一つ前の吹奏楽の記事にて、就実高校の1980年の自由曲「ル・シッド」のバレエ音楽について
触れましたけど、
このマスネーの「ル・シッド」のバレエ音楽は、
実は隠れた名作と言っても過言ではありませんし、
情熱的でもあるし、ロマンチックでもあるし、かったるい部分あるし、南国の太陽サンサンみたいに
眩しい部分もあったりと、かなり魅力的な曲です。
何でこの曲、世間一般にそれ程認知されていないのだろう、勿体無いとも感じますし、
まさに「知る人ぞ知る名曲」という感じで、
本当は自分一人の楽しみにしておきたいのですけど、
「クラシックの深い森」の中に置き去りにするのも何か気の毒な感じもしますので
少し取り上げたいと思います。
マスネーというと、フランスの歌劇の大家で
「マノン」とか「タイス」等の歌劇の作品で音楽史には欠かせない方です。
初心者向けの曲としては、やはり歌劇「タイス」の中の「タイスの瞑想曲」で世間一般的には
お馴染みなのかもしれません。
吹奏楽に関係した人ならば、組曲「絵のような風景」でお馴染みかな・・・
マノンとかタイスはどちらかと言うと抒情的な香りが漂う作品なのですけど、
「ル・シッド」は、マスネーにしては珍しく歴史的な英雄物の作品です。
というか、この歌劇、男ばかり目立ち、女性があまり出てこないような気もしますね・・・
あらすじを簡単に書くと・・・
「ル・シッド」とは「君主/征服者」という意味だそうで、
スペインの騎士ロドリーグが主人公。11世紀に存在したという実在の人物がモデルになっているそうです。
ロドリーグにはシメーヌという恋人がいるのですが、親同士の権力抗争に巻き込まれ、
ロドリーグはシメーヌの父を決闘の末殺してしまいます。
シメーヌはショックを受け、親の仇の憎しみと愛の板挟みで苦しみ、彼を拒絶。
ロドリーグはムーア人との戦いの陣頭指揮を任されて出征します。
ロドリーグは戦死したとの報せが届き、皆落胆するのですが、
それは誤報で、敵からも「ル・シッド」と呼ばれる程の活躍で勝利し、
ロドリーグ達はやがて華やかに凱旋してきます。
人々は歓喜で出迎えますが、シメーヌへの罪の意識から自害しようとします。
国王は裁きをシメーヌに委ねますが、本心は愛している彼女は結局許し、
ラストは「ハッピーエンディング」・・・
こんな感じだったと思います。
この作品には、「グランドオペラ」の流儀にのっとって2幕に7曲からなるバレエが入っており
これが歌劇「ル・シッド」のバレエ音楽と呼ばれる部分です。
同じような作品としては、グノーの歌劇「ファウスト」のバレエ音楽が
ありますね。
そう言えば、このグノーのファウストのバレエ音楽も吹奏楽コンクールで一時期よく
演奏されていましたね・・・
この「ル・シッド」のバレエ音楽は20分程度なのですけど
実に素晴らしい!!
マスネーはフランス人なのですけど、
音楽は「スペイン」そのものです。
7曲から構成されますが、1・3・5~7曲が、いかにもスペインらしい華やかな部分
2・4曲がだるさ・かったるさを演出した部分で
この対比も極めて鮮やかで面白いです。
特に6・7曲がそうなのですけど、
曲の至る所に「カスタネット」が登場し、いかにもフラメンコ・闘牛みたいなノリで
華麗にカタカタ鳴らしているのが極めて印象的です。
全然関係ないのですけど、
現在テレ朝日曜の朝八時半から放映されている「ハピネスチャージプリキュア」の中で
主人公の一人、キュアラブリーのフォームチェンジの一つに
「チェリーフラメンコ」があるのですけど、
あのノリは、まさにこの「ル・シッド」のバレエ音楽のノリの世界なのです。
「ル・シッド」のバレエ音楽は以下の7曲から構成されています。
1.カスティリャーナ
2.アンダルーサ
3.アラゴネーサ
4.オーバード(朝の歌)
5.カタルーニャの踊り
6.マドレーナの踊り
7.ナ・ヴァーラの踊り
第3曲の「アラゴネーサ」は、大変躍動的な音楽なのですけど、
このメロディーは、ラストの第7曲のナ・ヴァーラの踊りの部分で再現されます。
特に素晴らしいのは、第6曲ですね。
冒頭のコールアングレとフルートの長い掛け合い的なソロで開始され、
これにハープが美しく絡み、
タンバリンのロールから派手な踊りへの部分へと進展していくのですが、
これが実に情熱的というか、まさに「フラメンコ」の世界ですね。
この部分の木管楽器と言うか、ピッコロの使い方が実に巧いと思いますし、
リズム感が実にノリノリで、聴く方まで自然に何か踊りたくなるような音楽ですね。
ラストの「ナ・ヴァーラの踊り」はまさに圧巻です!!
終始リズムに乗って生き生きとした音楽が展開されているのですけど、
このバックのリズムの打楽器は何なのかな・・・
この曲、原曲を生で聴いたことないから分からないのですけど、
ビゼーの「アルルの女」のファランドーレの踊りで使用された「プロヴァンス太鼓」なのかな・・?
「プロヴァンス太鼓」はフランスの一種の民族楽器みたいなものだから、
スペイン風の音楽に仕上げても、さすがにフランス人のマスネーと言う感じなのかな・・・
私、嫌なことがあって気持ちが凹んだ時とか、気分をリフレッシュさせたい時は
よーく、この「ル・シッド」のバレエ音楽を聴きますね・・・
だから本当は、自分一人だけの楽しみにとっておきたいのですけどね・・・
このいかにも南欧的な明るさは、ホント、世俗的な悩みを簡単に一掃させてくれます。
この曲を生で聴く場合、お勧めの演奏は
東芝EMIから出ている、ルイ=フレモー指揮/バーミンガム市響ですね。
これは断然素晴らしい演奏だと思います。
カップリングも、絵のような風景とシャルパンティエの「イタリアの印象」だから
尚更よいですね。
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