ま、レスピーギのこの「シバの女王ベルキス」は原曲の管弦楽版では
演奏頻度が少ない曲で、
この曲はもっぱら吹奏楽コンクールの吹奏楽アレンジ版として聴かれる事の方が圧倒的に多いから
本当は「吹奏楽カテゴリ」の方がいいのかも・・・(笑)
レスピーギと言うと、やはり「ローマ三部作」~噴水・松・祭りが圧倒的に有名ですけど
実はこうしたかなり大規模なバレエ音楽も残しています。
この曲は、派手で華麗な「ローマの祭り」よりも更に大規模な編成が求められ、
バレエの全曲は80分を要し、オフステージ、バンダなどの楽器群、合唱、独唱群をも必要とする
大がかりな内容のためなのか、現在に至るまでほとんどレパートリーとしては定着していません。
事実、私自身、この曲の管弦楽版の生演奏は、
1999年の飯森範親指揮/東京交響楽団の東京芸術劇場での演奏会で一回聴いた
だけです・・・
聴いていて迫力満点だし、演奏効果は高いし、
鳴る部分としっとりと聴かせる部分の対比の落差はすさまじいものがあるし
本当はもっと演奏されて然るべき作品だと思います。
バレエのストーリーは、
ま、あってないようなもので・・・
話自体は旧約聖書に由来します・・・
紀元前9世紀ころ、シバ国(イエメンあたり・・・??)を統治していた女王ベルキスが、
イスラエルのソロモン王を訪問し、大量の貢物を贈って歓待され長期滞在・・・・
あげくの果てに二人は熱い恋におち、
ついでにソロモン王とのあいだに子供まで儲けてしまった・・・・
そんな感じだったと思います。
レスピーギは、この壮大なバレエ音楽から「第一組曲」として組曲版の管弦楽曲を残し
本当は第二組曲も作りたかったようですが、
それを果たせぬまま逝ってしまったようです・・・
この組曲版は四つの組曲から構成されています。
Ⅰ.ソロモンの夢
Ⅱ.戦いの踊り
Ⅲ.暁のベルキスの踊り
Ⅳ.狂宴の踊り
なお、ⅡとⅢが入れ替わっている版もあるのですけど、
本来は、ⅡとⅢが入れ替わっているのが正解らしいです・・・・
簡単にいうと、ⅠとⅡとⅣは激しい音楽
Ⅲは静かでしっとりとした音楽です。
特にⅣのラストで、「バンダ」(金管別働部隊)として登場する三人のトランペット奏者による
ファンファーレの迫力は凄まじいものがありますし、
この曲の大きな聴きどころの一つです。
前述の飯森さん指揮/東京交響楽団の演奏会でも
このバンダが、パイプオルガン設置場所の左側より高らかに鳴らされていて
大変印象的でした。
この曲の原曲をCDで聴く場合、
サイモン/フィルハーモニア管と大植英次/ミネソタ管が圧倒的に素晴らしい演奏を聴かせてくれています。
日本のN響でお馴染みの巨匠/アシュケナージもこの曲を録音していますけど
個人的には「全然つまらない最低の演奏」だと感じました・・・
「シバの女王ベルキス」は吹奏楽コンクールでの名演が多いのですよね・・・・
最初にこの曲を取り上げたのは
1988年の淀彰先生指揮による東北学院大学ですけど、
淀先生の吹奏楽界における「多大な貢献」の一つが、この曲を吹奏楽コンクールとして初めて取り上げ
その後のこの曲の吹奏楽コンクールにおける「不動の地位」を作り上げた事だと
思います。
この曲を自由曲とし、淀先生は東北学院大学を1979年から遠ざかっていた全国大会出場復活まで
果たしましたからね・・・
実は、1988年の宮城県大会は「イズミティ21」で開催され、
この演奏を私自身、たまたま夏休みで帰省していた時に聴く機会に恵まれ
県大会の時点で聴いたのですけど、
とにかく「何て色彩感豊かで派手な曲・・・」と感じたものでした。
確かこの時は、ⅠとⅣを組み合わせたカットで、
最初は静かに開始され、徐々に盛り上がっていき、Ⅰの中間部で一旦閉じ、続けてⅣの冒頭から
続けたと記憶しています。
確かⅣの中間部で、一人のトランペット奏者が突如ステージ裏に姿を消し、
朗々とトランペットソロをステージ裏から吹いていたのが印象的でした。
翌年に、この曲は既に人気曲となっていて、
福岡工大付属高校が、東北学院のⅠとⅣではなくて、
Ⅱ・Ⅲ・Ⅳを組み合わせるカット方法で演奏し、
Ⅱのティンパニーの叩き付けで開始される事を最初に全国大会でお披露目しています。
確かラストの「バンダ」を初めて全国大会で実演したのは、多分福岡工大付属が初めてだったと
思います。
ちなみに中沢けいの小説「楽隊のうさぎ」において主人公の男の子が中二の時の自由曲が
この「シバの女王ベルキス」~Ⅱ・Ⅲ・Ⅳでしたね。
この主人公の男の子はティンパニー奏者ですので、
Ⅱの冒頭のティンパニーはこの子の音から開始されています。
ま、予選では、手がすべって勢い余ってティンパニーのマレットを客席に向かって
投げつけてしまったなんてエピソードもありましたね。
1989年のコンクールでは銅賞だったのですけど
面白い演奏が一つありました。
中学の部の間々田中学校なのですけど、
Ⅰの中盤⇒Ⅱ⇒Ⅳと続けて演奏したのですけど
前述の福岡工大付属がⅣは、後半から開始したのに対し
この間々田中のⅣは冒頭から開始し、しかも中間部では
東北学院大学が舞台裏からトランペットのソロを吹いていた場面を
女子生徒コーラスとして演奏し、
それがなかなか「清楚」な感じもしていて、大変強く印象に残っています。
個人的には、この曲で一番好きな演奏は、
1991年の札幌白石高校と1992年の高岡商業かな・・・・
両校ともに知性と勢いのバランスが抜群に良く、ラストのバンダが気持ちよいほど
決まっています。
なぜか銀賞なのですけど、1993年の東海大学第四高校の緻密な演奏も捨てがたいものがあります。
1992年の乗寺泉吹奏楽団の
ⅢとⅣの組合せ、しかもⅢをほぼノーカットで演奏し
「静かなベルキス」の存在を世に知らしめた演奏も素晴らしかったです。
1995年の翌年この世を去られた中澤先生指揮の野庭は
美しいのだけど、何か去勢されたようなおとなしすぎるベルキスは少しというかかなり違和感を
感じたものです。
「鳴る」という観点で、一番壮絶な演奏は
1993年の創価学会関西かな・・・・
あのチームのⅣの「ホルン」の雄叫びはすさまじいものがあり
気持ち良いほどよく鳴っていたのが印象的です。
こんなに聴かせ所が多いのだから、
プロの管弦楽団もたまにはこの「シバの女王ベルキス」を演奏会で取り上げて
欲しいと思いますね・・・・
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コメント
こんばんは
楽隊のうさぎ
地元でしか話題になってない映画かと思ったので、他県でも見て下さってる方がいるとうれしいです。
シバの女王ベルキス
コメント頂きありがとうございます。
1990年代前半の札幌白石高校は、まさに「神がかり」みたいな感じでしたし、
ベルキス・ガイーヌ・メトセラⅡ・神話・ライモンダと名演を残してくれたのが
印象的です。
そうした演奏を道大会で聴けたなんて、羨ましい限りですね。
「シバの女王ベルキス」は、率直に言うと、色彩感満載のせいもありますが、
生の演奏を聴いても、管弦楽版も吹奏楽版もさほど違和感がない
ある意味珍しい曲だと思います。
Re: 楽隊のうさぎ
コメントありがとうございます。
「楽隊のうさぎ」が映画化されたことは知っていましたが、この映画まだ見た事が
ないのですよ。
一度DVDを借りて見てみたいと思います。
(ツタヤでレンタル可能のようですね)
へー、この映画は浜松がロケ地だったのですね。知らなかった・・・
でもお嬢様の同級生が映画に出演されているとは、何か記念に残りそうですね。
中沢けいの「楽隊のうさぎ」は、多感な中学生の時期と音楽との関わりと親との関わり等を
焦点にした中々素敵な物語でしたね。
この物語の続編的な作品として「うさぎとトランペット」という作品があります。
これも中々素敵なお話です。
ところで「楽隊のうさぎ」で出てくる「シバの女王ベルキス」は、
確か1991年の千葉県の土気中学校の演奏を作者の中沢さんが散々聴きこんで
イメージにしたみたいですね、
土気の演奏は私も生で聴きましたけど、
すごい積極的なイケイケな演奏でした・・・
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