4.田柄中学校
D/交響曲より第四楽章(矢代秋雄)
課題曲D/行進曲「青空の下で」は、無難と言うか、自由曲があまりにも難しすぎる内容なので
軽めの曲をかるーく吹いたという印象が強いです。
自由曲の矢代秋雄/交響曲ですけど、
中学の部で初めてこの曲を演奏したのは、間違いなくこの学校だと思います。
だとけ゜・・・印象としては「薄味」ですね・・・・
いかにも指揮者の先生の言うとおりに吹いた、
この曲の意味や中身はあんまりよく分らないけど、とにかく指揮者の先生の指図通りに
吹いたという印象が強いです。
全体に音がうすい・・・
アレンジャーは当時の東海大学の上原先生の編曲のようですが、
後半で、やたら鍵盤楽器がネリベルの二つの交響的断章のように
鳴らしまくる部分があるのですが、あれは結構面白い効果がありましたね。
全体的には・・・・本当にこの難曲を中学生が心の底から理解して吹いているかと言うと・・・
うーーん、少し疑問を感じるという演奏でした・・・
ホルンの雄叫びも、何か間延びしたような感じで・・・なんか少しヘンかも・・・・(苦笑・・・)
とにかく、何か無表情に曲がサクサク進み過ぎ・・という感じもありました。
この学校のこの矢代秋雄/交響曲の演奏については、1981年のバンドジャーナルに一年間に渡って
「スクールバンドの半音階的練習曲」という当時の練習風景を比較的綿密に密着した取材記事が
掲載されていて大変興味深いです。
指揮者の塚田先生のインタビュー記事にて
「なぜ中学生に矢代秋雄/交響曲を吹かせるのか、難しすぎないか・・」という問いがなされるのですけど、
「この曲には日本人の魂が感じられるし、それがこの曲を意外と身近なものに感じさせてくれる」
「要は・・・音楽と言う内容の問題」
「最初にこの曲を生徒達に与えたの反応は、難しい・・・、出来ません・・という明快な反応だったけど
面白くないという声は一つも無かった・・・それが大人と違う点」
「生徒達に作曲者の意図はあまり関係が無い・・・まず、音楽の形として曲を捉える中で
不協和音が多く変拍子ばかりでメロディーラインがとらえにくいこの難曲がいつの間にか・・・
自分達にも出来るぞ・・・という気持ちに変わっていく」
そうした内容になっていたと思います。
だけどどうなのかな・・・そうした先生の意図は本当に生徒達に伝わり、生徒たちは何かを感じて
「自分達にも出来るぞ・・・」と本当に思っていたのかな・・・?
実際の音源を聴いてみると・・・・やはり・・
「中学生には荷が重い曲だな・・・」と感じてしまいますけどね・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここから先は余談となってしまいますが
改めて矢代秋雄の交響曲について簡単に記したいと思います。
矢代秋雄の「交響曲」は、邦人シンフォニーの中でもトップクラスの名曲だと
思います。
この曲は、変拍子・不協和音の炸裂など難しい側面がある一方、第一楽章のテーマが
「循環主題」のように、第三楽章で提示され、第四楽章の終曲部のコラールでも高らかに
再現されるなど、分り易い面も多々あります。
特に第四楽章のあの金管楽器による清らかなコラールは本当に・・・胸にしみるものがあります・・・・
あのコラールとか循環主題を聴いてしまうと、やはり矢代秋雄はフランス留学時代はメシアンに師事した事も
あるのですけど、作風は・・・・フランクに何か近いものがあったりするな・・・と感じてしまいますね。
個人的には、第二楽章のティンパニーの「テンヤ・テンヤ・テテンヤ・テンヤ」という特徴ある
リズムが大好きですし、二楽章のこの特徴あるリズムを前面に出したティンパニーとシロフォンとピアノの
掛け合いは特に大好きですね。
ちなみに・・・
あの、「テンヤ、テンヤ、テンテンヤ、テンヤ」(6/8+(2/8+6/8)というリズム形は、作曲当時に朝日新聞で
連載されていた獅子文六の小説「自由学校」の神楽のシーンからヒントを得たとの事です。
第三楽章の冒頭のコールアングレの寂寥・・とした響きが実に味わい深いですし、
途中で執拗に繰り返される打楽器のフレーズ(ティンパニー→トムトム→大太鼓→シンパル→拍子木)が
大変効果的だと思いますし、この楽章は・・・・何か・・「和風の夜想曲」という感じもありますし、
いかにも・・・・最近このブログでも記事にした「ピアノ協奏曲」第二楽章のあの「夜明けの悪夢」と同じ作曲者なんだな・・
と思わず実感したりもします・・・・
第四楽章はまさに圧巻で、全曲の白眉だと思いますし、
前半の静けさ、後半のアレグロ、その静と動の対比が実に鮮やかですね。
個人的には・・・・
第四楽章の前半のホルンの雄叫びとアレグロに入る前のコンサートチャイムの寂寥感溢れる鐘の響きが
特に特に大好きな箇所です・・・・
矢代秋雄の交響曲は、私が所有してるものは、
①渡部暁雄指揮の日本フィル
②佐藤功太郎指揮の都響
③湯浅卓雄指揮のナクソス盤
ですけど、いずれの盤もそれぞれいい所があってどれも素晴らしいのですけど
やはり渡辺暁雄の日本フィルの演奏が圧倒的に素晴らしいですね・・・!!
しかもこの録音、ライヴ演奏なんですよね・・・・
ライヴであそこまで精密な作りが出来てしまうとは・・・・
とにかく凄まじいほど完成度と集中度が高い名演だと思います。
ちなみに・・・・
広上淳一指揮の日本フィルで、この交響曲を聴いたことがありますけど、
あれも緊張感溢れる素晴らしい演奏でした。
矢代秋雄自身は、かなり若い時期にお亡くなりになっているのですね。
矢代さんの作品は、正直この交響曲とピアノ協奏曲と交響的作品しか聴いたことがないのですが、
それはそうなのです。
だって、この方は恐ろしいほどの寡作家で、生涯の作品リストも極めて少ないとのことで、
管弦楽曲はせいぜい10曲程度とのことです。
だけど、矢代氏は、この交響曲一曲だけでも後世に素晴らしい名曲を残してくれました。
この事には本当に感謝しても感謝しきれないものがありますね・・・・
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この演奏は「日本の吹奏楽」のLPで所有しているのですが、そのジャケット裏面の出演生徒さんのコメントで、「交響曲を選んだ塚田先生のお考えはいったいなんだったのでしょうか?」と書かれていますねw
他が喜びのコメントを多く載せている中、この記述はけっこう異彩を放っていて、あまり生徒たちはこの曲が好きではなかったのかなあなどと思っていました