A.コープランドと言うアメリカの作曲家は、日本では知名度は今一つなのかもしれないです。
1900年に生まれて1990年にご逝去されましたので20世紀を目一杯駆け抜けた作曲家と言えるのかもしれないです。
実はコープランドは、日本とも結構深い関係にあり、
武満徹の音楽をアメリカ本土で紹介したり、武満徹の「地平線のドーリア」という曲の世界初演の指揮を振ったり
来日した際には、日本の管弦楽団にてシューベルトの未完成の指揮を振ったりとかなりの貢献をされている御方だと思います。
日本の吹奏楽コンクールにおいては「エル・サロン・メヒコ」とバレエ音楽「ロデオ」が今現在でもよく自由曲として
演奏されています。
コープランドの音楽は、カウボーイがインディアンを追いかけまわすみたいな西部劇のBGMになりそうな
軽い感じの音楽が多いようにも感じますし、軽薄すぎて胡散臭く感じることもあったりもします。
時にアメリカ商業主義に毒された胡散臭い作曲家のような側面も感じなくはないのですけど、
反面、晩年は無調音楽にも手を付けたり、難渋な作品を晩年近くに書いたりもしていますし、
バレエ音楽「アパラチアの春」のように神への祈りに通ずる清純な音楽を作曲されていたりもします。
アメリカというと、移民の国であらゆる価値観・文化・思想を拒絶することなく取り入れ
自分たちの文化として融合していった歴史がありますけど、コープランドの音楽にもそうした多様性が十分に感じられます。
そうした多様性の複合国家アメリカの象徴的存在の作曲家と言えるのかもしれないですし、そのあたりが
インチキ商業国家・アメリカの傲慢さ・胡散臭さをどこか代弁しているような作曲家にも感じられるのかもしれないですね。
コープランドが亡くなった年にバーンスタインも亡くなっていますけど、
コープランドの曲をよくレコード化していたバーンスタインにとっても盟友の友という感じだったのかもしれません。
コープランドの作品は、圧倒的に三大バレエ音楽が有名です。
〇ロデオ
〇ビリー・ザ・キッド
〇アパラチアの春
この中では、「ビリー・ザ・キッド」の銃撃戦とビリー逮捕の祝賀会という場面は目をつぶって聴いていると、
小太鼓と金管楽器で「ダダダダダダダ」と表現されている破裂音が、かなり実音に近い
ガンバトルを再現していて非常に面白いです。
「アパラチアの春」は逆に曲の中でほとんどffがない静かな内省的な曲なのですけど、
この曲の唯一の盛り上がりの部分「クエーカー教徒の讃美歌の主題による変奏曲」の部分の美しさと透明感は、
生で聴いても思わずハッと息を飲むほどの美しさがあります。
吹奏楽経験者にとっては、コープランドと言うとロデオやエル・サロン・メヒコ以外の作品では「戸外のための序曲」という作品を
思い浮かばれる方も多いのかもしれないです。
ちなみにこの曲は「野外序曲」と表記されることもありますし、元々は管弦楽曲として作曲されていましたけど、
コープランド自身によって後年吹奏楽アレンジ版として編曲された経緯があります。
日本においては、この曲は吹奏楽曲としてのイメージが強いのかもしれないですね。
戸外のための序曲は、序盤でトランペットの相当長いソロがありますけど、あの朗々と歌い上げられる長大なメロディーには
いつ聴いてもうっとりとさせられるものがあると思います。
私がこの曲を初めて聴いたのは、 1982年の全日本吹奏楽コンクール・東北大会、高校B部門の
岩手県代表・盛岡一高の演奏でした!
演奏が大変素晴らしく、底抜けに明るいこの曲を溌剌と演奏していましたし、
序盤のトランペットのソロもほぼノーミスで吹きこなしたトランペット奏者に大変感銘を受けたものです。
この曲は、1988年の全国大会・職場の部にてNEC玉川も自由曲として演奏していましたけど、残念ながらこの演奏の
感銘度は私にとってはかなり低いものでした・・
「戸外のための序曲」は8分程度で短いのですが、ファンファーレみたいな強奏で開始され、
トランペットの長いソロが延々と続きます。
展開部を経て一旦静まり、中間部でトランペットのソロの部分を全体で再現しラストで再び盛り上がり華麗に曲が閉じられます。
最近の吹奏楽作品の派手な色彩に比べると確かに地味に感じるかもしれません。
だけど、人の心にストレートに「楽しさ」・「躍動感」を素直に感じさせる曲と言うのは最近は少ないのかもしれませんし、
こういう「シンプル イズ ベスト」を立証した作品が最近ではあまり演奏されない事は少し寂しい感じはします。
この曲の吹奏楽コンクールでのベスト演奏をあげると1979年の玉川学園に尽きると思います!
玉川学園は、この年の前年までは、ドビュッシー・ラヴェル・古典主義時代のストラヴィンスキーなど
どちらかというと繊細な曲を得意としていましたが、 この年から、いきなり路線変更を展開し、
これまでのおとなしい感じの演奏から一転してワイルドな感じに変容しています。
そしてこのワイルド路線は、翌年のリードのアルメニアンダンスパートⅡで
更に進化を遂げ、歴史的名演(爆演?)を残すことになります。
1979年の玉川学園で一つ面白かったのは、大太鼓は普通のバスドラムを使用せずに
マーチングバンドみたいな、比較的小さく皮が透明な感じのものを使用し、
重厚感を回避させていたような意図が感じられる点が挙げられると思います。
演奏自体もコープランドの野性味と玉川学園の都会的で垢抜けたサウンドが絶妙にマッチしていて、大変素晴らしい名演を
後世の私たちに残してくれていたと思います。
玉川学園高等部というと、この翌年に5年連続金賞を達成した当時の名門チームです。
このチームは一般的には、フランス音楽みたいな印象派の音楽を得意とし
特に1976年のドビュッシーの「三つの夜想曲」が特に名演として高い評価を受けていますが、
私自身の感想・印象としては、印象派・新古典主義の抽象的な音楽よりも、1979年のコープランドや
翌年のアルメニアンダンスパートⅡのように、都会の明るく洗練された響き・元気溢れる演奏の方が本領を発揮したと思います!
1979年の前年の「かるた遊び」は、あまりにも抽象的で何を言いたいのかよく分からないうちに
終わってしまった演奏よりは、むしろ1974年の組曲「惑星」~木星のようにサウンドに威勢がある方が
魅力的に聴こえるような印象があります。
1979年の「戸外の序曲」は、一言で述べると、実にカラッとした演奏で、
雲一つない青空の下で、天真爛漫に気持ちよく吹いたという印象があり、実に伸び伸びとしています。
前年までのどこか「去勢されたような演奏」・「指揮者に言われた通り吹く優等生みたいな演奏」とは
明らかにサウンドが異なっているように感じられます。
翌年の1980年の玉川学園は、「アルメニアンダンスパートⅡ~ロリの歌」をなんとノーカットで一気に駆け抜け、
圧倒的勢いでもって「5年連続全国大会金賞」を達成しますけど、あの輝かしいサウンドとスピード感は、
この曲の演奏としては最高クラスの歴史的名演だと思います!
話を「戸外の序曲」に戻しますと、プロの演奏では、フェネル指揮/東京佼成も素晴らしいと思うのですけど、
ハンスバーガー指揮/イーストマンのライブ演奏の圧倒的ドライブ感を聴いてしまうと他の演奏が皆物足りなく感じてしまいます。
バーンスタインが1986年のタングルウッド音楽祭における野外ライブ演奏も素晴らしかったですね~♪
これは当時FMで聴いたものでしたが、演奏がライブ演奏という事で、
録音されたものではなく、CD化もされていないようですので、今となっては幻の演奏になっています。
ただ漠然と私の記憶の中で生きているのですけど、 いかにもバーンスタインのライブ演奏らしい躍動感あふれる名演でした。
残念ながら未CD化ですけど、あの演奏がCD化されたらとてつもなくテンションが上がりそうです。

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「響け! ユーフォニアム」第一期と第二期のトランペットパートから、香織先輩・優子・麗奈

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高坂麗奈
コープランドの「戸外のための序曲」というとやはり序盤のトランペットのソロが大変印象的ですけど、
トランペットというと真っ先!に思い浮かぶキャラというと「響け! ユーフォニアム」の
一年生トランペット奏者の高坂麗奈に尽きると思います!
当ブログでもアニメ「響け! ユーフォニアム」の第一期が放映された2015年と第二期が放映されていた2016年においても
この麗奈は頻繁に登場していました。
「響け! ユーフォニアム」の主人公はユーフォニアムパートの久美子なのだとは思うのですけど、
特に第一期においては最終回とその一つ前の回以外では「主人公なのに影がうすいキャラ・・」と当ブログでも散々揶揄されて
いた久美子に対して、第一期の真の主役は誰がなんといっても高坂麗奈だと思いますし、
私自身「響け! ユーフォニアム」の中で圧倒的に大好きなキャラは麗奈です。
高坂麗奈というと原作者の設定によると、
艶のある長い黒髪とこぼれ落ちんばかりの大きな瞳が目を引く自信にあふれた美しい容姿の少女とされていて、
アニメ版としても、容姿端麗・頭脳明晰な黒髪の美少女で、そのクールな印象とは裏腹に胸の内ではトランペットに対して
熱い想いを抱いていて一見して他を寄せ付けぬような雰囲気を放つというのが基本設定になっています。
原作のライトノベルを読んで頂けると分かる通り、麗奈の基本パーソナリティとして、
周囲と同じであることを良しとせず、「特別な存在になりたい」と願うストイックな性格の持ち主で、
当初は他人との間に距離を取り、特定の誰かと一緒にいることを嫌う「孤高の存在」でもあるのが大きな特徴なのだと
思います。
麗奈の不屈の精神やトランペットに対するプライドは半端ではない強さであり、
いかなる周囲の状況も我関せずといった具合で周囲から孤立しようがお構いなしで、孤高の存在と言えそうです。
第一期においては自由曲の「三日月の舞」で登場するトランペットのソロを巡って、3年生の香織先輩と
部員全員を巻き込むあのギスギスのオーディションをやってでも
「私が一番だし、私は絶対に他の人には負けたくないし、私は特別な存在である」という事を立証するために
そのオーディションを勝ち抜き、結果的に関西大会と全国大会でも立派にソロを務めあげていました!
それにしてもあのオーディションに際しても、言いがかりを付ける2年生の優子に対しても
「だったら何だっていうの? 滝先生を侮辱するのはやめてください。なぜ私が選ばれたか、そんなのわかってるでしょ?
香織先輩より、私の方が上手いからです!」と毅然として言ってのけ
優子が「アンタねえ! 香織先輩がどれだけ気を遣ったと思ってるのよ!?」と詰め寄っても麗奈は
「ケチつけるなら、私より上手くなってからにしてください」と 優子をはじめ周りの部員に対して決然と言い放っていた光景は
確かにとんでもないギスギス場面なのだけど、「響け! ユーフォニアム」屈指の名場面の一つだったと思います!
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