普門館で生でこの演奏を聴いていましたけど、生で聴いても録音で聴いても
とても少人数とは思えません。
とにかくサウンドは豊かです。
そして何よりも表情は極めて豊かですし、感受性が大変豊かなのですけど、それがちっとも不自然ではないし
実に素直で伸び伸びと吹いている所がすごいですし、
指揮者の先生が「こう吹け!!」と言ったから言われたまま吹いているみたいな「お人形さん」みたいな演奏では
ありません。
鈴木先生の解釈では、ところどころにテンポルバートをかけたり、音を微妙に揺らしたり
音楽を大胆にも途中で静止寸前までテンポを落としたりと色々と「やりたい放題」という感じも
するのですけど、それがちっとも作為的でないというか、自然体な所が
本当に素晴らしいです。
ま・・・鈴木千先生自体の指揮はかなり大振りですけどね・・・
(私の周囲では、あの指揮は・・・「まさに踊る指揮者」と評する人もいました・・)
この年の雄新は課題曲のマーチでは、金管の優秀さ(特にユーフォニアムの裏メロは素晴らしい!!)
自由曲においては、金管は比較的抑制し、
木管を情緒たっぷりにしっとりと吹かせていたのが大成功だったと思いますし、
とにかくあのサウンドとあの音色は・・・とにかく・・・あの演奏から20年が経過した現在でも
一聴の価値ありと確信していますし、
とにかく・・現在の若い奏者の皆様にも是非是非「あのしっとり感+みずみずしい感性」を
聴いて欲しいと思っています。
前半のオーボエソロなんかは絶品ですね!!
中盤の瞬間的に音楽の流れを止めかけた時は・・
生で聴いた時は「あれれ・・・鈴木先生、ここでまさかの演奏中止・・・??とも瞬間的に感じたのですけど
ここから、テンポルバートをかけまくって音楽全体をファンタジーに染めていた
あの解釈は・・・
今聴いても斬新ですし、とにかく美的限界をとっくに超越した「退廃的美しさ」がそこにはありました。
ラスト近くのホルンの雄叫びも良かったし、終わらせ方も一旦音量を落としてから盛大にフォルテ
していくのもむしろ自然体なような感じもします。
音楽が本当にワーグナーの求める「重厚さろ・「神秘さ」・「透明な清涼感」を見事に醸し出していたと
思います。
この演奏から既に28年も経過しているのですが、
この雄新中の素晴らしさは・・・・・
私は、永遠に語り継いでいきたいと思いますし、
永遠に後世の人達に受け継がれて欲しい素晴らしい演奏の一つだと思います。
私よりも年配の更なる吹奏楽オールドファンの方は、
「エルザの大聖堂への厳かな行列」というと、1966年の豊島十中とか1974年の首里高校とかを
推す人が多いとは思いますが、
私にとっては「エルザ」は1987年の雄新なんですよね・・・
だけど、ここで一つ雄新以外の「隠れた名演」をここに記したいと思います。
それがどこかと言うと・・・1983年の茨城高校だと思います。
全体的には、考え込まれ練りに練った「知性的な演奏」とも言えると思います。
エルザ・・・はカイリエ編曲の場合、前半部分、オーボエからクラリネットへとメロディーラインが
受け継がれていくのですけど、
茨城高校の場合、カイリエ編曲でありながらも、オーボエがクラリネットへと繋ぐことはしないで、
オーボエ一人でソロを奏でていますから、この辺りの解釈は大変面白かったと思います。
全体的に知性的で構成がしっかりしている印象がある中で、矛盾しているのかもしれませんが
同時に「感受性」が大変強い演奏のようにも感じられます。
ラスト近くのホルンの雄叫び以降の展開は、金管楽器と打楽器が、これまで抑えに抑えていた
感情の高ぶりを一気に爆発させているような感じもしましたし、
あの「感情の高まり」は、本当に自然なもので、むしろ奏者の自発的な感受性のなすがまま演奏した結果
と言えるのかもしれません。
音が多少硬いのが多少の欠点なのかな・・・
金賞には至らなかったけど、惜しまれる銀賞の一つですし、
私としては、雄新の次に大好きな「エルザ・・・」の演奏です。
(1988年の高橋水産の演奏もなかなか素晴らしかったですけどね・・)
- 関連記事
-
スポンサーサイト
鈴木先生は、前任の菊間中学校でも「エルザ」をコンクールで指揮して、四国大会金賞を受賞され、その翌年に菊間中を全国大会まで進め、その後も雄新中を何度も全国に連れて行ったある意味【愛媛吹奏楽の英雄】だと思います。
私は、その菊間中が「エルザ」を演奏したときの雄新のメンバーだったんですが、県大会での菊間中の「エルザ」は鳥肌が立つほどの名演でした。
まさか鈴木先生絡みの記事が今読めるとは思っていませんでした。
感謝の気持ちでいっぱいです。