クラシック音楽の世界で楽曲のタイトルで国名が出てくる作品の中で最も多そうなのが「スペイン」といえそうです。
(イタリアも多いと思います)
スペインやイタリアは南欧諸国ということで暖かい日差しに夏の光線や海や情熱の発散に陽気な国民性など、
ドイツやイギリスといった真面目な?国民性の諸国やロシアや北欧諸国の寒い国からの視点で見ると開放的な風土や国民性
というものは大いに魅力に感じそうですし、作品を書く上では大いなるインスプレーションを与えそうなのかもしれないです。
スペインというタイトルがついた管弦楽作品というと例えば、ラヴェルのスペイン狂詩曲、シャブリエの狂詩曲「スペイン」、
リムスキーコルサコフのスペイン奇想曲、ラロのスペイン交響曲、アルベニスのスペイン組曲、
ファリアの交響的印象「スペインの夜の庭」などが挙げられますし、
スペインとポルトガルを含めたイベリアという観点では、ドビュッシーの管弦楽のための映像(第三集)~Ⅱ.イベリア、
アルベニスの組曲「イベリア」などがあるかとは思います。
ラヴェルのスペイン狂詩曲とシャブリエの狂詩曲「スペイン」ですけど、タイトルは大変良く似ていますが、
タイトル的には狂詩曲が後に来るか前に来るかだけの違いで、特段形式的な違いはありません。稀にですけど、
演奏会のプログラムの表記や吹奏楽コンクールのプログラム表記でもシャブリエの狂詩曲「スペイン」はスペイン狂詩曲と
表記される事もあったりします。
ラヴェルのスペイン狂詩曲はシャブリエの狂詩曲「スペイン」は表記こそ似ているものの楽曲の雰囲気も世界観も
全然違うように感じられたりもします。
シャブリエの狂詩曲「スペイン」の方は、作曲者のスペイン旅行の印象を見たまま聴いたままストレートにそのまま音に
したような直線的な印象があるのに対して
(シャブリエの狂詩曲「スペイン」は特に中間部の粋なトロンボーンソロが大変ユニークで面白いです!)
ラヴェルのスペイン狂詩曲は直接見聞きした印象ではなくて、一種の心理描写曲というのか「私はその風景を見て
そのように感じた」という心のモノローグを音にしたという印象の方が強く、
シャブリエの狂詩曲「スペイン」は客観的な描写曲であるのに対して、ラヴェルのスペイン狂詩曲は主観的な感性の曲というのが
両曲の大きな違いといえそうです。
ラヴェルはよくオーケストラの魔術師とか管弦楽法の天才とか言われますけど、実は意外かもしれませんけど、
構想段階から純粋に、最初から演奏会用管弦楽曲として作曲された作品は実はこの「スペイン狂詩曲」だけです。
ラヴェルの管弦楽曲は、ほとんどはバレエ音楽としてのものかピアノ曲を管弦楽にアレンジしたものばかりなのです。
ちなみにボレロや舞踏詩「ラ・ヴァルス」は元々はバレエ音楽として構想されたものです。
ラヴェルのスペイン狂詩曲を最初に聴いたのは確か高校生の頃あたりだったと記憶していますけど、当時はⅣの祭りの
情熱とけだるさと対極がとても面白く感じたものでしたし、Ⅳの中間部のいかにもだるそうなコールアングレの朗々としたソロに
とてつもない魅力を感じたものでした。
この曲は何と言ってもあのかったるいだるさが私的にはとても大好きな所です。
吹奏楽コンクールでもこの曲は既に1970年代から出雲一中などが取り上げていて、一時期著作権の問題で演奏できない事も
ありましたけど、1989年に常総学院による超歴史的名演によりこの曲の魅力が再度ブレイクしたように感じられます。
この「スペイン狂詩曲」は下記の四曲から構成されています。
Ⅰ.夜への前奏曲
Ⅱ.マラゲーニャ
Ⅲ.ハパネラ
Ⅳ.祭り
ⅠとⅢがけだるくてだるい感じで、いかにも夏の午後のポケッとしたかったるさが全面に出されているように感じられます。
Ⅱもだるい音楽ですけど、曲が終始細かくめまぐるしく変化している感じもあり、その変化が面白いです。
Ⅳは、唯一、エネルギッシュな感じもするのですけど、Ⅳの中間部のあのコールアングレの長いソロはだるさの象徴と
言えそうです。
あのコールアングレのソロは、とにかくエキゾチックで同時にひたすら眠気を誘う音楽で実に魅力的なメロディーだと思います。
Ⅳのシロフォーン・タンバリン・カスタネットのあの響きはまさにスペインなのだと思います。
「祭り」というと、吹奏楽コンクールに毒された(?)私は、どうしてもレスピーギの交響詩「ローマの祭り」~Ⅳ.主顕祭みたいな
ドッカーーンみたいなものをついつい連想してしまいますけど例えば、ラヴェルとかドビュッシーの「祭り」となると、
表現方法は全然異なって聴こえます。
レスピーギは関西弁で言うと「まさにそのまんまやねん・・」みたいなストレートな描写であるのに対して。
ラヴェルの場合は、ラヴェルが心の中で祭りに対して感じたイメージを音楽にしたものといえそうでして、
必然的に音楽自体もかなり漠然としたイメージになってしまうようにも感じられます。
ドビュッシーの場合は、例えば、管弦楽のための映像(第3集)~Ⅱ.イベリアや三つの夜想曲~Ⅱ.祭りのように
何となくモデルとした場所が分かるような気もする具体的な感じもあったりします。
それに対してラヴェルのスペイン狂詩曲の祭りは、全体がとてもモヤモヤして聴こえますけど、ドビュッシーの祭りは何となく
具体的なイメージが可能のようにも聴こえたりもします。
それがラヴェルとドビュッシーの同じ「祭り」という素材を使用しながらも違いなのかもしれないです。
ドビュッシーの夜想曲~祭りは、
トランペットのミュートを付けた部分は、遠くから祭りのお囃子が聴こえてくるという感じであり、
トランペットのミュートを外し小太鼓が加わると、近くでお祭りの屋台のざわめきが聞こえるみたいな感覚も私の中では
あったりもしますけど、どちらにしてもラヴェルよりは少しだけイメージがしやすいという感覚もあったりします。

ラヴェルのスペイン狂詩曲のCDとしては、断然、ブーレーズ指揮/クリーヴランド管弦楽団がいいなと思います。
この曲のアレンジ版としては吹奏楽コンクールで言うと、前述のとおり1989年の常総学院のあの素晴らしい名演に
尽きそうですけど、他にも1993年の習志野高校の演奏や2002年の天理高校の演奏も素晴らしい演奏でした。
面白いアレンジとしてはピアノ+打楽器版の演奏があります。
ザードロという打楽器奏者がアレンジし、ピアノがアルゲリッチの演奏なのですけど、すごく斬新で面白いと思います。
音がむき出し状態なのだけど、その分この曲の狂気とかエネルギーが垣間見えるような気もしますね~♪
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