2.城陽中学校
D/交響組曲「寄港地」より、Ⅱチュニスからネフタへ Ⅲ.ヴァレンシア
課題曲・自由曲共に、「少し固いな・・・だけど確実な合奏術・・」という風な印象が強く、
とにかく技術的には大変高いものを有している大変レヴェルの高い演奏だと思います。
欠点は・・・少し真面目すぎる感じがあるところなのかな・・・?
課題曲D/サンライズマーチですけど、テンポが少し前のめりの傾向があり、少し転んでいるような感じも
ありました。
というか・・・この「サンライズマーチ」ですけど、この曲、私も何度か演奏したことがありますし、自分自身この曲を
指揮したことがあるからよく分かるのですけど、
曲が大変シンプルで親しみやすいせいもあると思うのですけど、自然と・・何かテンポが速くなってしまう傾向に
なってしまい、奏者としては特段「急いで吹こう・・」という意識は全く無いのに、なぜかせかせかと吹いてしまう
のですよね・・・・
あの感覚、ホント不思議ですよね・・・
自分自身が指揮者の立場からこの曲を演奏してみると・・・別にテンポをいじっている訳でもないし、特に
テンポアップを図っている意識は全然ないのに、なぜか奏者が「前へ・・前へ・・」という意識がなぜか
強く働くようにも感じられます。
だから・・・・城陽中の幾分せかせか進行しテンポが少し前のめり・・・というのは・・・むしろ・・・自然な事なのかも
しれませんよね。
自由曲のイベール/寄港地ですけど、確かに・・・・合奏としては手堅いですね・・・・
とにかく・・・無難にまとめあけたという感じがします。
反面・・・やはり・・・イベールというと「粋な感じ」とか「音楽の遊び心」とか「ノリの良さ」みたいな感じがするのですけど、
城陽中の場合、そうした遊び心よりは、むしろ・・・「確実なアンサンブル」の方を優先させてしまったような
感じもあります。
この「寄港地」の最大の聴かせどころのⅡ・チュニスからネフタへの妖しいあやしい響きのオーボエのソロも
確かに賞賛に値する程技術的には大変しっかりとしたものなのですけど
申し訳ないですけど、聴いていて「何か」は特段伝わってこない・・・
どちらかというと堅実さ・正確さの方を優先させてしまった感じはありますね・・・
過去の吹奏楽コンクールでも多くのチームがこの「寄港地」に挑み、このチュニスからネフタのオーボエソロを
聴いたのですけど・・・・
「これは素晴らしい・・・!!」と感じさせたのは・・・せいぜい・・・81年の習志野高校と91年の広島・基町高校の
オーボエ奏者くらいかな・・・・
1988年の土佐女子も悪くは無かったかな・・・
Ⅲのヴァレンシアも・・・うーーん、やっぱり「遊び感覚」が少し足りない・・・・
くどいようですけど、本当に技術的に高いものは有していて確実なアンサンブルは聴かせてくれているのですけど
何か「伝わるもの」があんまり無い・・・
その点は・・・少し勿体無いなとも思うのですけど、中学生にそうした「粋な感じ」・「軽さ」を過度に
求めるのも少し気の毒なのかな・・・・
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ここから先は余談ですけど、イベールの「寄港地」の話が出ましたので、この曲の原曲について
少しだけ書きたいと思います。
交響組曲「寄港地」なのですけど、
(最近では佐渡裕さんが好んでこの曲とか同じくイベールのディヴェルティメントを取り上げられて
いますよね・・・さすが!! お目が高いという感じです!!)
イベールの第一次世界大戦中の海軍士官として地中海を航海した経験とかローマ留学中の
イタリア~スペイン~チュニジアの旅行時の経験が
見事に曲に活かされていると思います。
イベールが地中海各地で受けた印象をそのまんま組曲にまとめた「華麗なる音の絵巻」という感じが
非常に濃厚な一曲ですね。
だけど黙って目を瞑って聴いていると
蛇遣いの妖しい雰囲気とか情熱的な感じとかアラビアの砂漠とか
色々とイマジネーションが勝手に起きてくるのは、さすが・・・!!という感じですね。
20世紀の作品なのに、こんなに分かり易くて粋で楽しい作品はあまり無いような気もします。
この交響組曲は、下記の三曲から構成されています。
Ⅰ.ローマからパレルモへ
Ⅱ.チュニスからネフタへ
Ⅲ.ヴァレンシア
正直、Ⅰ.ローマからパレルモへは、あまり印象に残らないのですが
Ⅱ.チュニスからネフタへの音楽は、まさに「アラビアンナイト」の世界で、
いかにも怪しげなヘビ遣いが、ドロドロと壺の中からへびを出そうとしている妖しい音楽です。
また、聴き方によっては、アラビアの妖しいお姉さん達が
何かだるそうに男を誘惑しているようにも聴くことも可能と言えば可能かな・・・・
Ⅲ.のヴァレンシアは一転してスペインの情熱的なカラッとした晴天の音楽です。
後半のカスタネット・タンバリン・シロフォーン・ドラを交えた音楽の高まりとリズム感は
本当に「情熱」そのものです。
だけど、全体的に・・・、というかⅡとⅢのオーボエ奏者は大変プレッシャーがかかる曲ですね。
一つの楽章においてほぼ丸々と一つの楽器がソロとして使用されている曲は極めて珍しいと
思いますし、
オーボエ奏者の腕の見せ所ですよね。
またⅢにおいてもオーボエはソロとしても使用されていますし、
オーボエの第一奏者と第二奏者のアンサンブルもありますし
組曲の間中は、オーボエ奏者は一瞬も気が休まる事は無さそうですね・・・・・
Ⅲのヴァレンシアの「情熱の発散」も実に素晴らしいと思います。
そうそう、イベールは日本ともほんの少し関わりがありましたね・・・
1940年の「紀元節2600年」の際に日本政府から委嘱を受けて、記念作品として作曲されたのが
「祝典序曲」です。
面白い事に、特に「日本的なもの」を意識されて書かれた部分は全く皆無で
純粋に喜びに溢れた音楽が14分近くも展開されます。
ま、だけど、
同じく紀元節の記念作品として日本から委嘱を受けた
イギリスのブリテンは
「シンフォニア・ダ・レクイエム」という「鎮魂歌」を日本政府に送り付け
当然のごとく当時の日本政府から演奏拒否&抗議の洗礼を受けていますが、
いやいや、実にブリテンらしい話ですね・・・
そして・・・・戦後に平然とした顔でN響を指揮し、この曲の日本初演を本人自身の指揮で果たしたとの事です。
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まで出すには至ってない気がしますね。
どこかで聞いたんですが、あのオーボエ当時2年生だったとか。
2年生であのソロはとんでもない気がしますが、ということ
は次の年のサロメも同じ子ですよね。1年間であれだけの
妖艶な雰囲気を出せるようになったということで、
それもまたとんでもないんじゃないかと(^_^;)