23.金津中学校
D/シンフォニックバンドのためのパッサカリア(兼田敏)
北陸代表の金津中学校って、すごーーく地味なチームだと思いますし、正直、コンクールでもそれ程高い評価を
受けているチームではありません。
だけど、私、このチームの演奏、実は大好きなんですよね。
何が素晴らしいかと言うと、何よりも音楽が大変素直で伸び伸びと吹いている点が魅力的ですし、
選曲も、決して「無理をし過ぎた背伸びした選曲」はしないで、自分達の実力相応の曲を自然に伸び伸びと
吹いている点は本当にポイントが高いと思います。
そしてその選曲も、兼田敏・小山清茂等の邦人吹奏楽オリジナル曲を積極的に取り上げ、
日本人にしか分からないかも・・・・みたいな「わび・さび」の世界を素朴に奏でている演奏には
本当に胸が打たれるものもあったりします。
ま・・・・中には・・・1984年の「シンフォニックバンドのための交響的音頭」のようにあまりにも地味&マニアック過ぎて
演奏が過度の単調状態になって崩壊した事例もあったりしますけどね・・・(苦笑・・・)
私個人としては・・・
1979年の兼田敏の「シンフォニックバンドのための序曲」の素朴さと日本的情緒の世界とか
1986年のチャンスの「朝鮮民謡の主題による変奏曲」の伸び伸びとした素直さは
本当に本当に大好きな演奏です!!
また・・・1977年の課題曲C/ディスコ・キッドも、リズムの切れが抜群+中学生らしい爽やかさも
本当に素晴らしい演奏だったと思います。
1981年の演奏も地味ながら決して悪い演奏ではないと思います。
ま・・・一つ難を言うと、課題曲D/青空の下では、少しテンポ設定が速すぎたかな・・・・
なんかあれは・・・・同じ課題曲Dでしたけど、同年の嘉穂高校みたいにテンポが速すぎてかえって落ち着かず
ビートが全然決まっていない演奏と少し似ているものがありました。
ま・・・元気はありますし、いかにも中学生らしい演奏なんですけどね・・・
一方、自由曲は・・・前半はかなりしっとりとした演奏です。
冒頭の低音の入りもひそやかさがありましたし、展開部のホルンもかなり勢いと音の光沢が感じられて
素晴らしいと思います。
中間部のオーボエとアルトサックスのソロもしっとりと聴かせてくれていたと思います。
全体的に音が輝いているというのか、素直さ・勢い・自然な盛り上がりが伝わってきて
私は大変素晴らしい演奏だったと思います。
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さてさて・・・・兼田敏の名前が出てきましたので
余談としてほんの少しばかり、兼田敏、特に「パッサカリア」について書かせて頂きたいと思います。
兼田敏といえば、やはり「シンフォニックバンドのためのパッサカリア」が
最初に思いつきます。
そのくらい素晴らしい曲だと思いますし、
構成美に優れていると同時に音楽的にも非常に分り易く、且つサウンド的な迫力も十分という
邦人作品としては奇跡的な作品だと思います。
最近の吹奏楽コンクールは本当に邦人オリジナル作品がかなりの頻度を占めていますけど
そうした中でも・・・・
人によっては、いまだに「兼田敏のパッサカリアが吹奏楽邦人作品としては最高傑作」という事を言っているそうですけど、
これは実に素晴らしい事だと思いますし、
同時に「名曲は時代の経過でも色褪せない・・・」という事の一つの証明でもあるような気がします。
この曲は、音楽之友社の創立30周年委嘱作品でして、全国大会の初演は浜松工業高校です。
ゆっくりとした重々しい序奏から開始し、展開部のアレグロ(ホルンがかっこいいです!!)
そして中間部を経て序奏の再現というホント古典的ともいえるシンプルな構造な分だけ
わかりやすい曲だと思います。
だからこそ、いまだに全国大会でも自由曲として演奏されるのですよね。
個人的には・・・・中間部のオーボエとアルトサックスがとてつもなく魅力的ですし、
後半のティンパニーのロールソロが大好きです!!
この曲は全国大会でも支部大会でも色々なチームが演奏し、名演を残しています。
勿論、前述の1981年の金津中学校も素晴らしい演奏を聴かせてくれているのですけど
その他としては・・・・
1978年の石田中学校
支部大会では、
93年だつたかな?の高崎商科大学付属高校と城東中学校の演奏が大変印象に
残っています。
特に石田中学校の演奏は、「爽やかさ」も感じられ、鮮やかだけど可愛らしさも感じられる
演奏です。少し線が細いのが難点かな・・・
21世紀に入ってからは、福岡工業大学の演奏も結構良かったと思います。
このチームの演奏の特徴は・・・少しヘンな終わらせ方というか、ス―――ッと薄く消えていく感覚が
何ともユニークでした・・
だけど、この「シンフォニックバンドのためのパッサカリア」ですけど、一度すごい事をやってのけています。
何かと言うと、1981年において、全国大会・支部大会で、オリジナル・邦人・クラシックアレンジ
全ジャンルの中で一番演奏された曲が
この兼田敏の「パッサカリア」なのです。
いや、これはすごい事だと思います。
あの当時・・・・「邦人作品」というと・・・・今現在のような「親しみやすさ」は正直あまり無く、
どちらかというと・・・「暗い・陰気・おぞましい・辛気臭い」というイメージがあった邦人作品において、
あんなに人気があったなんて・・・・
とにかく当時としては画期的だったと思います。
兼田敏の他の作品では、
〇シンフォニックバンドのためのバラードⅡ
〇哀歌(エレジー)
〇交響的瞬間
という作品もあるのですが、個人的な感想としては・・・あまりにも地味すぎて特に・・・印象に残りません。
だけど「シンフォニックバンドのための交響的音頭」という非常に日本的な
泥臭い曲があるのですが、これがまた実にユニークで面白い曲です。
ラベルのボレロのように、終始打楽器が一定のリズムを叩き続け、それにさまざまな管楽器が
メロディーを乗っけていくというシンプル過ぎる曲なのですが、
ホントドロ臭くて、どんくさくて、日本情緒たっぷりの曲です。
知る人ぞ知る曲になってしまいますけど
「シンフォニックバンドのためのファイブイメージ」という曲もあります。
これは一見とっつきにくい曲というか、何かベルクの無調音楽のように
メロディーの残骸が散らばった表情のない曲なのですが、「心証」を音符として表現したかったのかなー
とも思いますが、よく分かりません。
謎みたいな曲です。
確か1988年に静岡大学が自由曲として演奏していました。
その演奏をトラヤのカスタムテープで聴いた事があるのですが、それでも「良く分らん・・・」
というのが率直な感想です。
だけど・・・・兼田敏の盟友の保科洋氏は最近「復興」という曲で再度吹奏楽界にブレイクを果たしているのに
兼田敏は・・・2002年に逝去されています。
何か・・・・あまりにも早すぎる死という感じでしたね・・・
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