南関東は梅雨モード・・・・
こういうじめじめ鬱陶しい季節に、正直フィンランドのシベリウスの「氷の世界の音楽」はあまり合わないとは
思うのですけど、
たまーに無性にシベリウスの冷たく厳しい世界を聴きたくなる時もあったりします。
シベリウスはフィンランドが誇る大作曲家ですけど、その音楽はまさに「北欧」の香りが漂う
「氷の音楽」みたいな感覚があります。
交響曲第1番・4番・6番・7番がどちらかと言うと「冷たい氷みたいな音楽」のようにも
聴こえますし、
交響曲第2番・5番のように、短い夏を楽しむかのような開放的な音楽もあったりします。
私なんかは、シベリウスは「ほのかな情熱」が全編に漂う第一番が1番好きなのですけど、
その次に好きな交響曲は第5番かな・・・
一般的にシベリウスの交響曲と言うと、2番が圧倒的に人気があり、
演奏会で取り上げられる回数もリリースされるCDも群を抜いて多いのですけど、
(シベリウスの交響曲第2番は、通の方の間では、シベツーとか言われるそうです。
何か胃腸薬のキャベツーみたい・・・)
私は、第1番や第5番が好きですね。
反面・・・・正直、4番と単一楽章の7番は・・・・あまりよく分からない・・・・
特に4番はあまりにも難解と言うのか、第一~第三楽章で提示した世界が第四楽章で
鉄琴(グロッケンシュピール)が入る事で唐突に天国的な色彩に変容するあの「変化球」が
いまだによく分からない・・・という感じなのですよね・・
シベリウスという作曲家は実は大変な長寿でして、確か90歳近くまで生きています。
意外かもしれませんが、チャイコフスキーと活動時期が重なる時期もある反面、
1950年代後半まで生きていた方です。
チャイコフスキーとシベリウスは、実は・・・生れた年は25年しか違いがないそうです。
最初にこれを知った時は、「何か意外・・・」と感じたものです。
だって・・・・チャイコフスキーと言うと、ロシア革命のはるか前の作曲家というイメージがあり、
シベリウスは・・・20世紀の作曲家というイメージがあったからです。
シベリウス自身は・・・これも意外でしたけど、私自身が生まれるほんの数年前に亡くなった方ですので
こうして見てみると・・・とてつもなく長生きされた方のように思えますね。
シベリウスが生きていた頃は、マーラーとか、無調音楽のシェーンベルクとか
印象音楽のラヴェル・ドビュッシーが大活躍していた時期とほぼリンクするものの
彼らの音楽にはほとんど影響を受けずに
自分が書きたい北欧の寒い音楽だけを生涯書きとおした孤高の面もあります。
だけどその活躍時期は意外と短く1930年代以降は、作曲の筆を絶ち、
最後の交響曲である第7番を残して以降、約35年以上何も作品を残さなかった方でも
あるのです。
話によると、交響曲第8番はある程度まで完成はしていたらしいのですが、
最終的には世間には発表する事もなく、
楽譜も全て廃棄してしまったようなので、
今となっては永遠にその8番を耳にすることはありません。
交響曲第5番は、シベリウス50歳の時の作品ですが、
外に向けて心を開放させたような音楽で、
2番ほどのエネルギーはないにしても、
迫力十分な音楽を展開させています。
第一楽章は、展開部に至るまでが少々長いような感じもしますが、
その頂点での臨場感は素晴らしいものがあります。
第二楽章は少し短過ぎたかな・・・
第三楽章はフィナーレなのですけど、
ゆったりと徐々にクライマックスへ向けて盛り上がっていく音楽です。
この第三楽章は、
例えて言うと、何か「大地と空がお互いに呼吸しているかのような」感覚があり、
ゆったりと展開しているのですが、そのジワジワと盛り上がっていく高揚感は
いつ聴いても内面的にエキサイトします。
ラストのティンパニーの叩きつけるような和音が素晴らしいです。
この交響曲第5番を最初に聴いた時、感じた事は
「少しバランスが悪い・・・」という事です。
第一楽章が全体の半分の長さを占め、少し長すぎる割に
第二と第三楽章が少し短すぎるのかな・・・とも感じました。
だけど、それは尤もな話であり、
実はシベリウスの交響曲第5番は、元々は四楽章構成だったのです。
初演では大好評だったものの、何か不満が残ったせいなのか
数年後にかなりの大改訂を行います。
その結果、展開部へ至るまでの第一楽章と展開部以降の第二楽章を一つの楽章にまとめ、
結果的に三楽章からなる交響曲へと改定を行ったのです。
だから結果的に第一楽章が相当長くなってしまったのです。
この交響曲は色々と生でも聴きましたけど、
やはり一番印象に残っているのは、本場のフィンランドの管弦楽団の
ラハティ交響楽団の演奏でしたね。
この楽団は、来日中、トリフォニーホールを拠点にし、シベリウスの交響曲を全て
演奏していました。
この来日公演中、私は、前半にシベリウスのヴァイオリン協奏曲
後半にこの第5番のプログラムを聴きましたけど、
大変素晴らしい名演を聴かせてくれました。
演奏終了後もスタンディングオペレーションが止まらず、指揮者も計5曲ほど
アンコールを演奏したほどでした・・・
その最後のアンコール曲は・・・言うまでも無く「フィンランディア」でした・・・
CDで聴く場合、
断然素晴らしいのは、
ベルグルンド指揮/ボーンマス交響楽団ですね。
ヤルヴィのエーテボリ交響楽団も中々ですけど、やはりベルグルンドを一度聴いてしまうと
他の演奏が聴けなくなってしまいますね・・・
ベルグランドの指揮で「なんか凄い・・・」と感じてしまうのは、第三楽章のラストのティンパニーの扱いかな・・・・
「もしかして単にティンパニー奏者が間違えただけかも・・・」と感じさせるくらい
多分意図的だと思うのですけど、管弦楽のラストの和音の響きにほんの0.1秒程度ティンパニーの音だけ
わざとずらして叩かせているので
この部分だけ異様に「ティンパニーの打点」がピシっ・・・とかっこよく決まっているように
私には感じられます・・・・
何かいかにも・・・「苦しい戦いが終わった・・・」みたいな開放感・高揚感がここからも伝わってくるような
感じもあります。
最後に余談ですけど、1980年代のフジテレビ系の日曜PM19:30台では「世界名作劇場」というアニメが放映されていて
この枠の中で、例えば、赤毛のアン・ペリーヌ物語・小公女・トムソーヤの冒険などの名作がアニメ化
されていたのですけど、
確か・・・・1984年の作品が「牧場の少女 カトリ」だったと思うのですけど
今にして思うと、このアニメの至る所にこの「シベリウス」の音楽がBGMとして使用されていましたね。
記憶にある範囲でも、フィンランディア・組曲「恋人」・トゥオネラの白鳥・カレリア組曲などが使われていたと
思いますし、
シベリウスの入門編としては最適な音楽なのかもしれませんよね。
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