11.大塚中学校
D/交響曲「メキシコの祭り」~Ⅲ.カーニヴァル(O.リード)
ここの指揮者の下之園先生は、前年は大淀中を率いて全国に出場され、そして翌年に大塚中に異動・・
だけど赴任一年目でいきなりこの学校を全国大会初出場に導いていますから
すごい・・としか言いようが無いですね。
課題曲D/行進曲「青空の下で」は、吹く方としては簡単でいいのですけど、曲は・・・正直・・繰り返しが
多く、何度も繰り返されるメロディーラインが「少ししつこいな・・」とイラッと感じさせる曲でもあるのですけど、
この学校の場合、不思議とそうした「しつこい」と感じさせる演奏ではなくて、
むしろどちらかというとカラッとあっさりとした仕上がりにしたのがむしろ正解だったような気がします。
自由曲の「メキシコの祭り」は、課題曲とうってかわってダイナミックスな演奏であり、
リズム・ピートをカチッ!!としっかり決める事が結構難しいこの曲を自然な流れとして演奏出来ていた事は
特筆に値すると思います、
反面・・・少し難を言うと、幾分、音色がふわっと軽い感じもあるので、
確かに伸び伸びと演奏していてその点は気持ちいいのですけど、何となく・・・「ゆるさ」も感じられ
勢いはあるのだけど同時に音色がふわっとしているというサウンドしての「矛盾点」もあったような感じが
する演奏でした。
でもこの第三楽章は・・・・相当の指揮者泣かせの曲だと思いますよ・・・
基本は多分三拍子系の曲なのだと思いますけど、あのリズム感をキッチリと決める事は
相当至難の業だと思いますし、この第三楽章は終始f~ffの強さで演奏され、弱奏部分がそれほど
無いから、曲の構成とかどこに盛り上がり部分を作るかなどは結構悩まされた様な気もします。
この曲は、結構マリンバが大活躍する曲なのですけど
この学校の打楽器奏者は、マリンバ・サスペンダーシンバルなどの色彩感覚が中々秀逸で
曲全体の中々素晴らしいアクセント&風味づけをしていたと思います。
トロンボーンの洒落っ気あるソロも中々楽しかったと思います。
ま・・・、結果としては銀賞を受賞し、その評価は妥当だと思うのですけど、
こういう正攻法の吹奏楽オリジナル作品を正面から捉えた演奏でもあり、その点も私としては
ポイントが高いのかな・・と思いますね。
でもこの指揮者の下之園先生は、どちらかというと吹奏楽オリジナル作品よりはむしろ
重厚なクラシック作品のアレンジものの方が真価を発揮されていたのかな・・・??
事実、この演奏から5~6年後のハンガリー狂詩曲第2番とジークフリートの葬送行進曲は・・・
あれは・・私は今でも歴史的名演の一つと思っています。
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ここから先は余談です。
オーエン=リードの交響曲「メキシコの祭り」の話が出ましたので
この名作吹奏楽オリジナル作品に簡単に触れたいと思います。
リードという名前から、アルフレッド=リードと間違えられる方もたまーに居たりもしますけど
オーエン=リードとアルフレッド=リードは全くの別人物です。
この交響曲は、下記の三つの楽章から構成されています。
Ⅰ.前奏曲とアスティックダンス
Ⅱ.ミサ
Ⅲ.カーニヴァル
Ⅰの前奏曲とアスティックダンスは、出だしがいきなりチャイムの乱打・ホルンの雄叫びと
ティンパニー・大太鼓・スネアドラムの強打から開始され、この部分だけでも
相当のインパクトがあります。
前半部分は、祭りが始まる前夜~夜明けをイメージしたものと思われますが、
結構夜が明けるまで長いような感じもします。
太陽が昇り、祭りが始まるシーンは、
舞台裏から奏でられるトランペット・トロンボーン・クラリネット・大太鼓・シンバル・小太鼓の
ミニバンダがうまく表現しています。
遠くから祭りのざわめきが聴こえてくるというイメージなのかもしれません。
後半は、エキサイトなダンスシーンです。
ティンパニーとトムトムの掛け合いが非常に面白いし、ティンパニーのソロが実に
決まっていて格好いい!!
曲は一気に駆け上がって終わるのですが、その終わり方もffで終わるのではなくて、
最後にドラがゴーーーンと響いて静かに閉じるのが
結構斬新な感じもします。
Ⅱ.ミサ
この楽章は「祈り」と記されるプログラムもありますが、ミサなのか祈りなのかは
正解は不明です。
この楽章は、第一楽章の興奮をそのまま引きずったように、冒頭からチャイムが鳴り響き、
金管楽器の大音量的コラールで始まります。
だけど盛り上がるのはこの部分だけで、あとは終始ゆったりとした音楽です。
ミサというよりは・・・・祭り・ダンスが終わった後で、全員が疲れ果ててそのまんま夢心地で
寝てしまった・・・みたいな感じのスローな音楽ですね。
Ⅲ.カーニヴァル
この交響曲のラストを飾るのに相応しい楽しさ満載のノリノリな楽章です。
冒頭は、何となくストラヴィンスキーのバレエ音楽「ペトルーシュカ」第四場の冒頭に
何となく雰囲気が似ているような気も・・・
大塚中で述べたとおり、この楽章は、奏者も指揮者も大変だと思います。
このリズム感をどう正確かつエキサイトに演奏するかは非常に難しいものがあると
思います。
終始三拍子系なのですけど、ビートの躍動をどう表現するか指揮者の技量が
ストレートに出そうな気もします。
結構マリンバが終始大活躍していますけど、マリンバ奏者も相当のハイテクニックが
求められそうですね。
この交響曲は、やはり第一楽章が断然素晴らしいですね!!
夜明けと後半の熱狂の対比が面白いし、
夜が明けて遠くから祭りのざわめきが聞こえるようなバンダの使用が実に効果的だと思います。
ラスト近くのティンパニーソロが実にかっこいいです!!
そうそう・・・第一楽章の「クラリネット・トランペット・トロンボーン・小太鼓・大太鼓・シンバルによるバンダは
「金管別働隊」という感じではなくて
もう一つ小さい楽器集団があるという感じもあり、
実際にこの交響曲を生で聴くと、二つの演奏集団の掛け合いみたいな感じもあり、
この部分の視覚的効果は結構高いものがあると思います。
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